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14.愛を与えられる者と愛を乞う者③
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お茶会の日は、熱い夏が過ぎて少し肌寒くなってきた頃に行われた。
快晴で心地良い風が吹き、中庭のガゼボでお茶をするのには丁度良い日和となった。
今日のお茶会は王妃グレイシスが挨拶をすると、後は自由に歓談ができる略式となっている為、レスティーナ達、年少組も固まってそれぞれの近況報告をしていた。
エルリアーナは、レスティーナを引っ張っていき、今までの経緯を詳しく話して欲しいと強請った。
「ふーん、成程ね。噂では聞いていたけれど、あなたの妹の頭にはスポンジが詰まっているのね」
「スポンジってあの顔を洗う時に使う…?」
エルリアーナの言葉に一緒に参加していたユーミリアも想像していた様で、彼女は盛大に吹き出した。
「どうして笑うの?そんなにおかしな事かしら」
「だって、あの妹のミニチュア版で顔を洗っている所を想像したのよ…ああお腹が痛い…」
マリアンヌで顔を洗う…?想像しただけで気持ちが悪い…。どうやらエルリアーナも同じことを考えていた様で、自分の身震いしながら二の腕を擦り、渋い表情をしていた。
その後は、3人で今流行の観劇や本、雑貨などを話題にすると話に花が咲いたのだ。主にレスティーナは聞き役にまわっている。
それは、彼女達のように公爵家以外の所に行ったことがないからだ。唯一許されたのが『ローズ・ザ・エデン』だけ……。
そう考えれば如何にレスティーナには自由がない生活を強いられている事だと勘違いされそうだが、元々そんなに活発な令嬢でもなかったレスティーナは屋敷の中でも不自由を感じた事もなかった。
しかし、レスティーナも11才ともなると、屋敷外の事も知りたいと思っている事は確かだ。
以前、ロザンナ・バーレスク侯爵令嬢に愛読書である「野獣騎士と厭われ令嬢」という架空恋愛小説を借りた時は、レスティーナも密かに「私もこんな恋がしたい」等と恋や愛というものに憧れを抱いていたが、実際に婚約者が出来ると、その憧れは無残にも朽ち果ててしまった。
クロイツェルに幻滅したのではなく、イレーネ達からの教育を受けていく内に、貴族令嬢として生きる自分には恋愛など在り得ないと悟ったからなのだ。
ほとんどの貴族は家の利益の為に、良く知らない相手と縁組を持つことが殆どなのだ。そう考えれば今、自分が置かれている状況は、破格の待遇だと思えてくる。
きっと自分が女神の代弁者だからこその計らいなのだと、改めて国王夫妻に感謝した。
同時に好きでもない相手と婚約させられたクロイツェルを気の毒にも思ったのだ。
そして、話題は秋に行われる『豊穣祭』になった。
「えっ…行った事がないの?ほんとうに?今まで一度も…?」
レスティーナが王都の街の祭りに参加した事がないと言うと二人の友人は顔を会わせて驚いている。
そんなに変な事なのかしら?
「あ…のう、そんなにおかしな事なの?」
「あ…うん…、だって普通は親に連れて行ってもらったり、親戚らと一緒に行ったりしているから…」
「そうなのね?私は全く気にしていなかったわ。その期間は神殿に籠っているから…」
「えええっ、だ…だって一週間もあるのにずっと神殿にいるの?一歩も外に出ないで…そう言えば王家主催の夜会や懇親会にも来ていなかったわよね。ずっと病状で療養しているって聞いたけれど」
「私が病弱なんて在り得ないわ。だって私も女神の代弁者だから少しばかり治癒能力を持っているもの。風邪を引いた事もないわ」
「………」
レスティーナの言葉に黙ってしまった。
なんだか騒がしいので様子を見に来たクロイツェルは事のあらましを従兄妹であるエルリアーナから来て愕然となった。
違う…マリアンヌの言っている事と……。
マリアンヌの言うところの姉は病弱で、甘やかされて育った為癇癪が酷く、よく理不尽な八つ当たりをされると言っていた。だが、王城で暮らしているレスティーナは侍女やメイドにも優しくにこやかに対応しているし、常に「ありがとう」と言葉にしているのだ。
全く違うし、まず確かに女神の代弁者である彼女が病気になる事はないだろう。なっても直ぐに女神が回復させる。そんな当たり前の事に今更気付く自分に腹が立つが、ならマリアンヌはそんな思い込みをするようになったのか。不意にアマンダの姿が頭に浮かんだ。
王家主催の懇親会や夜会の招待状は公爵家に必ず届いている筈だ。それをレスティーナが知らないはずはない。でも現に彼女は知らないと言っている。
しかも何故、祭にも参加せずに神殿に籠っているのか分からない。神官達はレスティーナに何も言わなかったのだろうか?
