ショートショート始めました。

奈央

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既読

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「おお、君か!」
「はい。本日からお世話になります」
「聞いているよ、君の評判は。とにかく仕事が速くて的確だって」
「いえ、そんなことないです」
「いいよ、謙遜しなくても。能ある鷹はなんとか、って言うしな。期待しているよ。なにかコツがあるのか?」
「はい。実は開発に人工知能を使っていまして」
「人工知能? AIってやつか。つまり命令しなくても自動的にパソコンが開発をしてくれる、というわけか?」
「はい。簡単に言うとそうなります。私の場合、このAIに人の感情を組み込みました。人の気持ちになってプログラムを組んでくれるんです。『エモーション』と名付けました」
「エモーション、感情、というわけか。なるほど、少し難しいが、君とその人工知能がとても優秀だと言うことはよくわかったよ。その特殊な方法で是非成果を上げてほしい」
「はい。頑張ります」
「早速だが君には我が社のメッセージアプリの開発を担当してもらうと思っている。その技術で低迷気味の顧客満足度を向上させてほしい」
「わかりました、ご期待に添えるよう頑張ります」

「進捗はどんな感じだ?」
「はい、順調です。この既読という機能、便利だと思いまして」
「自分が送ったメッセージを相手が読んだがどうかわかる機能だな。もはや必要不可欠だろう」
「ええ。返信がこなかったりすると、単にまだ読んでいないのか、読んだ上で返信がないのかがわかりますからね」
「求められるものを提供するのは当たり前だ。例え求められていなくても結果的になくてはならないものになる。これこそがサービスを提供する事業の醍醐味だよ」
「その通りだと思います」
「で、その既読機能がどうしたんだ?」
「はい。確かに便利なんですが、エモーションがちょっと気になる点を捉えたようです」
「というと?」
「メッセージがきたときに開いてしまったら相手に既読がつきますよね。でも場合によっては返すのが面倒な時もあります。そんな時困りますよね」
「既読無視、ってやつだな。確かに人によっては読んだのに何で返してこないんだよ、なんて思うのもいるだろう。そういう場合はあえて開かないで既読をつけないようにするんだよな」
「はい。あえて未読のままにしておく、なんてよくあることなんですが、間違って開いてしまった時なんか困るんですよね」
「なるほど。確かにありそうだな」
「そんな時って相手が自分の既読に気付いたかどうか、気になりません? 既読を見られたらなんか返さないといけない、って」
「ああ。確かにそう言われればそうかもしれん。君のそのエモーションはそんなことまで考えてくれるのか」
「はい。まさに人の感情に寄り添ったプログラムですので」
「さすがだな。このアプリにはもってこいの性能だ」
「そうですね。この点、エモーションが解決を計りまして」
「なるほど。見えてきたぞ。既読が読まれたかどうかの確認、つまり既読既読の機能を付けようというわけか」
「はい。どうやらそのようです」
「いい案だ。ちょっとバカげてるが斬新で面白い。是非進めてくれ」
「いや、その機能の開発はもう大分前に終わってまして、すでに搭載済みです」
「なに!? そうなのか! さすがの仕事の速さだな」
「いえ、全てはこのエモーションのおかげです」
「そうか。では反響を待つとしよう。では今はどんな開発をやっているんだ?」
「はい。少々お待ちください。今中身を確認します。えーと、今は……、既読既読既読既読既読機能を開発中のようです」

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