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私はクマムシ。
先生、これは18禁乙女ゲームじゃありません。
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王宮に行くとは決めたものの、今までなんの勉強もしてこなかった呪いなのか、先生の個人授業という、甘い罠に嵌った私は、語学、人物相関図など、ありとあらゆる分野の山積みにされた本を丸暗記させられると言う拷問で、危うく別の世界の扉を開けてしまうところであった。
その間に、とうとう、次期女王のお披露目をする事が決まり、
世界各地に秘密に包まれていた次期女王に関する情報が駆け巡った。
そして10月も終わりに近付いた頃、事件は起きた。
ある深夜。街中に警報が鳴り響いた。学園内は騒然となり即座に厳戒態勢がしかれた。
[名門王立紫苑館学園]は、日本で言うところの北海道に位置する。北海道そのものが、学園の、ひいては次期女王の領土である。
北海道人にとっての一番の『脅威』とは―――――――
森の中、「鮭を咥えたヒグマ」が、イヤリングを拾ったと言ってナンパしてくる事でも、
「毛蟹」を苛めたがために、栗と蜂と臼が復讐に来ると言う怪奇ホラーでもない!!
それは!!
「ソビエトが来たぞーーーーー!!」である!!
学園に自衛軍隊は、4個師団、人員5万人、戦車600両、火砲400門程だが、存在している。
その指揮権は、次期女王不在時にはその最高指揮官がその任に当たるが、次期女王が学園に在籍してる場合のみ、
その全権は、すべて次期女王のものとなる。
即座に緊急会議が開かれた。
重厚な室内の中心に巨大な地図を配置してある円卓に、15人の男達が座っている。
顔触れは、歴戦の猛者ばかりだか、今回限りは、不安を隠せなかった。
それと言うのも、今、在籍していらっしゃる、次期女王というのが、歴代女王の中でも類を見ない、「アホ女王」だという。
そんなモノに勝手に阿呆な作戦を立てられては、堪ったものではない。
隣国、ソビエト帝国とは、40年前の大戦の後、冷戦状態が続いていた。
が、此処に来て、なんと10万の兵を送り込んできた。生半可な作戦では、倍の兵力差で太刀打ちできる物ではない。
「フッ。舐められたものよ。よりにもよって、女王在籍中に、狙ってくるとはな。諸君。我々は負ける要素など一つも無いのだ!!」
「それはどうなのか?おぬしは、鵬雛にお会いした事がおありか?」
「む。貴殿は女王を愚弄するのか?!」
「イヤイヤ、我々はあくまで慎重論を唱えただけだよ」
「では今回は、私達が、作戦立案し、女王にはその了承を戴くと言う形でよいのではないか?」
「次期女王をお飾りにすると?」
「何の不都合があると言うんだ?」
「そうだ。今までだって女王不在でやって来たんだ、それで良いだろう」
騒然とする中、次期女王が、ご臨席なさるとの、先触れが場内に響き渡った。
そして静まり帰る中、会議室の大扉が開かれ、次期女王は、その姿を現した。
淡く優しい光を放つ人が立っている。
大扉の周辺が急に明るくなった様な気がして、皆、息を呑む。。
市松文様の美しい大理石の床をほとんど音をさせず滑らかに歩く華奢なセーラー服の少女。
その後を夫である次期宰相ユーリウス・玲人・神崎、女王の里親、秘密情報局局長徳永がその人を守るように続く。
円卓に座っていた15人の上流階級達が、一斉に立ち上がり、跪いた。
礼をしながらも上目遣いで品定めする鋭い視線、探るような目、眩しげな目、誇らしげな目などさまざまな視線に突き刺されながらも、その少女は、背筋を伸ばし、ショートボブの漆黒の髪がサラサラと音を立てているような、軽やかな足取りで、円卓の首座に座った。
次期女王は、この時、初めて配下の前に、その間違いようも無い光り輝く清艶な姿を披露した――――。
『この方が本当に阿呆なのか?』皆一様に首を捻った。明らかな知性、品格、威厳。
生まれ持っての「王者」が其処にいた。
*****************
コレは、私の「演技力」を試される重要な場面だ!!
