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33.幸福
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すっかり辺りは暗くなり、人通りも少なくなってきた。
ルカが「寄りたいところがある」と言って帰り道に立ち寄ったのは街で一番高い時計塔の裏手側だった。
この時計塔はいつも閉じられていて、私は入ったことがなかった。この最上階にある古びたベルは遠くから見たことがあり、いつかは近くで見たいとは思っていた。
人の気配がないのを確認して、ルカは私を お姫様抱っこした。
「へ?!ちょっ……!なんで?!」
「時計塔の最上階まで飛ぶから、目、つぶってて。」
急な出来事に慌てつつも、言う通りにする。目を閉じてすぐに浮遊感を感じた私は少し怖くなった。ぎゅっとルカにしがみつく……。
「…着いたぞ。」
「え?」
ルカは そっと、私を下ろした。目を開けると眼下に広がっていた美しい光景に感動した。
「綺麗……。」
見渡す限り、街灯の光や街の光がキラキラと輝いて見えて私はその光に包まれているような気分になった。
ルカは「危ないから」と、私の右手を優しく握った。ルカの手は温かく、ほっとする。
ルカの方を向いた時、視界にベルが入る。
「私、ベルが鳴ってるの聞いたことないかも…。」
「ずいぶん前にベルを鳴らさなくなったらしい。今は、封鎖中なんだ。」
「だから、誰も居ないんだね……。」
また町の方に目を移すと、しばらく二人で その絶景を眺めた。
ふと、これまでのことを思い出していた。
宿屋で働いて、冒険者登録したり、いろんな人に出会ったりもした。
大好きな『恋の欠片』のキャラクター、ロイ、ジョンさん、セラさん。幼馴染のアルやレイ……。そしてルカ。
ルカに目を移すと彼が街をじっと見つめるその横顔に私は目を奪われた。
褐色の肌に風に揺れる漆黒の髪。光に照らされて普段は見れないルカの表情、男性らしい肉体美にドキっとして、慌てて私はルカとは反対の街並みを見た。
「優、だったか?名前。」
「!?」
優……生前の私の名前。全てを打ち明けた時、名前も聞かれ、話したのを思い出した。
「よく覚えてたね。でも今はルーナの方が、しっくりくるかな。」
ふふっと笑ってみせた。
「そうか。俺はルーナと出会えて良かった。今俺がここにいるのはルーナのおかげだ。一緒に過ごしたいし、守りたい。この先ずっと…。……ルーナが好きだ。」
少し照れた様子のルカだったけど、キリッとした真剣な表情になって、私に告白した。その言葉に胸が高鳴った。
「ずっと…?」
もっと聞きたくて、つい聞き返してしまった。
「ああ。一緒に住んで、デートして、結婚して……ルーナとの子どもも…ほしい。その後は…」
「あっ……ま、待って…!」
人生計画を全部言ってしまいそうなルカの言葉に恥ずかしさのあまり遮った。
「私も恋愛として、ルカのことが好きだよ。」
「……!!」
よほど嬉しかったのかギュッと抱きしめられ、優しく唇と唇が触れ合った。初めて交わした口付けはとても幸福感を感じた。
急展開ではあったけど、大切な人たちを守れて、好きな人も出来た。これから まだ、どうなるか わからないけれど、今 私は幸せだ────。
◇◇◇◇
新居へ引っ越したことをロイたちに話したら、すごく驚いているようだった。……と、言うか怒られた?
「なんで相談しなかったんだよ!?」
アルの一言目は、それだった。
ロイは落ち込んだように深い ため息をついている……。
ジョンさんとセラさんも驚きで一瞬固まっていた。
「ブラック・ドラゴンと住むなんて危険すぎます!!」
「ルカが一緒に住みたいと言ったのですか?!今からでも辞めた方が……」
口々に反対する言葉が飛び出した。
……私、何か失敗した?
