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第四章 南大陸
拾われ子と惨禍 十四 ―先導者の拳―
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「…………」
瓦礫の山に、アレックスはどさりと腰を下ろした。
周囲にモンスターの気配は無い。そして、建物も無い。
今座っている場所のように瓦礫が重なっているか、更地になっているかのどちらかだ。瓦礫の破片や隙間から黒い染みが見える所もある。
荒廃した町を眼に映しながら、アレックスは自分自身と話し始める。
「(フリーデさんを戦わせる訳にはいかない。ゴリアテさんの事は信頼してるけど、この町の防衛とハンター達の纏め役にフリーデさんは絶対に必要だ)」
フリーデと同様に、ゴリアテも元上位冒険者の身から引退して支部長になった者だ。戦闘の腕は確かだし、上に立つ素質もある。冒険者ならば纏める事が出来るだろう。
しかし、ハンターも全員が彼に従うとはアレックスは考えていない。
「(ハンターと冒険者は違う)」
広く浅く人々の依頼を請ける冒険者。
モンスターとの戦闘、討伐を専門的に請けるハンター。
ハンターの中には、冒険者の生き方ををぬるいと言う者もいる。
確かに、知識や戦闘経験などを考えればランクは同じでもハンターの方が戦闘技術は上だ。
︎︎︎︎ 過酷な生業に就き、長く続け、その実力を評価したランクが上である程、そのハンターが実力者であると言う確固たる証明となる。
︎︎︎︎ ハンターは良くも悪くも実力主義の考えが強い。そこに、同業者や先達だからと言った贔屓目が含まれると、上位ハンターを経て支部長となったフリーデにしか従わない。そんな事を言う者も出てくるのだ。
「(堕龍が戻ってきた時も、またモンスター達が押し寄せてきた時も、ハンター全員を動かす事が出来るフリーデさんには闘技場にいてもらわなきゃならない。アタシが一人で)」
そこまで考えて、アレックスは左手で右手を押さえつけた。どちらの手も震えている。
「(……恐れるな。残っているBランクハンターの中でアタシが一番強いんだ。アタシが最前線で、堕龍を……堕龍と……)」
右手を掴む左手に力が入る。
「(……戦わなきゃならないのに……!)」
押さえつけても尚震える手と身体、消えない恐怖がアレックスの戦意を挫こうとする。
「(母さんが本気を出して勝てなかった相手に、母さんより弱いアタシの攻撃が効くの……?)」
火属性最上級魔法を身に纏い、ノズチに向かったイザベラ。
その結果を、あの姿を思い出すと、天災に立ち向かおうとするアレックスにもう一人のアレックスが「無理だ、諦めろ」と囁く。
「(無理なんかじゃない……! 諦めて逃げる訳にはいかないんだ……! だってアタシは……でも、アタシなんかじゃ……)」
『アレックスさん』
「!?」
びくりと跳ねた両肩と同時に、アレックスはいつの間にか俯いていた顔を勢いよく上げた。
そこにはスイが立っていた。瓦礫の山に座るアレックスを幾段か低い所から見上げている。
「ど、どしたの、スイ。あれ、もしかしてフリーデさんに言われてアタシを探してた?」
アレックスはおどけて笑う。その笑顔は、酷くぎこちない。
そんなアレックスを見上げて、スイは首を横に振った。
『(ひとりじゃない。ひとりになんてさせない)』
︎︎ スイは瓦礫の山を登り、アレックスの眼の前に立つ。
『アレックスさんにお願いがあって探してました』
「お願い?」
『はい』
スイは、右手をアレックスへ差し出す。
『私と一緒に、最前線でノズチと戦ってください』
「…………へ?」
思考が追いつかなかったアレックスは、数秒遅れてスイの言った事を理解した。
「待っ……! スイは前に出なくて良いよ! アタシがちゃんと役目を果たすから!」
慌てふためくアレックスは、必死にスイを説得しようとする。