ここで、配下の信頼を得られなければ全て終わる。
私が終わるだけならかまわないが、戦争には、国家の存亡と国民の生死がかかっている。
失敗は許されない。
差し詰め今回の私の役どころは『無敵生物クマムシ!!』と言うところだろうか。
実際にクマムシを見た事はないが、無敵と言われるくらいなんだから強いんだろう。名女優には難しい役が付いて回る。
初仕事としてこれはどうなんだろう。呪われているんじゃないかと、商売繁盛のお守りを買いに走ったところで、戦争に勝ったという話は聞いたことはない。
さあ。『舞台あらし』の始まりだ――――。
******************************
「初めまして。みなさん。聞いていることと思いますが、私が、次期女王、葵です。よろしくお願いします。」
葵は、天性の人を安心させるような柔らかい、良く通る声で話し始めた。
「長々と話している場合ではないので、早速本題に入りましょう。詳しい話は、夫であるユーリウスと私の里親、秘密情報局局長徳永に聞いています。」
そう言うと、葵は知性に輝く瞳を悪戯っぽくキラリとさせ口調をガラリと変える。
「なので、私も、一言だけ言わせてもらう。あなた達も、歴戦の勇者方だ。コンナモノは、私に聞くまでも無いし、聞く気も無い者もいるだろう。」
何人かが、ギクリと肩を揺らした。
「理想的なのは、私達は如何にして「戦わず」して、勝利を得、この戦争を終結し、出来るだけ長期にわたり、平和に保つ事が出来るかと言う事だが・・・。
この方針に反対の者は?」
シーーーんとする中、一番年配の貫禄のある茶色い髪の戦士が口を開く。
「方針としては、申し分ないと存じます。次期女王陛下。後は、どうするか?ということで。
私共もこの40年間手をこまねいていた訳ではないのです。
ソビエト帝国の大国にモノを言わせた豊富な資源で執拗な攻撃を仕掛けてくる皇帝の戦争好きは有名。」
「うん。まあ一戦も交えずと言うのは、私自身無理があるとは思っていた。
だが、―――北部方面部隊、近藤隊長。
いくら大国と言えど、資源は無尽蔵ではない。かなり国庫は火の車だと報告にもあった。
後継者争いも熾烈を極めているらしいな。
だから、ここのところ大人しくしていた訳だが・・・。
帝国は、ここで決めるべく、全戦力を持って、決戦を挑んできた事は明白!
と言う事は、これを打ち破る事が出来れば、終戦協定に持ち込む事も可能だと言う事だ。」
「それは外交官である。私の仕事ですね」
と、40絡みの人好きのする容貌ながら、瞳がそれを裏切っている、一癖ありそうな人物が、声を上げた。
「外交官佐々木健次郎。あなたの手腕は聞いています。終戦後の事は頼みましたよ。」
「はい。次期女王陛下。非才成る我が身の全力を持って勤めさせて頂きます。」
佐々木は、女王が自分の名前と仕事ぶりを知っていた事に目を見張り、頭を下げた。
今度は、茶髪の戦士、近藤が試すように問う。
「では戦いの基本から行きましょう。大まかなビジョンを、示していただけますか?次期女王」
葵は手前の地形図をじっと見つめ、考えながら答える。
「・・・そうだな。まず手始めは、情報の攪乱。地の利。都合の良い舞台に敵をおびき寄せ、10万の敵を分断し、各個撃破。
此処で重要なのは、これから冬だ。相手方も長期化は望んでいないはず。
短期決戦に持ち込むために、焦りが出るのなら、しめたものだ。そこにつけ込む余地が出来ると思う。そして、何んとしても、補給線を長引かせた上にそれを断ち、敵の兵糧を奪う。
これで勝ったも同然。
それを実現するために、あなた達の力を借して欲しい。どうだ?」
『Yes, Your Majesty.』
皆、安心したように答えた。どうやら合格のようだ。
葵もちょっと安心した顔で、言ってみた。
「因みに、誘き出す餌は大きいほど効果的だろう。私がなっても良い。敵の狙いは、不凍港と私だ。」
『それはいけません!!』
全員が口を揃える。
葵は、見事に揃った否定の言葉にちょっと呆気に取られながら答えた。
「どうせ負ければ私は敵の物になるんだ。まあ負ける気は微塵も無いが。出し惜しんで勝機を逃すのか?
