19 / 31
お飾りの王妃
しおりを挟む
就寝前の王妃の部屋で王妃付きの侍女が国王の訪れを告げる。
「陛下が王妃様にお会いしたいそうです」
「陛下が?こんな夜更けに先触れもなく?」
訝しんだ表情を浮かべながら、「ふう」っと溜息を洩らしながら
「仕方がありませんね。お通しして」
渋々、侍女も王妃の命に従った。この王妃のいる宮は側妃時代からの住まいで、王妃になっても本当の王妃として扱われたことのない不遇な人生を送ってきた。王妃にとって国王は夫ではなくこの国の仕えるべき主でしかない。
夫婦として情を交わした事のない『お飾りの妻』それが王妃マデリーナだった。
「同じお飾りの妻と呼ばれても彼女とは意味が全く違うわね」
いつになく感傷的王妃は、自傷気味な笑みを浮かべながら国王を迎える準備をした。
国王が第二王子を身籠る前に、数える程しか通っていないこの部屋を、再び訪れなければならない理由はただ一つ。
『王太子廃嫡阻止』
ただそれだけなのだろう。
どこまで、私を傷つければ気が済むのかしら。いつまでも甘い事を。こんな事になれば命を守るためには、王位継承権を放棄させ、一代限りの公爵位を与えることしかできない事も分かっておいでのはずなのに…
そんなにあの従妹ジュリアを愛しているのだろうか?
王妃の心には嫉妬という気持ちはない。そもそも彼女は隣国との良好な関係の為に、国王に嫁したのだから。先王の時に果たせなかった約束を守る為の婚姻。
隣国からの同盟の条件は、王女を王妃に据え、そして王女と国王の子供を即位させる事だった。
しかし、諸事情から当時は叶えられなかった条件を次代で叶えるという約束なのだから。
例えそこに男女の愛がなくても当たり前、夫婦としての信頼と義務だけの良好な関係があればいいのだが、国王は義務以外の物を与えてはくれなかった。
必要最低限の扱いしかしなかったのだ。しかし、彼女は公女といっても他国の王女の娘であり、王位継承権を持っていた王弟の娘でもあった。当然、同じ従妹でもジュリアよりも地位が高い。宮人達は建前と本音を上手く使い分けていた。
国王の命でお飾りの王妃ジュリアを立てながら、真の王妃マデリーナに仕えていた。ジュリアの言葉よりマデリーナの言葉の方が千金の価値がある事を知っていた。だから、マデリーナを虐げる者はいなかった。
こうしてマデリーナは側妃時代から氷の様な王宮で平穏に暮らせたのだ。逆にジュリアは死ぬまで、不平不満を持ちながら周りに八つ当たりして生きた。
唯一の頼みの綱は国王の愛だけ、そんな不確かなものに縋るしかなかったジュリアの人生は果たして幸せと言えるのだろうか?
王妃という地位でなければ、夫から愛されて幸せだったのかも知れないが、誰にも真に仕えてもらう事のなかった憐れなお飾りの王妃ジュリア。
人形の様に、公務で国民に笑顔で手を振り続けた彼女。全ての原因は国王の盲目的な愛ゆえ。
もし仮に、彼女が身を引いていればマデリーナとは立場が逆転し、愛し合いながら引き裂かれた【悲劇の公女】として、同情や関心を得られただろう。そして、マデリーナは二人の仲を引き裂いた【悪女】として、中傷や侮蔑の対象になったかも知れないが現実はそうならなかった。
マデリーナは初夜の時に国王に告げられた言葉を思い出す
---そなたを愛することは永遠にできない。私にはジュリアだけだ。催淫剤を使ってでもそなたと閨を共にするが、王子が生まれれば二度と床を共にすることはない。
そんな男を誰が愛するか。馬鹿者が!!
これがマデリーナの本音だった。
「陛下が王妃様にお会いしたいそうです」
「陛下が?こんな夜更けに先触れもなく?」
訝しんだ表情を浮かべながら、「ふう」っと溜息を洩らしながら
「仕方がありませんね。お通しして」
渋々、侍女も王妃の命に従った。この王妃のいる宮は側妃時代からの住まいで、王妃になっても本当の王妃として扱われたことのない不遇な人生を送ってきた。王妃にとって国王は夫ではなくこの国の仕えるべき主でしかない。
夫婦として情を交わした事のない『お飾りの妻』それが王妃マデリーナだった。
「同じお飾りの妻と呼ばれても彼女とは意味が全く違うわね」
いつになく感傷的王妃は、自傷気味な笑みを浮かべながら国王を迎える準備をした。
国王が第二王子を身籠る前に、数える程しか通っていないこの部屋を、再び訪れなければならない理由はただ一つ。
『王太子廃嫡阻止』
ただそれだけなのだろう。
どこまで、私を傷つければ気が済むのかしら。いつまでも甘い事を。こんな事になれば命を守るためには、王位継承権を放棄させ、一代限りの公爵位を与えることしかできない事も分かっておいでのはずなのに…
そんなにあの従妹ジュリアを愛しているのだろうか?