「ちょっと情けない姿見られたかもしんないけど、大丈夫だから! しっかり母さん――みたいに出来るかはわからないけど、母さんの代わりに」
『それは、本当にアレックスさんの言葉ですか?』
「え?」
翡翠と燐灰石の眼が、じっとアレックスを見詰めて問いかける。
『イザベラさんの娘だからという理由で、期待の眼を向けられる事に抵抗があるアレックスさんが言うその言葉は、アレックスさんの本心ですか? 私には――』
悪意なく、容赦なく、スイはアレックスの心に踏み込む。
『その言葉は、自分を奮い立たせると言うよりも、自分をその場に縛り付けてしまっている鎖に見えます。それでは、きっと自由に戦えません』
「!」
動揺を見せたアレックスに、スイは言葉を続ける。本心を出さないアレックスに、自分の本心をぶつける。
『皆を率いるのに、確かに「イザベラさんの娘」と言う存在は大きいのかもしれません。でも、肝心のアレックスさんがその言葉に支配されてしまうなら、最初から「イザベラさんの娘」はいない方が良い』
「!? ス、スイ……」
自身の存在の否定に聞こえる言葉にアレックスは悲しみを覚えたが、スイは言葉を綴る事を止めない。
『アレックスさんは誰かの代わりじゃありません。「イザベラさんの娘」ではなく、「ハンターアレックス」として、皆を率いてください』
「…………!!」
『とてつもなく強大な相手です。一人では戦わせません』
差し出していた右手が、アレックスに向けて開かれる。
『立ち上がるのに挫けそうになったら、私が手を握って引っ張ります。後ろに倒れそうになったら、その背中に手を当てます。一人では苦しくても、二人でならきっと立っていられます』
「…………っ」
『アレックスさんがこれまで何度もそうしてくれた様に。今度は、私がアレックスさんの支えになります』
アレックスの眼に映るスイが歪んだ。ぎゅっと瞼を閉じて、アレックスはスイの右手を握って立ち上がる。
スイは少し体勢を崩したが、倒れずに踏ん張った。
「ありがとう、スイ。心は、決まったよ」
夜の闇の中で、微かに見える蜂蜜色の眼は水気を帯びているが、アレックスは吹っ切れた顔で口角を上げている。
「アタシが安心して全力で剣を振り下ろす為にも、君の助けが必要だ。だから、アタシからもお願いしたい」
スイの手を、アレックスが力強く握る。
「スイ、アタシと一緒に戦ってくれ。堕龍を倒す為に、そしてこの町と人々を守る為に」
『はい。必ず、成し遂げましょう』
互いに強く握り合った右手を離すと、二人は闘技場へと戻る。
ハンターズギルドのエリアに向かったアレックスは、フリーデを呼んだ。隣にはゴリアテとユーグがおり、周囲にはハンター達もいる。
「フリーデさん」
「……覚悟は決まったようだな」
「うん。フリーデさんはやっぱり此処にいて」
「何?」
「馬鹿を言うな! 幾らお前でも一人で堕龍と戦うなど無謀過ぎるぞ!」
ゴリアテの制止に、アレックスは首を振った。
「一人で戦うなんて言ってないよ。スイも一緒に戦ってくれる」
「待て、スイはCランクだろ。対ドラゴン戦には参加させられん筈だ」
『この非常時中の非常時に、そんな事言ってられないと思います』
「アタシもそう思う」
「私も、それに関しては同意せざるを得ないな」
「ぐ……」
自身ですらそう思っている上に、フリーデにも同意されてしまい、ゴリアテは何も反論出来ない。
フリーデはスイとアレックスに顔を向ける。
「確かにスイも戦ってくれた方が頼もしいが……それなら尚更、私も戦う方が良い。戦線にいてこそ出来る指示もあるし、お前達に近付くモンスターは此方で全て潰す」
「でも、気難しいハンターはフリーデさんにしか従わないでしょ?」
「……支部長命令でゴリアテに従う様に言えば良いだけだ」
「権力の行使」
「正しい使い方だ」
アレックス達が笑うと、周囲のハンター達にも笑みが伝わっていく。それは、僅かではあるが皆の心に余裕を持たせた。
