異世界で、宿屋の受付は恋をする。〜モブですが、人生楽しみます！！〜

24.接触

SとAランクは班が組まれ次第、現地へ向かい、それ以下の冒険者は、解散となった。
　
　ルカも協力してくれたら心強いかと思ったが、ドラゴンの姿だと討伐対象になりかねない……。少し様子を見ることにした。
　約束していた服屋へ帰りに寄ると、ルカに合いそうな黒系の服を さっと選んだ。
　さっそく着てみたいと言うので試着室で人の姿へ変わり、そのまま着て購入することになった。
　人の姿では戦えるのか、ふと気になって聞いてみると『本来の力は出せないが、戦える』らしい。もしもの時は力を貸してほしいとお願いした。

　宿屋へ向かう道で、ルカがピクリと反応し立ち止まった。
「？…ルカ？」
　ルカの顔は正面を見据えている。
　目の前には一人の男性が歩いて来ていた。見た目は20代くらいだろうか？青い短髪に赤色の瞳をしている。服装は黒系の上下に紺色のコートを羽織っている。ルカは私を隠すように一歩前へ出た。

「アトス…」
　ルカの知り合いのようで、ポツリと呟つぶやいた。男性の名前だろうか？
「久しいな、ルカリオン。お前の気配を感じて、来てみたんだが……」
　三百年封印されていたルカの知り合いって……やばい奴な気がしてならない。
「共に、人間どもを滅ぼさないか？」
　思った通り、聞き間違いであってほしい会話が聞こえてきた。
　ピリッとした空気が流れ、私はゴクリと唾を飲んだ。
　
「戦闘中じゃないのか？Sランク冒険者も向かったはずだが。」
　知り合いだからか、ルカは落ち着いて見えた。
　戦闘中って…まさか、ディアボロスか、その手下…？
「分身を置いて来たから問題ない。で、返事は？」
「興味ない。暴れるのはいいが、他でやってくれ。この街に手を出したら、お前でも容赦しない。」
「はっ、昔は暴れてたくせに。封印されて人間が怖くなったのか？」
「……。」
　男がチラッと、こちらを見て笑った。
「その女に惚れでもしたか？……じゃぁ、こんなのは どうだ？」
「！？」
　目の前の男が自身の影に消えたかと思うと、突然 背中が熱くなり、ドクンと体が脈打つ感覚がした。
　振り向くと、男が私の後ろに移動し、手の平が私の背中に触れ、その腕をルカが掴んでいた。
　影を移動した…？
「その手を離せ。」
　ルカの冷たい視線にゾクリとした。
「もう遅い。」
「う…っ」
「ルーナ！」
　ルカの私を呼ぶ声を聞きながら、私は激しい痛みと共に意識を手放した────。