異世界で、宿屋の受付は恋をする。〜モブですが、人生楽しみます!!〜

sora

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6.隠し通路

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「と、言うわけで!仮パーティ結成!!!」
 今、私の目の前には、ロイ様とアルがいる。
 転移陣の前で、みんなで集まった。たまたま休みが合ったので、いっそ、みんなで!と思ったのだ。
「いや、なんでだよ!?」
 アルは不服そうだ。
「……。」
 ロイ様は、ふいっと向こうを見たが、どうやら笑いをこらえている様子。
「だって、みんなで行った方が楽しそうじゃない?」
「…お前なぁ。」
 アルはあきれて黙ってしまった。
「あはは、ルーナさん、こんなキャラだったんだ?俺の考えの、斜め上を行くなぁ。」
「アルの前では、こんな感じです。がっかりしました?」
「いや、俺も そっちの方がいいな。タメ語で話さない?」
「いえ、ロイ様にタメ語は ちょっと…」
「そうですよ!こいつとは幼馴染なんで!!」
 お?機嫌が ちょっと治った?
 
「では!三階層へ、出発しゅっぱーつ!!」
 元気良く私は歩きだした。
「「しゅっぱーつ。」」
 テンションは低いが、意外とノリがイイ。しかも二人の声がハモった。
 転移陣の光に包まれた。

 一階層、二階層と進んで行く。さすがに二人も強い人がいると、楽勝だ。途中、私の作った回復薬を二人にあげた。
「飲みやすい…。ほんとにルーナさんが調合したの?」
「はい。まだ何本か持ってきているので、必要なら言ってください!」
「ありがとう。」
「薬屋やれば、もうかるのに。」
 アルは そう言うけど、私は宿屋を辞める気はない。
「いいの、趣味だから。
 そういえば、ジョンさんとは付き合い長いんですか?」
 さりげなく聞いてみた。なんて答えるだろう?
「あぁ、昔パーティを組んでいたことがあって。今は解散して、あっちは騎士、俺は冒険者。」
 騎士は護衛や王都・街を守る仕事だ。冒険者はギルドで討伐依頼を受けて、街の外やダンジョンで戦っている。ダンジョンはレベル上げや素材集めに適しているが、深い階層は まだ地図が出回らず、高ランクの人しか行けない。
「そうなんですか?!」
 友人なのにも驚いたが、パーティを組んでいたなんて……知らなかった。
「なに?ジョンに惚れちゃった?」
 いたずらっぽくいうロイ様。ゲームでは、こんなキャラじゃなかったはず。
 今の言葉にアルは、ビクッと反応した。
「惚れてません。タイプじゃないです。」
「じゃぁ、どんな人が…」
「ほら、ここから三階層だ。その、行きたい場所ってのは遠いのか?」
 ロイ様の言葉をアルはさえぎった。
「もう少し奥だよ。地図に書かれていない、隠し通路があるんだ。」
 どんどん奥へと進んで行く。
「行き止まり??」
 進んだ先は行き止まりだった。しかし、ロイ様は行き止まりの横の壁に手を当て、魔法を唱えると……道が現れた。
「!?隠し通路!?」
 アルも知らなかったみたいだ。
「すぐに閉じるから、急いで。」
「はい!!」


「すっげぇ…。」
「うわぁ……!素敵…!」
 進んだ先には、キラキラと光る泉と洞窟の中なのに木々が生えていた。地面も所々、キラキラと光っている。
 幻想的な場所だ。
「この石、雷光石らいこうせきですか?」
 この世界の本で読んだことがある。もっとも、ゲームの中では登場しなかったが……。
「よく知ってるね?!さすがルーナさん。」
「いえ、見たのは初めてなんですが…。これ、少しだけ採取していっても大丈夫でしょうか?」
「少しなら大丈夫だと思うよ。」
 リュックから、発掘道具を取り出す。素材採集には必要な道具はリュックに入れている。
「よく、こんな場所知ってましたね。」
 アルも驚いている。
「ギルドには報告してないから、秘密だよ?」
 せっせと作業する私を面白そうにロイ様は見ていた。
 
 
「ロイ様、今日は連れてきて頂き、ありがとうございました!!おかげで、いい素材を見つけられました!」
「良かった。ルーナさんなら喜ぶと思ったんだ。」
 さあ、帰ろう!と思った矢先、何か声が聞こえた気がして、泉に近づいた。
「?今、何か聞こえませんでしたか?」
「え?」
 バシャンッッ
 二人が私の方を振り返った瞬間、何かに引っ張られるように、私は泉に落ちた────。
 
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