「そうすれば確かに効果はあるかもしれないけど……フリーデさんが此処にいる事で与えられる安心感もあるんだよ。だから、戦闘はアタシ達に任せて欲しい」
「…………」
「フリーデ。状況によっては君に助力を願うかもしれないが、今は此処にいてくれ。アレックスの言う通り、君の存在は大きい」
︎︎ ユーグからも頼まれた事で、フリーデは渋々と言った様子ではあるが首を縦に動かした。
「……承知した。戦うのがアレックスとスイの役目ならば、私は支部長としての役目を此処で果たそう。だが、お前達だけで力不足だと思ったら遠慮なく私が功績を掻っ攫いに行くよ」
「させないよ。アタシ達で終わらせるんだから」
︎︎ 話を聞いていたハンター達も、覚悟を決める。
「アレックスとスイが前に立つのか」
「女子どもが最前線に出るんだ。怯んでられねえよな……!」
「俺達だってまだ戦える。堕龍相手は無理でも、大襲撃や魔法陣からのモンスターくらいなら倒してみせるさ」
一人、また一人と戦意を甦らせる。それぞれの心から消えかけていた希望が、その灯を強くする。
『(……大丈夫だ。皆も、まだ諦めていない……!)』
アレックスは、皆を見回すと声を張り上げた。
「皆、聞いたね!︎︎ 堕龍が戻ってきたらアタシとスイで戦う! 皆には、それ以外のモンスターから町を守るのをお願いしたい!」
「「「おうっ!」」」
「いつ終わるのか判らない戦いだ! それでもいつか終わりは来る! それはアタシ達の手で、町と人々を守りきった時だ!」
「「「おうっ!!」」」
「信じろ! アタシとスイを! 皆自身を! 此処にいる仲間達を!︎︎ 信じて全力を尽くせ! この町最大の危機を」
高く拳を突き上げて、アレックスは吼える。
「絶対に生きて乗り越えるぞ!!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」
ハンター達の咆哮が冒険者や魔導師達の戦意までも甦らせる。
幾つもの拳が向けられた空では、雲が流れて星と月がその姿を見せ、暗い町を静かに照らした。
瓦礫の山に、アレックスはどさりと腰を下ろした。
周囲にモンスターの気配は無い。そして、建物も無い。
今座っている場所のように瓦礫が重なっているか、更地になっているかのどちらかだ。瓦礫の破片や隙間から黒い染みが見える所もある。
荒廃した町を眼に映しながら、アレックスは自分自身と話し始める。
「(フリーデさんを戦わせる訳にはいかない。ゴリアテさんの事は信頼してるけど、この町の防衛とハンター達の纏め役にフリーデさんは絶対に必要だ)」
フリーデと同様に、ゴリアテも元上位冒険者の身から引退して支部長になった者だ。戦闘の腕は確かだし、上に立つ素質もある。冒険者ならば纏める事が出来るだろう。
しかし、ハンターも全員が彼に従うとはアレックスは考えていない。
「(ハンターと冒険者は違う)」
広く浅く人々の依頼を請ける冒険者。
モンスターとの戦闘、討伐を専門的に請けるハンター。
ハンターの中には、冒険者の生き方ををぬるいと言う者もいる。
確かに、知識や戦闘経験などを考えればランクは同じでもハンターの方が戦闘技術は上だ。
︎︎︎︎ 過酷な生業に就き、長く続け、その実力を評価したランクが上である程、そのハンターが実力者であると言う確固たる証明となる。
︎︎︎︎ ハンターは良くも悪くも実力主義の考えが強い。そこに、同業者や先達だからと言った贔屓目が含まれると、上位ハンターを経て支部長となったフリーデにしか従わない。そんな事を言う者も出てくるのだ。
「(堕龍が戻ってきた時も、またモンスター達が押し寄せてきた時も、ハンター全員を動かす事が出来るフリーデさんには闘技場にいてもらわなきゃならない。アタシが一人で)」
そこまで考えて、アレックスは左手で右手を押さえつけた。どちらの手も震えている。