まず、なぜこの時期だったのかで 自ずと敵の狙いも分かると言うもの。
次期女王が表に出てきた途端のこの所業だ。
後継者問題に決着を着けるべく、「トロフィー」として選ばれたのが、この私だろう。私を獲得した者が次期皇帝となると言う事だと予測できる。」
『それでも、駄目です!!』
やっぱり駄目らしい。
今まで、不敵な目をして傍観を決め込んでいた30位の赤毛の美丈夫が口を開く。
「という事は、奴ら此処まで来る気ですかな?辿りつければの話だが。」
と、ニヤリと口を歪ませるが、目は笑っていない。。
「くく・・これは舐められたものだ。学園迄来てくれるのなら此方としては願ったり叶ったりだ。果たして敵はそんなに愚かなのかね?」
ここ[名門私立紫苑館学園]は、海岸線から沼地が広がりその先の峡谷の奥に位置する。
高台にはズラリと武器が並び冷たい鋼鉄の無数の眼が狙いをつけている。
しかも、峡谷の上空では気流が乱れ、強風が吹き荒れている。
危険を冒し、この上空を飛んだところで、制御不能になるか、格好の標的になるのがおちだ、敵に勝ち目は無い。
そして、戦闘は静かに開始された。
港は封鎖し、国民は災害時収容避難場所に避難させ、自警団に守らせる。
幸い今年の収穫はもう終った後だったのでそれはすべて略奪されないよう「学園」に移送し[名門私立紫苑館学園]は巨大な食物庫と変貌を遂げる。
まず、港では一切手出しせず、敵をやり過ごし、敵が沼地に辿り着いたとき、初めて伏兵で襲撃。足を取られ動きが鈍っている敵を狙い打ち、じわじわと敵兵を確実に削る。
今は北海道の11月。かなり寒さも厳しくなってきた。ちらほら雪もチラつく。寒さに慣れているとはいえ、確実に体温は奪われ、兵の体力の消耗も激しい。ソビエト軍の糧食も乏しくなってきた。10万人の食い扶持だ。減るのはあっという間だった。学園軍を深追いしたがために、補給したくても補給線はすでに学園軍に断ち切られ略奪しようにも何処にも食料は無い。
だが学園側としても、ここで、手を緩めて撤退されてもまた同じことの繰り返しだ。
決戦の舞台に誘い込むべく餌を蒔く。
食品輸送車の情報をまことしやかに流し、深夜。50台程の輸送車が極秘裏を装い峡谷に入る。
最後尾20台は、食料を満載している。
敵に甘い汁を吸わせ確実に、深追いさせるために。
初回は、激しい戦闘となった。
こちらも戦歴を誇る軍隊ではあったが、いかんせん兵力差が違いすぎる。
日本王国は、初戦を大敗という形で、後退させられる体を装い、峡谷に逃げ込む。
峡谷の奥には、巨大な食物庫と次期女王が待っているのだ。
ここで、ソビエト帝国が大勝すればするほど、
巨大な人参を見せ付けられ、甘い汁を啜ったソビエト軍は、峡谷に誘われるままに入り込むだろう。
そして、大軍を率いているという油断が致命傷となったのだろうか。
ソビエト帝国軍は、ついに、峡谷に侵入した。
十分入り込んだところで、学園は、側面に配置していた火薬を大量に積載した輸送車を爆破!!周辺の地形をすっかり変えるほどの大爆発を引き起こし、敵を分断する。
その混乱に乗じてソビエト帝国軍兵糧隊を襲い確実に仕留める。後は敵が自滅するのを待つだけだ。
ついでに自国の大将が討たれたと誤報を流せばあっという間に兵は散り散りとなった――――――。
女王の采配は尽ことごとく当たり、―――――。
次期女王の『大勝』に、人々は驚喜した。
***
私はとうとう『人殺しの化け物』になってしまった。
早くうちに帰って引き篭もって泣きたい。
―――――自分はつくづく女王になんか向いていない出来損ないなのだ。
その間に、とうとう、次期女王のお披露目をする事が決まり、
世界各地に秘密に包まれていた次期女王に関する情報が駆け巡った。
そして10月も終わりに近付いた頃、事件は起きた。
ある深夜。街中に警報が鳴り響いた。学園内は騒然となり即座に厳戒態勢がしかれた。
[名門王立紫苑館学園]は、日本で言うところの北海道に位置する。北海道そのものが、学園の、ひいては次期女王の領土である。
北海道人にとっての一番の『脅威』とは―――――――
森の中、「鮭を咥えたヒグマ」が、イヤリングを拾ったと言ってナンパしてくる事でも、
「毛蟹」を苛めたがために、栗と蜂と臼が復讐に来ると言う怪奇ホラーでもない!!
それは!!
「ソビエトが来たぞーーーーー!!」である!!
