異世界で、宿屋の受付は恋をする。〜モブですが、人生楽しみます!!〜

sora

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19.調合

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「ルーナぁ!!!」
 武器屋の看板を下げた店の扉を開けた途端、ガバッと抱きしめてきたのは、配合の時に部屋を貸してくれている友人『レイ・エバンズ』。
 私よりも背が高く、スラっとした体型、耳にはピアス、黒色ショートに赤色のメッシュが入った髪型をした女性だ。瞳は赤色で、少し つり上がった目をしている為、女の私でもドキっとするカッコ良さがある。
 彼女は、この店の店主であり、武器やアクセサリーの細工師。剣に魔石を付けたり、ネックレスや指輪に魔法効果を付与したりする為、作業部屋は魔法が漏れない仕様になっていて、たまに そこで調合をさせてもらっている。まだ素材集めに必死になっていた頃、帰り道に、たまたま ぶつかってしまい、話をしたのが出会いだった。
 に、しても最近よく抱きしめられるな……。セラさんの顔がチラッと浮かんだ。
 
「久しぶりじゃないか!元気にしてた?」
「うん、もちろん!レイも元気だった?」
 顔を、まじまじと見られ 苦笑いで返した。
「ルーナの顔見て、元気になった! ん?……今日は一人じゃないんだ?珍しいね。」
 そう、私の後ろにはロイが一緒だ。先日、ロイとアルに素材集めを手伝ってもらったのでポーションと傷薬を調合してプレゼントしようと、久々に ここに来ることにした。ロイが調合するところを見たいと言うので、一緒に来たのだった。
「こんにちは。」
 ロイが笑顔で挨拶をした。
「……こんにちは。」
「ロイ、彼女は友人のレイ・エバンズ。調合する時は彼女の作業部屋を使わさせてもらってるんです。レイ、こちらはロイ・ブラウン。S級冒険者で…えっと、素材集めを手伝ってもらったり、とても良くしてもらってるの。」
「よろしく。」
 またロイはニコリと笑って言った。
「……どうも。」
 ……なんだろう……なんかヒヤっとした空気を感じる。……気のせい??
「とりあえず、中に入って!さっそく作業部屋に行こう!!」
 レイに案内され、お店に入った。
 中にはカウンターと、壁やショーウィンドウに ズラっと剣や防具、アクセサリーが飾ってある。外は少し古びているが、お店の中はキレイに手入れがされ、初めて入った時には「うわぁ…」と声が漏れたものだ。開店前なので、お客は まだ誰もいない。

 奥の部屋に進んで行くと、小さな魔法陣の描かれた扉がある。いつもの作業部屋だ。扉を開けると、少し広い部屋の真ん中にポツンと大きめの机、壁際には剣やアクセサリー、道具がいろいろ置いてある作業机と椅子が置いてある。
「ここで作ってるんですね。」
 ロイが、ふぅんと部屋を見回した。
「ところでルーナ、肩から すごい魔力感じるんだけど……なんなの?」
 レイが肩にいるルカの方を見ている。そう言えば魔力の強い人には魔力感知されるって言ってた気がする…。
「!? あ!!……えっと、ルカ?彼女なら大丈夫だと思うんだけど……ダメかな?」
 チラッとルカを見て、姿を見せてくれないか確認した。
『……。』
 無言でルカは、姿を現した。
「ド、ドラゴン!?……ちっさ。」
「ふっ、」
 つい吹き出してしまった。ルカはフンっと、そっぽを向いた。
「ごめん、ルカ。
 レイ、こっちは『ルカリオン』。ブラック・ドラゴンなんだけど…早く封印を解いたせいで、この姿なの。」
 ドラゴンと契約してしまったことを簡単に話した。
「契約!?……ルーナは只者ただものじゃないとは思ってたけど……。」
「?それって……?」
 ロイが レイに話を聞こうとしたが、見た方が早いと、今回作ろうと思っていたポーション2本の調合を見せることになった。

 
「なるほどな……。ルーナが契約出来た理由が、わかった気がするよ。」
「え?」
 ロイが「納得した」とうなずいた。
 調合は、ただ混ぜるだけではない。中心にポーションを入れる瓶を、その回りに必要な材料を机の上に置いて、魔力を流す。すると、材料がふわりと持ち上がり その中心で混ぜ合わさり、キラキラと光りながら薬へと変化する……。魔力制御の部屋で作るのは、混ぜ合わせる時に出る魔力はもちろん、風や光が外へ出ないようにするためだ。万一失敗しても部屋が散らかる程度なので、安心して作れる。
「他の人の調合を見たことがあるけど、その方法はルーナにしか出来ないと思うな。すごく複雑な作業だから。」
 まさかのチート能力的な…??
 ゲームだと簡単にポンッと出来ていたが、実際すると難しいとは思っていた。最初の頃は失敗もしていたけれど、慣れると楽しい。
「調合者の力加減で、商品の出来が違うって聞いたことはあったけど、こんな感じなんだね。ポーションの透明感も違うし。」
 確かに、私が配合したのは透明度が高いかもしれない。
『今頃 気づいたのか?』
 ルカが私の肩から降りて言った。
「ルカは知ってたの?」
『面白い能力だな、とは思っていた。』
出来たポーションの瓶を見つめ、少し嬉しくなった。他の人に出来ないことが出来る、そう思うと、もっと何か役に立てるかもしれないと心がはずんだ。
「じゃぁ、傷薬も作りますね。」
 そう言って、材料の準備をしようとしたが、ルカに止められた。
『今日は、やめた方がいい。力の使いすぎだ。』
「え?いつもは、もう少し作ってるんだけど……」
『我が、お前の力を貰ってるからな。無理はダメだ。』
「確かに、ルカのちからが会うたびに高くなっている気がする。ルーナ、今日は もう戻ろう?」
 ロイとレイも、これ以上 調合をするのは反対のようだ。
「……そうですね。最近疲れやすいのも、そのせいかもしれません。片付けるので、ロイは先に出ててください。」
 待たせるのは申し訳ないと思い、そう言ったが「待ってるから、ゆっくりいいよ。」と言われた。
 
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