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おかしな夫婦関係
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国王は王妃から了承を得て部屋に入り、公務以外の王妃マデリーナの姿を見て驚いた。
王妃は急な来訪なので、寝間着姿に淡い金色の髪を緩めの三つ編みで結っており、もう40半ばだというのに肌は20代と言われても分からない程、整えられていた。
部屋は簡素で落ち着きがあり、女性としては華やかさに欠ける様な実務的なものしか置いていず、絵画や花が無ければ王子が使うような部屋だった。
昔から余分な物を部屋に置かない主義のマデリーナの性格が滲み出ている。
「陛下、こんな夜更けに私ごときに一体何の用なのです?」
「王妃、今まですまない。この通り謝ろう。だから、余の頼みを聞いてくれないか?」
昔は威圧的で、マデリーナを見下していた国王が今は真摯に頭を下げている。
しかし、それとこれは別問題。元々マデリーナの産んだ王子が王太子になるはずの約定を破ったのは他ならぬ国王本人。
第一王子が生まれた時に臣下の諫言を受け入れて、生まれた子をマデリーナに預けていたならこんな事態は免れたのだがもう過去はどんなに悔やんでも覆らない。
本日、愚かなキュピレー家はアレクセイに【白い結婚】の呪いをした神官を口封じしたと連絡が入ったのだ。
第一王子レオナードの後見人がキュピレー家だという事は貴族中誰でも知っている。そのキュピレー家が『王族派』筆頭のギャロット家と『中立派』で宰相のオルフェ家を陥れたのだから、当然旗頭にされている第一王子は王太子の座から退き、廃嫡。これが唯一王子を生かせる最後の手段なのだ。
「申し上げておきますが、第一王子の廃嫡は確実です。これは覆りません。二年の後に第二王子が国王の座に付くことも議会で承認されるでしょう。『王族派』『中立派』に睨まれて、生き残れるほど政治の世界は甘くないことは他ならぬ陛下がよくご存じのはずです。今更、私の実家を頼ろうとしても無駄です。私の役目は新しい王太子が即位するまでの繋ぎなのです。王太子が即位すれば私は離宮に籠って、引退します」
「分かっている、理解もしている。しかし、一代限りの公爵などあの子が憐れだと思わないのか?」
「自業自得です。愚かにもキュピレー家から送り込まれた乳母に心酔して、他の者の諫言を受け入れなかった。幼い頃ならまだしも成人してからもキュピレー家の嫡男を傍において寵愛した報いです。それも陛下の盲目的な偏愛のせいだと思われませんか?ご自分で初恋の忘れ形見を断罪しなければならなくなったのも、元を糺せば陛下が悪いのです。ジュリアが亡くなった時にあの子を私の養子にしていれば、こうはならなかったでしょう」
「あ、あの時は…」
「ああ、あの時もキュピレー家に入れ知恵されたのでしたね。私が継子虐めをすると。もしかしたら毒でも盛って殺すかもしれないと。そう言われたのですか?陛下」
「そ、そのようなことはない。ただ、まだ子を持ていないそなたには子育てなど無理だと思ったのだ」
「でも第二王子を育てましたが。何か問題でもあったでしょうか?陛下」
「いや、それは、あれだ。確かに第二王子は非の打ちどころがない。しかし、人間味にかけているから……」
マデリーナは国王のこの一言でプツンと切れた音が聞こえた。
「へぇ、またそのような世迷事を仰られるのですね。昔から私によく仰いましたね。『お前は人形の様な面白味がない女』だとか『仮面を張り付けたような笑みを見せるな』とかねぇ」
低く唸るような声に、国王は及び腰になっていた。最早王妃に何か言えば言う程、墓穴を張るのは明白で、国王はこの殺気走った雰囲気に耐えられず、すごすごと王妃の部屋を後にした。