学園に自衛軍隊は、4個師団、人員5万人、戦車600両、火砲400門程だが、存在している。
その指揮権は、次期女王不在時にはその最高指揮官がその任に当たるが、次期女王が学園に在籍してる場合のみ、
その全権は、すべて次期女王のものとなる。
即座に緊急会議が開かれた。
重厚な室内の中心に巨大な地図を配置してある円卓に、15人の男達が座っている。
顔触れは、歴戦の猛者ばかりだか、今回限りは、不安を隠せなかった。
それと言うのも、今、在籍していらっしゃる、次期女王というのが、歴代女王の中でも類を見ない、「アホ女王」だという。
そんなモノに勝手に阿呆な作戦を立てられては、堪ったものではない。
隣国、ソビエト帝国とは、40年前の大戦の後、冷戦状態が続いていた。
が、此処に来て、なんと10万の兵を送り込んできた。生半可な作戦では、倍の兵力差で太刀打ちできる物ではない。
「フッ。舐められたものよ。よりにもよって、女王在籍中に、狙ってくるとはな。諸君。我々は負ける要素など一つも無いのだ!!」
「それはどうなのか?おぬしは、鵬雛にお会いした事がおありか?」
「む。貴殿は女王を愚弄するのか?!」
「イヤイヤ、我々はあくまで慎重論を唱えただけだよ」
「では今回は、私達が、作戦立案し、女王にはその了承を戴くと言う形でよいのではないか?」
「次期女王をお飾りにすると?」
「何の不都合があると言うんだ?」
「そうだ。今までだって女王不在でやって来たんだ、それで良いだろう」
騒然とする中、次期女王が、ご臨席なさるとの、先触れが場内に響き渡った。
そして静まり帰る中、会議室の大扉が開かれ、次期女王は、その姿を現した。
淡く優しい光を放つ人が立っている。
大扉の周辺が急に明るくなった様な気がして、皆、息を呑む。。
市松文様の美しい大理石の床をほとんど音をさせず滑らかに歩く華奢なセーラー服の少女。
その後を夫である次期宰相ユーリウス・玲人・神崎、女王の里親、秘密情報局局長徳永がその人を守るように続く。
円卓に座っていた15人の上流階級達が、一斉に立ち上がり、跪いた。
礼をしながらも上目遣いで品定めする鋭い視線、探るような目、眩しげな目、誇らしげな目などさまざまな視線に突き刺されながらも、その少女は、背筋を伸ばし、ショートボブの漆黒の髪がサラサラと音を立てているような、軽やかな足取りで、円卓の首座に座った。
次期女王は、この時、初めて配下の前に、その間違いようも無い光り輝く清艶な姿を披露した――――。
『この方が本当に阿呆なのか?』皆一様に首を捻った。明らかな知性、品格、威厳。
生まれ持っての「王者」が其処にいた。
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コレは、私の「演技力」を試される重要な場面だ!!
ここで、配下の信頼を得られなければ全て終わる。
私が終わるだけならかまわないが、戦争には、国家の存亡と国民の生死がかかっている。
失敗は許されない。
差し詰め今回の私の役どころは『無敵生物クマムシ!!』と言うところだろうか。
実際にクマムシを見た事はないが、無敵と言われるくらいなんだから強いんだろう。名女優には難しい役が付いて回る。
初仕事としてこれはどうなんだろう。呪われているんじゃないかと、商売繁盛のお守りを買いに走ったところで、戦争に勝ったという話は聞いたことはない。
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「初めまして。みなさん。聞いていることと思いますが、私が、次期女王、葵です。よろしくお願いします。」
葵は、天性の人を安心させるような柔らかい、良く通る声で話し始めた。
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そう言うと、葵は知性に輝く瞳を悪戯っぽくキラリとさせ口調をガラリと変える。
「なので、私も、一言だけ言わせてもらう。あなた達も、歴戦の勇者方だ。コンナモノは、私に聞くまでも無いし、聞く気も無い者もいるだろう。」
何人かが、ギクリと肩を揺らした。
「理想的なのは、私達は如何にして「戦わず」して、勝利を得、この戦争を終結し、出来るだけ長期にわたり、平和に保つ事が出来るかと言う事だが・・・。
この方針に反対の者は?」
シーーーんとする中、一番年配の貫禄のある茶色い髪の戦士が口を開く。
「方針としては、申し分ないと存じます。次期女王陛下。後は、どうするか?ということで。
私共もこの40年間手をこまねいていた訳ではないのです。
ソビエト帝国の大国にモノを言わせた豊富な資源で執拗な攻撃を仕掛けてくる皇帝の戦争好きは有名。」
「うん。まあ一戦も交えずと言うのは、私自身無理があるとは思っていた。
だが、―――北部方面部隊、近藤隊長。
いくら大国と言えど、資源は無尽蔵ではない。かなり国庫は火の車だと報告にもあった。
後継者争いも熾烈を極めているらしいな。
だから、ここのところ大人しくしていた訳だが・・・。
帝国は、ここで決めるべく、全戦力を持って、決戦を挑んできた事は明白!
と言う事は、これを打ち破る事が出来れば、終戦協定に持ち込む事も可能だと言う事だ。」
「それは外交官である。私の仕事ですね」
と、40絡みの人好きのする容貌ながら、瞳がそれを裏切っている、一癖ありそうな人物が、声を上げた。
「外交官佐々木健次郎。あなたの手腕は聞いています。終戦後の事は頼みましたよ。」
「はい。次期女王陛下。非才成る我が身の全力を持って勤めさせて頂きます。」
佐々木は、女王が自分の名前と仕事ぶりを知っていた事に目を見張り、頭を下げた。
今度は、茶髪の戦士、近藤が試すように問う。
「では戦いの基本から行きましょう。大まかなビジョンを、示していただけますか?次期女王」
葵は手前の地形図をじっと見つめ、考えながら答える。
「・・・そうだな。まず手始めは、情報の攪乱。地の利。都合の良い舞台に敵をおびき寄せ、10万の敵を分断し、各個撃破。
此処で重要なのは、これから冬だ。相手方も長期化は望んでいないはず。
短期決戦に持ち込むために、焦りが出るのなら、しめたものだ。そこにつけ込む余地が出来ると思う。そして、何んとしても、補給線を長引かせた上にそれを断ち、敵の兵糧を奪う。
これで勝ったも同然。
それを実現するために、あなた達の力を借して欲しい。どうだ?」
『Yes, Your Majesty.』
皆、安心したように答えた。どうやら合格のようだ。
葵もちょっと安心した顔で、言ってみた。
「因みに、誘き出す餌は大きいほど効果的だろう。私がなっても良い。敵の狙いは、不凍港と私だ。」
『それはいけません!!』
全員が口を揃える。
葵は、見事に揃った否定の言葉にちょっと呆気に取られながら答えた。
「どうせ負ければ私は敵の物になるんだ。まあ負ける気は微塵も無いが。出し惜しんで勝機を逃すのか?
まず、なぜこの時期だったのかで 自ずと敵の狙いも分かると言うもの。
次期女王が表に出てきた途端のこの所業だ。
後継者問題に決着を着けるべく、「トロフィー」として選ばれたのが、この私だろう。私を獲得した者が次期皇帝となると言う事だと予測できる。」
『それでも、駄目です!!』
やっぱり駄目らしい。
今まで、不敵な目をして傍観を決め込んでいた30位の赤毛の美丈夫が口を開く。
「という事は、奴ら此処まで来る気ですかな?辿りつければの話だが。」
と、ニヤリと口を歪ませるが、目は笑っていない。。
「くく・・これは舐められたものだ。学園迄来てくれるのなら此方としては願ったり叶ったりだ。果たして敵はそんなに愚かなのかね?」
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高台にはズラリと武器が並び冷たい鋼鉄の無数の眼が狙いをつけている。
しかも、峡谷の上空では気流が乱れ、強風が吹き荒れている。
危険を冒し、この上空を飛んだところで、制御不能になるか、格好の標的になるのがおちだ、敵に勝ち目は無い。
そして、戦闘は静かに開始された。
港は封鎖し、国民は災害時収容避難場所に避難させ、自警団に守らせる。
幸い今年の収穫はもう終った後だったのでそれはすべて略奪されないよう「学園」に移送し[名門私立紫苑館学園]は巨大な食物庫と変貌を遂げる。
まず、港では一切手出しせず、敵をやり過ごし、敵が沼地に辿り着いたとき、初めて伏兵で襲撃。足を取られ動きが鈍っている敵を狙い打ち、じわじわと敵兵を確実に削る。
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日本王国は、初戦を大敗という形で、後退させられる体を装い、峡谷に逃げ込む。
峡谷の奥には、巨大な食物庫と次期女王が待っているのだ。
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ソビエト帝国軍は、ついに、峡谷に侵入した。
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その混乱に乗じてソビエト帝国軍兵糧隊を襲い確実に仕留める。後は敵が自滅するのを待つだけだ。
ついでに自国の大将が討たれたと誤報を流せばあっという間に兵は散り散りとなった――――――。
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