「(……恐れるな。残っているBランクハンターの中でアタシが一番強いんだ。アタシが最前線で、堕龍を……堕龍と……)」
右手を掴む左手に力が入る。
「(……戦わなきゃならないのに……!)」
押さえつけても尚震える手と身体、消えない恐怖がアレックスの戦意を挫こうとする。
「(母さんが本気を出して勝てなかった相手に、母さんより弱いアタシの攻撃が効くの……?)」
火属性最上級魔法を身に纏い、ノズチに向かったイザベラ。
その結果を、あの姿を思い出すと、天災に立ち向かおうとするアレックスにもう一人のアレックスが「無理だ、諦めろ」と囁く。
「(無理なんかじゃない……! 諦めて逃げる訳にはいかないんだ……! だってアタシは……でも、アタシなんかじゃ……)」
『アレックスさん』
「!?」
びくりと跳ねた両肩と同時に、アレックスはいつの間にか俯いていた顔を勢いよく上げた。
そこにはスイが立っていた。瓦礫の山に座るアレックスを幾段か低い所から見上げている。
「ど、どしたの、スイ。あれ、もしかしてフリーデさんに言われてアタシを探してた?」
アレックスはおどけて笑う。その笑顔は、酷くぎこちない。
そんなアレックスを見上げて、スイは首を横に振った。
『(ひとりじゃない。ひとりになんてさせない)』
︎︎ スイは瓦礫の山を登り、アレックスの眼の前に立つ。
『アレックスさんにお願いがあって探してました』
「お願い?」
『はい』
スイは、右手をアレックスへ差し出す。
『私と一緒に、最前線でノズチと戦ってください』
「…………へ?」
思考が追いつかなかったアレックスは、数秒遅れてスイの言った事を理解した。
「待っ……! スイは前に出なくて良いよ! アタシがちゃんと役目を果たすから!」
慌てふためくアレックスは、必死にスイを説得しようとする。
「ちょっと情けない姿見られたかもしんないけど、大丈夫だから! しっかり母さん――みたいに出来るかはわからないけど、母さんの代わりに」
『それは、本当にアレックスさんの言葉ですか?』
「え?」
翡翠と燐灰石の眼が、じっとアレックスを見詰めて問いかける。
『イザベラさんの娘だからという理由で、期待の眼を向けられる事に抵抗があるアレックスさんが言うその言葉は、アレックスさんの本心ですか? 私には――』
悪意なく、容赦なく、スイはアレックスの心に踏み込む。
『その言葉は、自分を奮い立たせると言うよりも、自分をその場に縛り付けてしまっている鎖に見えます。それでは、きっと自由に戦えません』
「!」
動揺を見せたアレックスに、スイは言葉を続ける。本心を出さないアレックスに、自分の本心をぶつける。
『皆を率いるのに、確かに「イザベラさんの娘」と言う存在は大きいのかもしれません。でも、肝心のアレックスさんがその言葉に支配されてしまうなら、最初から「イザベラさんの娘」はいない方が良い』
「!? ス、スイ……」
自身の存在の否定に聞こえる言葉にアレックスは悲しみを覚えたが、スイは言葉を綴る事を止めない。
『アレックスさんは誰かの代わりじゃありません。「イザベラさんの娘」ではなく、「ハンターアレックス」として、皆を率いてください』
「…………!!」
『とてつもなく強大な相手です。一人では戦わせません』
差し出していた右手が、アレックスに向けて開かれる。
『立ち上がるのに挫けそうになったら、私が手を握って引っ張ります。後ろに倒れそうになったら、その背中に手を当てます。一人では苦しくても、二人でならきっと立っていられます』
「…………っ」
『アレックスさんがこれまで何度もそうしてくれた様に。今度は、私がアレックスさんの支えになります』
アレックスの眼に映るスイが歪んだ。ぎゅっと瞼を閉じて、アレックスはスイの右手を握って立ち上がる。
スイは少し体勢を崩したが、倒れずに踏ん張った。
「ありがとう、スイ。心は、決まったよ」
夜の闇の中で、微かに見える蜂蜜色の眼は水気を帯びているが、アレックスは吹っ切れた顔で口角を上げている。