「わ、私も望んだことなので、大丈夫です…!ルカも優しいですし。」
ちなみにレイにお願いして、配合部屋も作って貰った。
レイは家に来なくなるのではと寂しがっていたけれど、客室もあるので、いつでも泊まりにきてと伝えた。もちろん私も、たまには遊びに行くつもりだ。
ルカは冒険者登録して、Sランクに最速でなると意気込んでいる。私としては一緒にダンジョンに行けるのは嬉しい。もちろん一緒に行ったら私は足手まといだろうけど…。
「ルーナ。」
「なに?」
不意にルカに呼ばれ振り向くと、ぎゅっと抱きしめられた。頭を抱かれ、すっぽりとルカに収まる感じだ。
「!?」
「ルーナは俺のだから。」
手を出すなよ、と軽く威嚇しているようだ。
全員がピシッと固まっていた。
「ルーナさん~!やっぱり考え直しませんか?」
セラさんが心配の言葉を口にした。でも私の気持ちは変わらない。
ルカと一緒に生きていきたい───。
ルカが「寄りたいところがある」と言って帰り道に立ち寄ったのは街で一番高い時計塔の裏手側だった。
この時計塔はいつも閉じられていて、私は入ったことがなかった。この最上階にある古びたベルは遠くから見たことがあり、いつかは近くで見たいとは思っていた。
人の気配がないのを確認して、ルカは私を お姫様抱っこした。
「へ?!ちょっ……!なんで?!」
「時計塔の最上階まで飛ぶから、目、つぶってて。」
急な出来事に慌てつつも、言う通りにする。目を閉じてすぐに浮遊感を感じた私は少し怖くなった。ぎゅっとルカにしがみつく……。
「…着いたぞ。」
「え?」
ルカは そっと、私を下ろした。目を開けると眼下に広がっていた美しい光景に感動した。
「綺麗……。」
見渡す限り、街灯の光や街の光がキラキラと輝いて見えて私はその光に包まれているような気分になった。
ルカは「危ないから」と、私の右手を優しく握った。ルカの手は温かく、ほっとする。
ルカの方を向いた時、視界にベルが入る。
「私、ベルが鳴ってるの聞いたことないかも…。」
「ずいぶん前にベルを鳴らさなくなったらしい。今は、封鎖中なんだ。」
「だから、誰も居ないんだね……。」
また町の方に目を移すと、しばらく二人で その絶景を眺めた。
ふと、これまでのことを思い出していた。
宿屋で働いて、冒険者登録したり、いろんな人に出会ったりもした。
大好きな『恋の欠片』のキャラクター、ロイ、ジョンさん、セラさん。幼馴染のアルやレイ……。そしてルカ。
ルカに目を移すと彼が街をじっと見つめるその横顔に私は目を奪われた。
褐色の肌に風に揺れる漆黒の髪。光に照らされて普段は見れないルカの表情、男性らしい肉体美にドキっとして、慌てて私はルカとは反対の街並みを見た。
「優、だったか?名前。」
「!?」
優……生前の私の名前。全てを打ち明けた時、名前も聞かれ、話したのを思い出した。
「よく覚えてたね。でも今はルーナの方が、しっくりくるかな。」
ふふっと笑ってみせた。
「そうか。俺はルーナと出会えて良かった。今俺がここにいるのはルーナのおかげだ。一緒に過ごしたいし、守りたい。この先ずっと…。……ルーナが好きだ。」
少し照れた様子のルカだったけど、キリッとした真剣な表情になって、私に告白した。その言葉に胸が高鳴った。
「ずっと…?」
もっと聞きたくて、つい聞き返してしまった。
「ああ。一緒に住んで、デートして、結婚して……ルーナとの子どもも…ほしい。その後は…」
「あっ……ま、待って…!」
人生計画を全部言ってしまいそうなルカの言葉に恥ずかしさのあまり遮った。
「私も恋愛として、ルカのことが好きだよ。」
「……!!」
よほど嬉しかったのかギュッと抱きしめられ、優しく唇と唇が触れ合った。初めて交わした口付けはとても幸福感を感じた。
急展開ではあったけど、大切な人たちを守れて、好きな人も出来た。これから まだ、どうなるか わからないけれど、今 私は幸せだ────。
◇◇◇◇
新居へ引っ越したことをロイたちに話したら、すごく驚いているようだった。……と、言うか怒られた?
「なんで相談しなかったんだよ!?」
アルの一言目は、それだった。
ロイは落ち込んだように深い ため息をついている……。
ジョンさんとセラさんも驚きで一瞬固まっていた。
「ブラック・ドラゴンと住むなんて危険すぎます!!」
「ルカが一緒に住みたいと言ったのですか?!今からでも辞めた方が……」
口々に反対する言葉が飛び出した。
……私、何か失敗した?
「わ、私も望んだことなので、大丈夫です…!ルカも優しいですし。」
ちなみにレイにお願いして、配合部屋も作って貰った。
レイは家に来なくなるのではと寂しがっていたけれど、客室もあるので、いつでも泊まりにきてと伝えた。もちろん私も、たまには遊びに行くつもりだ。
ルカは冒険者登録して、Sランクに最速でなると意気込んでいる。私としては一緒にダンジョンに行けるのは嬉しい。もちろん一緒に行ったら私は足手まといだろうけど…。
「ルーナ。」
「なに?」
不意にルカに呼ばれ振り向くと、ぎゅっと抱きしめられた。頭を抱かれ、すっぽりとルカに収まる感じだ。
「!?」
「ルーナは俺のだから。」
手を出すなよ、と軽く威嚇しているようだ。
全員がピシッと固まっていた。
「ルーナさん~!やっぱり考え直しませんか?」
セラさんが心配の言葉を口にした。でも私の気持ちは変わらない。
ルカと一緒に生きていきたい───。
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