国王と王妃は従兄妹同士、幼馴染でもある二人は子供の時から因縁がある。キレた王妃には適わない事も分かっているのだ。
王妃は急な来訪なので、寝間着姿に淡い金色の髪を緩めの三つ編みで結っており、もう40半ばだというのに肌は20代と言われても分からない程、整えられていた。
部屋は簡素で落ち着きがあり、女性としては華やかさに欠ける様な実務的なものしか置いていず、絵画や花が無ければ王子が使うような部屋だった。
昔から余分な物を部屋に置かない主義のマデリーナの性格が滲み出ている。
「陛下、こんな夜更けに私ごときに一体何の用なのです?」
「王妃、今まですまない。この通り謝ろう。だから、余の頼みを聞いてくれないか?」
昔は威圧的で、マデリーナを見下していた国王が今は真摯に頭を下げている。
しかし、それとこれは別問題。元々マデリーナの産んだ王子が王太子になるはずの約定を破ったのは他ならぬ国王本人。
第一王子が生まれた時に臣下の諫言を受け入れて、生まれた子をマデリーナに預けていたならこんな事態は免れたのだがもう過去はどんなに悔やんでも覆らない。
本日、愚かなキュピレー家はアレクセイに【白い結婚】の呪いをした神官を口封じしたと連絡が入ったのだ。
第一王子レオナードの後見人がキュピレー家だという事は貴族中誰でも知っている。そのキュピレー家が『王族派』筆頭のギャロット家と『中立派』で宰相のオルフェ家を陥れたのだから、当然旗頭にされている第一王子は王太子の座から退き、廃嫡。これが唯一王子を生かせる最後の手段なのだ。
「申し上げておきますが、第一王子の廃嫡は確実です。これは覆りません。二年の後に第二王子が国王の座に付くことも議会で承認されるでしょう。『王族派』『中立派』に睨まれて、生き残れるほど政治の世界は甘くないことは他ならぬ陛下がよくご存じのはずです。今更、私の実家を頼ろうとしても無駄です。私の役目は新しい王太子が即位するまでの繋ぎなのです。王太子が即位すれば私は離宮に籠って、引退します」
「分かっている、理解もしている。しかし、一代限りの公爵などあの子が憐れだと思わないのか?」
「自業自得です。愚かにもキュピレー家から送り込まれた乳母に心酔して、他の者の諫言を受け入れなかった。幼い頃ならまだしも成人してからもキュピレー家の嫡男を傍において寵愛した報いです。それも陛下の盲目的な偏愛のせいだと思われませんか?ご自分で初恋の忘れ形見を断罪しなければならなくなったのも、元を糺せば陛下が悪いのです。ジュリアが亡くなった時にあの子を私の養子にしていれば、こうはならなかったでしょう」
「あ、あの時は…」
「ああ、あの時もキュピレー家に入れ知恵されたのでしたね。私が継子虐めをすると。もしかしたら毒でも盛って殺すかもしれないと。そう言われたのですか?陛下」
「そ、そのようなことはない。ただ、まだ子を持ていないそなたには子育てなど無理だと思ったのだ」
「でも第二王子を育てましたが。何か問題でもあったでしょうか?陛下」
「いや、それは、あれだ。確かに第二王子は非の打ちどころがない。しかし、人間味にかけているから……」
マデリーナは国王のこの一言でプツンと切れた音が聞こえた。
「へぇ、またそのような世迷事を仰られるのですね。昔から私によく仰いましたね。『お前は人形の様な面白味がない女』だとか『仮面を張り付けたような笑みを見せるな』とかねぇ」
低く唸るような声に、国王は及び腰になっていた。最早王妃に何か言えば言う程、墓穴を張るのは明白で、国王はこの殺気走った雰囲気に耐えられず、すごすごと王妃の部屋を後にした。
国王と王妃は従兄妹同士、幼馴染でもある二人は子供の時から因縁がある。キレた王妃には適わない事も分かっているのだ。
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