異世界で、宿屋の受付は恋をする。〜モブですが、人生楽しみます！！〜

32.口論

「レイ、ルカ、そのくらいで……。」
　 朝食の準備が終わったところで、二人に声をかけた。
　テーブルには三人分のパンとコーヒーが置いてある。パンはスクランブルエッグとベーコンを挟んだロールパン。レイの家には食材が少なかった為、二人が起きる前に近くのパン屋さんとお肉屋さんで買って来たものを焼いてアレンジした。
　二人とも向かいの席へ離れて座ったので、私も手前の席へ座った。
「美味しそう！ありがとう、ルーナ。」
「どういたしまして。」
　早いところ、食べてしまおうとパンにかじりつく。
「ねぇ、ルカリオンと契約解除して、私と住まない？」
「え？」
　レイの発言に少し戸惑う。レイの周りからキラキラオーラが出てる気がする。
「俺は解除しないからな！」
　二人は、またも睨み合う……。昔から、こんな感じなのだろうか？
「あんたに聞いてない。ダンジョンにあるらしいじゃない？その方法。」
「！？」
　私とルカの手が同時にピタリと止まる。
　ロイたちが言っていた五階層にあるという『契約の間』を言っているのだろうか？なんでレイが知ってるの？！
ルカにも言ってないのに…！！
「……。」
「……。」
　私もルカも一瞬 無言になり、気まずい雰囲気が流れた。
レイが最初に「ルー…」と声に出し、ルカも同時に「ルーナ。」と名を呼んだ。
「すまない。俺も、その話は知ってる。……気になって、あの時 聞いてたんだ。」
「え？！！」
　あの時って、ジョンさんたちと その話をした時のことよね？たしか防音魔法を かけてたはず…。契約してると、離れていても会話を聞いたり出来るってこと？？
　
「盗聴まがいのことするなんて、最低だな。」
　レイが冷ややかに言った。ルカはと言うと下を向いてしまった。
「ルカ、勝手に会話を聞いたのは良くないけど、言わなかった私も悪かったと思ってる……ごめん。
　あと、あの時 話を聞いてたなら知ってると思うけど、私はルカといると楽しいから、ルカが解除してくれるまで待とうと思ってるよ？勝手に解除はしない。約束する。
　……レイも心配してくれて、ありがとう。」
「ルーナが そう言うなら、しょうがないけど……。でも、ルカリオンが人の姿でいるなら、住むところは考えないとだよ？」
　今までのように人に見えない小さなドラゴンの姿なら宿屋でも問題ないだろうが、人の姿となったら話は別だ。
「……ルカは、人の姿で居たいのよね？住むところを探すから、決まるまでは前の姿でいてくれる？」
「わかった。金かねは俺にも当てがあるから、なるべく早く頼む。」
　レイは困った顔をしていたけれど、近々 家を探そうと思っていたし……二人で暮らすのも悪くないかもしれない。
　ひとまず朝食を食べ、約束通りルカは光を放つと小さなドラゴンへと姿を替え、宿屋へ帰ることになった。
　
　
　◇◇◇◇

　ルカと家を買うなら、街外れの方がいいと言う話になり、空き家を三軒ほど下見をして、そのうちの一軒に決めた。宿屋からは少し遠くなってしまうが、日当たりも良く、中の作りも理想通りだった。ルカは私がいいなら、そこで良いと言ってくれた。
　ルカには小さなものなら、異空間に収納出来る能力があるらしく、ドラゴンとして暴れ回っていた時に集めた宝石を換金かんきんして、そのお金で払ってくれた。チートが過ぎる。