「アタシが安心して全力で剣を振り下ろす為にも、君の助けが必要だ。だから、アタシからもお願いしたい」
スイの手を、アレックスが力強く握る。
「スイ、アタシと一緒に戦ってくれ。堕龍を倒す為に、そしてこの町と人々を守る為に」
『はい。必ず、成し遂げましょう』
互いに強く握り合った右手を離すと、二人は闘技場へと戻る。
ハンターズギルドのエリアに向かったアレックスは、フリーデを呼んだ。隣にはゴリアテとユーグがおり、周囲にはハンター達もいる。
「フリーデさん」
「……覚悟は決まったようだな」
「うん。フリーデさんはやっぱり此処にいて」
「何?」
「馬鹿を言うな! 幾らお前でも一人で堕龍と戦うなど無謀過ぎるぞ!」
ゴリアテの制止に、アレックスは首を振った。
「一人で戦うなんて言ってないよ。スイも一緒に戦ってくれる」
「待て、スイはCランクだろ。対ドラゴン戦には参加させられん筈だ」
『この非常時中の非常時に、そんな事言ってられないと思います』
「アタシもそう思う」
「私も、それに関しては同意せざるを得ないな」
「ぐ……」
自身ですらそう思っている上に、フリーデにも同意されてしまい、ゴリアテは何も反論出来ない。
フリーデはスイとアレックスに顔を向ける。
「確かにスイも戦ってくれた方が頼もしいが……それなら尚更、私も戦う方が良い。戦線にいてこそ出来る指示もあるし、お前達に近付くモンスターは此方で全て潰す」
「でも、気難しいハンターはフリーデさんにしか従わないでしょ?」
「……支部長命令でゴリアテに従う様に言えば良いだけだ」
「権力の行使」
「正しい使い方だ」
アレックス達が笑うと、周囲のハンター達にも笑みが伝わっていく。それは、僅かではあるが皆の心に余裕を持たせた。
「そうすれば確かに効果はあるかもしれないけど……フリーデさんが此処にいる事で与えられる安心感もあるんだよ。だから、戦闘はアタシ達に任せて欲しい」
「…………」
「フリーデ。状況によっては君に助力を願うかもしれないが、今は此処にいてくれ。アレックスの言う通り、君の存在は大きい」
︎︎ ユーグからも頼まれた事で、フリーデは渋々と言った様子ではあるが首を縦に動かした。
「……承知した。戦うのがアレックスとスイの役目ならば、私は支部長としての役目を此処で果たそう。だが、お前達だけで力不足だと思ったら遠慮なく私が功績を掻っ攫いに行くよ」
「させないよ。アタシ達で終わらせるんだから」
︎︎ 話を聞いていたハンター達も、覚悟を決める。
「アレックスとスイが前に立つのか」
「女子どもが最前線に出るんだ。怯んでられねえよな……!」
「俺達だってまだ戦える。堕龍相手は無理でも、大襲撃や魔法陣からのモンスターくらいなら倒してみせるさ」
一人、また一人と戦意を甦らせる。それぞれの心から消えかけていた希望が、その灯を強くする。
『(……大丈夫だ。皆も、まだ諦めていない……!)』
アレックスは、皆を見回すと声を張り上げた。
「皆、聞いたね!︎︎ 堕龍が戻ってきたらアタシとスイで戦う! 皆には、それ以外のモンスターから町を守るのをお願いしたい!」
「「「おうっ!」」」
「いつ終わるのか判らない戦いだ! それでもいつか終わりは来る! それはアタシ達の手で、町と人々を守りきった時だ!」
「「「おうっ!!」」」
「信じろ! アタシとスイを! 皆自身を! 此処にいる仲間達を!︎︎ 信じて全力を尽くせ! この町最大の危機を」
高く拳を突き上げて、アレックスは吼える。
「絶対に生きて乗り越えるぞ!!」
「「「「おぉぉぉぉぉぉ!!!」」」」
ハンター達の咆哮が冒険者や魔導師達の戦意までも甦らせる。
幾つもの拳が向けられた空では、雲が流れて星と月がその姿を見せ、暗い町を静かに照らした。
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