異世界で、宿屋の受付は恋をする。〜モブですが、人生楽しみます！！〜

9.セラ

―――セラside―――
　
　私は、ラウナ村という貧しい村に生まれた。
「ピンクの髪なんてダッセェ！」子どもの頃に よく言われた言葉だ。親に似なかった私は、父は自分の子ではないのではと母を疑い、母もまた貧しさのあまり、産まなければ良かったと私に言った。
　ボロボロの服、ボサボサの髪……。
　怒られることが恐怖だった。
　みんな嫌い、みんな消えればいいのにと思った。
　
　私は17才になった。
　目の前で転んだ女の子を立たせてあげようと手を貸した時だった。聖なる光が空へと光った。聖魔法が発現し、女の子の膝の傷を治したのだ。
「聖女さまだ！！」
　女の子は叫んだ。そこから私の生活は変わった。
　両親は私を褒ほめた。
　今までのことが無かったかのように…。
　家には毎日のように病人が押し寄せ、こっそり親はお金を貰っているようだった。服や食べ物も、ずいぶん良いものになった。
　噂を聞きつけた王都の人が迎えにくるらしい。
　私を取られたくない両親は私を閉じ込めた……。
　
　我慢の限界だった。
　そんな時、声が聞こえた。ささやくような声。
『嫌なら、みんな壊しちゃえば？』
　黒い者が体に入ったのが わかった……。

　それから村の みんなを傷つけた。ダメだと思うのに、体が言うことを聞かない…。
『誰か私を助けて────。』

◇◇◇◇

「俺が借りている部屋で申し訳ないが、話を整理しよう。一応、部屋には防音魔法を かけさせてもらった。」
　ロイ様が話しだした。ここにいるのは、私、アル、ロイ様、ジョンさん、ドラゴンのルカだ。
「ブラック・ドラゴンって存在したんだね…」
　ジョンさんが私の肩にいるドラゴンを、まじまじと見ている。ジョンさんなら大丈夫だと、姿を現してもらった。
「この姿じゃ悪さなんて出来ないだろうし、ドラゴンは保留で。今は、聖女だ。セラ・ホワイトだったな？悪魔に乗っ取られたとは、本当なのか？」
「聖女が現れると、国が保護・管理することになっているから、俺たちが派遣されたわけだが……、村が闇に覆おおわれたんだ。先に村の様子を見に行った調査員から聖女が、悪魔に乗っ取られたと報告後、連絡が取れなくなった。」
　ジョンさんの話にロイ様がピクリと反応した。
「俺たちと言うのは、ディランもか？」
「あぁ。ディランは今、村が封鎖されているから、近くで待機中。心配は いらない。」
　
　ディラン・ウォーカー。ゲームでは、ロイ様の友人で彼もセラの護衛についていた。メガネをかけた銀の瞳と髪をしていた。珍しいものを集めるのが好きな変わった人だ。修練の旅を終え、セラと別行動中に ある呪いを受け、聖魔法が間に合わず、ドラゴン戦には参加しない。それを防ぐために、前回のダンジョンで入手した苔こけを使って、聖水のような薬を作り、ロイ様に渡してもらうつもりだったのだが……。
「あ！！！」
　私は思わず大きな声を出してしまった。ルカもビクッとした。
「効くかは、わかりませんが…ロイ様に渡すのをお願いしようとした聖水のような薬があります！聖女に飲ませてみては、どうでしょうか？」
　「聖水か……。君が作ったのなら、普通の聖水では無さそうだな。」
　ロイ様が言った。その言葉に、なんて言っていいのか悩んだ。
「……。でも、本当に効くかは、わかりませんからね？！」
「どうやって飲ますんだよ？」
　無言で聞いていたアルが、口を開いた。