王妃の心には嫉妬という気持ちはない。そもそも彼女は隣国との良好な関係の為に、国王に嫁したのだから。先王の時に果たせなかった約束を守る為の婚姻。
隣国からの同盟の条件は、王女を王妃に据え、そして王女と国王の子供を即位させる事だった。
しかし、諸事情から当時は叶えられなかった条件を次代で叶えるという約束なのだから。
例えそこに男女の愛がなくても当たり前、夫婦としての信頼と義務だけの良好な関係があればいいのだが、国王は義務以外の物を与えてはくれなかった。
必要最低限の扱いしかしなかったのだ。しかし、彼女は公女といっても他国の王女の娘であり、王位継承権を持っていた王弟の娘でもあった。当然、同じ従妹でもジュリアよりも地位が高い。宮人達は建前と本音を上手く使い分けていた。
国王の命でお飾りの王妃ジュリアを立てながら、真の王妃マデリーナに仕えていた。ジュリアの言葉よりマデリーナの言葉の方が千金の価値がある事を知っていた。だから、マデリーナを虐げる者はいなかった。
こうしてマデリーナは側妃時代から氷の様な王宮で平穏に暮らせたのだ。逆にジュリアは死ぬまで、不平不満を持ちながら周りに八つ当たりして生きた。
唯一の頼みの綱は国王の愛だけ、そんな不確かなものに縋るしかなかったジュリアの人生は果たして幸せと言えるのだろうか?
王妃という地位でなければ、夫から愛されて幸せだったのかも知れないが、誰にも真に仕えてもらう事のなかった憐れなお飾りの王妃ジュリア。
人形の様に、公務で国民に笑顔で手を振り続けた彼女。全ての原因は国王の盲目的な愛ゆえ。
もし仮に、彼女が身を引いていればマデリーナとは立場が逆転し、愛し合いながら引き裂かれた【悲劇の公女】として、同情や関心を得られただろう。そして、マデリーナは二人の仲を引き裂いた【悪女】として、中傷や侮蔑の対象になったかも知れないが現実はそうならなかった。
マデリーナは初夜の時に国王に告げられた言葉を思い出す
---そなたを愛することは永遠にできない。私にはジュリアだけだ。催淫剤を使ってでもそなたと閨を共にするが、王子が生まれれば二度と床を共にすることはない。
そんな男を誰が愛するか。馬鹿者が!!
これがマデリーナの本音だった。
18
あなたにおすすめの小説
婚約者の幼馴染って、つまりは赤の他人でしょう?そんなにその人が大切なら、自分のお金で養えよ。貴方との婚約、破棄してあげるから、他
猿喰 森繁
恋愛
完結した短編まとめました。
大体1万文字以内なので、空いた時間に気楽に読んでもらえると嬉しいです。
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
冷徹公爵の誤解された花嫁
柴田はつみ
恋愛
片思いしていた冷徹公爵から求婚された令嬢。幸せの絶頂にあった彼女を打ち砕いたのは、舞踏会で耳にした「地味女…」という言葉だった。望まれぬ花嫁としての結婚に、彼女は一年だけ妻を務めた後、離縁する決意を固める。
冷たくも美しい公爵。誤解とすれ違いを繰り返す日々の中、令嬢は揺れる心を抑え込もうとするが――。
一年後、彼女が選ぶのは別れか、それとも永遠の契約か。
偽りの愛の終焉〜サレ妻アイナの冷徹な断罪〜
紅葉山参
恋愛
貧しいけれど、愛と笑顔に満ちた生活。それが、私(アイナ)が夫と築き上げた全てだと思っていた。築40年のボロアパートの一室。安いスーパーの食材。それでも、あの人の「愛してる」の言葉一つで、アイナは満たされていた。
しかし、些細な変化が、穏やかな日々にヒビを入れる。
私の配偶者の帰宅時間が遅くなった。仕事のメールだと誤魔化す、頻繁に確認されるスマートフォン。その違和感の正体が、アイナのすぐそばにいた。
近所に住むシンママのユリエ。彼女の愛らしい笑顔の裏に、私の全てを奪う魔女の顔が隠されていた。夫とユリエの、不貞の証拠を握ったアイナの心は、凍てつく怒りに支配される。
泣き崩れるだけの弱々しい妻は、もういない。
私は、彼と彼女が築いた「偽りの愛」を、社会的な地獄へと突き落とす、冷徹な復讐を誓う。一歩ずつ、緻密に、二人からすべてを奪い尽くす、断罪の物語。
お飾り妻は天井裏から覗いています。
七辻ゆゆ
恋愛
サヘルはお飾りの妻で、夫とは式で顔を合わせたきり。
何もさせてもらえず、退屈な彼女の趣味は、天井裏から夫と愛人の様子を覗くこと。そのうち、彼らの小説を書いてみようと思い立って……?
[完結]離婚したいって泣くくらいなら、結婚する前に言ってくれ!
h.h
恋愛
「離婚させてくれぇ」「泣くな!」結婚してすぐにビルドは「離婚して」とフィーナに泣きついてきた。2人が生まれる前の母親同士の約束により結婚したけれど、好きな人ができたから別れたいって、それなら結婚する前に言え! あまりに情けなく自分勝手なビルドの姿に、とうとう堪忍袋の尾が切れた。「慰謝料を要求します」「それは困る!」「困るじゃねー!」
【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。
五月ふう
恋愛
リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。
「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」
今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。
「そう……。」
マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。
明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。
リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。
「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」
ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。
「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」
「ちっ……」
ポールは顔をしかめて舌打ちをした。
「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」
ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。
だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。
二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。
「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる