プールサイド

なお

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落花

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コウキ、メールないなぁ……

信号を渡って、ロータリーとコンビニを横切って……駅へ行くと、ロータリー脇に、うちの高校の制服の女子が立ってる。
顔を隠してる?どこか覚えのある……
すると、ロータリーにバイクが入ってきた。

「えっ…あれ…佐久間先生?」

ヘルメットで顔が見えないけど……バイク乗ってる男の人が、女子高生にひとつヘルメットを渡した。
……彩夏先輩と、佐久間先生じゃない?
二人はすぐに去って行ったけど、私はそこで立ち止まっていた。

つきあってるの……?

〝普通なやつに限って、裏で何してるか〟

コウキの言葉が、真実味を帯びる。

彩夏先輩と佐久間先生と、コウキ……
前に何かあったの?


コウキに「今どこ?」ってメールしても返事はなく……
帰り道、ゆっくり歩いたけど家に着いちゃった。

この一ヶ月、ずっと会ってエッチして、コウキの気持ちいいとこ全部知ったし、逆もそう。

コウキ、私の躰飽きちゃったかなぁ……
毎日会わなくても平気になっちゃったんだね。
今までが特別盛り上がってただけで、普通に戻るだけなのに、夜はそれが寂しく感じた。


コウキから返事があったのは、夜中で。

明日、行けたら非常階段行くー って。
だから、鍵壊れてるよって言ったのに、聞いてないし……


朝練、やっぱり彩夏先輩は来てなくて。
あのバイクの人も、佐久間先生って確信はない。
一晩寝て起きたら、見間違いだったようにも思えて、ふわあ……眠い。

「おっはよ~っ」
「わあー……藍瑠元気じゃん」
「へへっラブラブだからかな?」
「仲いいんだねぇ。よかったね」
「うんっ朝もねー先輩と一緒に来てねー」
「彩夏先輩のことはもういいの?」
「……やだけどー、あたしにも過去があるし。今すっごーく大事にしてくれてるから、いいの。それより、あの人いろんな男たぶらかしてるよー。ビッチで有名らしいしね」

藍瑠はさばさばと、憑き物が落ちたように明るく話してる。

「あー……」

佐久間先生も……そのうちのひとり?

「コウキ先輩こそどーなの?彩夏先輩前カノじゃん」
「ん…気にしないようにしてる」
「ま、コウキ先輩はなおのことだーい好きだもんね、大丈夫か」

それがね……わかんなくなっちゃったんだ。コウキの気持ち。
飽きっぽくて気分屋な性格を知っているだけに、こわくなっちゃった。


朝練終えて、またメールを確認。コウキから何も来てないけど、音楽室まで走った。
教室の中からピアノの音色が聴こえる。野原君が弾いてるのかなぁ……
そっと、非常口のドアを開けようとした。

ガチャ…ッ ビュウッ

階下のドアも開いているのかもしれない。埃っぽい風が強く吹き込んで来て、目をつぶる。
すると、音楽室のドアがガタガタ揺れた。音楽室の窓も開いているのかもしれない
目をこすって見回してみても、非常階段には、誰もいなかった。

ドアを閉めたら、音楽室のドアの揺れが止まって、ピアノの音色が途絶えた。

野原君出てくる……?

でも、私には会わせる顔がない。
せっかく話しやすいって言ってくれたのに、台無しにしちゃった。
教室に戻ろう…と歩き出したら、またピアノの音が流れ始める。

優しい音だなぁ。
これ弾いてるの、野原君だよね?

一目だけ確認しようと、背伸びしてドアの窓ガラスを覗いた。
そこには、ピアノに向かっている野原君と、楽譜を指差して何か言っている女の子。
合唱部の先輩かな……?
二人で、仲よさそうに笑ってる。

野原君ひとりじゃなかったんだね。それじゃあ、ここで今私が見つかったとしても、そんなに気まずくはならなかったかな。


そっか、野原君が話しやすい女子は他にもいたんだ。

考えすぎちゃったな。

どこかで、自分は野原君にとって特別って思ってたのなら、恥ずかしい思い上がりだ。

こんな私だから……
コウキも嫌なのかなって
ぐしゃぐしゃ、濡れた髪を掻き毟る。


……コウキ、なんで来ないの。

「あーっもぉっ‼︎なんで来ないのっ」

こんな私、私じゃない。
寂しいなら、寂しいって言わなきゃ、きっとコウキは気づかない。
予鈴が鳴るまでまであと少し、私は、3年の校舎に走り出した。




「コウキ?まだ来てないよー」

勇気を振り絞って、コウキのクラスまで行ってみたけど……まだ登校してないとは。遅刻なの…?

「失礼しました……」

いないのならすぐに我が校舎に戻ろう……
とぼとぼ帰っていたら、ちょうど、野原君が向こうから。

やばっ
顔合わせらんなーいっ

急いで教室に入ろうとしたのに、入り口で喋ってるコたちが阻んで入れない。

「ごめんっ入るっ」
「あーおはよーっ」

あいさつはいいから入れてっ…!


したら、後ろから肩をつんつんされる。

「……波多野。おはよ。」
「おはよ……」
「なんで顔隠してんの」
「え、だって……」

私が好きだったこと、もうバレてるんでしょ?
ちらっと野原君を見たら、柔らかく目を細めてた。

「さっき、音楽室来た?」
「行った……」
「入って来たらよかったのに」

あれ……?野原君、普通…?

「いつ来るのかなーって思ってたよ?」
「え……そっか、ごめん。今日は昼休み行くね」

そうだよね、藍瑠連れてってあげなきゃ。野原君もそれが一番の目的だろうし。
私が好きだったことなんて、全然バレてなかったのかもしれない。
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