様々な疑問がクロイツェルの頭の中を駆け巡っている。
レスティーナの方も「そう言えば毎年、神官様からお出かけにならないのですか?と聞かれたけれど、母から神殿から出ないで祈りを奉げる事が貴女の務めですと言われたのでそうしますと言ったら、神官様はとても困った顔をされていたわね」等と言い出した。
つまり、レスティーナは母親に言いつけられた事を守っていたのだ。それが偽りなのだと知らずに……。
傍で聞いていた侍従と侍女が王妃グレイシスにその事を告げに行く。
その時になって、
「もしかして…私…お母様に騙されていたのかしら」
「「おそ──いっ!!!」」
エルリアーナとユーミリアの大きな声は中庭に響いたのだった。
快晴で心地良い風が吹き、中庭のガゼボでお茶をするのには丁度良い日和となった。
今日のお茶会は王妃グレイシスが挨拶をすると、後は自由に歓談ができる略式となっている為、レスティーナ達、年少組も固まってそれぞれの近況報告をしていた。
エルリアーナは、レスティーナを引っ張っていき、今までの経緯を詳しく話して欲しいと強請った。
「ふーん、成程ね。噂では聞いていたけれど、あなたの妹の頭にはスポンジが詰まっているのね」
「スポンジってあの顔を洗う時に使う…?」
エルリアーナの言葉に一緒に参加していたユーミリアも想像していた様で、彼女は盛大に吹き出した。
「どうして笑うの?そんなにおかしな事かしら」
「だって、あの妹のミニチュア版で顔を洗っている所を想像したのよ…ああお腹が痛い…」
マリアンヌで顔を洗う…?想像しただけで気持ちが悪い…。どうやらエルリアーナも同じことを考えていた様で、自分の身震いしながら二の腕を擦り、渋い表情をしていた。
その後は、3人で今流行の観劇や本、雑貨などを話題にすると話に花が咲いたのだ。主にレスティーナは聞き役にまわっている。
それは、彼女達のように公爵家以外の所に行ったことがないからだ。唯一許されたのが『ローズ・ザ・エデン』だけ……。
そう考えれば如何にレスティーナには自由がない生活を強いられている事だと勘違いされそうだが、元々そんなに活発な令嬢でもなかったレスティーナは屋敷の中でも不自由を感じた事もなかった。
しかし、レスティーナも11才ともなると、屋敷外の事も知りたいと思っている事は確かだ。
以前、ロザンナ・バーレスク侯爵令嬢に愛読書である「野獣騎士と厭われ令嬢」という架空恋愛小説を借りた時は、レスティーナも密かに「私もこんな恋がしたい」等と恋や愛というものに憧れを抱いていたが、実際に婚約者が出来ると、その憧れは無残にも朽ち果ててしまった。
クロイツェルに幻滅したのではなく、イレーネ達からの教育を受けていく内に、貴族令嬢として生きる自分には恋愛など在り得ないと悟ったからなのだ。
ほとんどの貴族は家の利益の為に、良く知らない相手と縁組を持つことが殆どなのだ。そう考えれば今、自分が置かれている状況は、破格の待遇だと思えてくる。
きっと自分が女神の代弁者だからこその計らいなのだと、改めて国王夫妻に感謝した。
同時に好きでもない相手と婚約させられたクロイツェルを気の毒にも思ったのだ。
そして、話題は秋に行われる『豊穣祭』になった。
「えっ…行った事がないの?ほんとうに?今まで一度も…?」
レスティーナが王都の街の祭りに参加した事がないと言うと二人の友人は顔を会わせて驚いている。
そんなに変な事なのかしら?
「あ…のう、そんなにおかしな事なの?」
「あ…うん…、だって普通は親に連れて行ってもらったり、親戚らと一緒に行ったりしているから…」
「そうなのね?私は全く気にしていなかったわ。その期間は神殿に籠っているから…」
「えええっ、だ…だって一週間もあるのにずっと神殿にいるの?一歩も外に出ないで…そう言えば王家主催の夜会や懇親会にも来ていなかったわよね。ずっと病状で療養しているって聞いたけれど」
「私が病弱なんて在り得ないわ。だって私も女神の代弁者だから少しばかり治癒能力を持っているもの。風邪を引いた事もないわ」
「………」
レスティーナの言葉に黙ってしまった。
なんだか騒がしいので様子を見に来たクロイツェルは事のあらましを従兄妹であるエルリアーナから来て愕然となった。
違う…マリアンヌの言っている事と……。
マリアンヌの言うところの姉は病弱で、甘やかされて育った為癇癪が酷く、よく理不尽な八つ当たりをされると言っていた。だが、王城で暮らしているレスティーナは侍女やメイドにも優しくにこやかに対応しているし、常に「ありがとう」と言葉にしているのだ。
全く違うし、まず確かに女神の代弁者である彼女が病気になる事はないだろう。なっても直ぐに女神が回復させる。そんな当たり前の事に今更気付く自分に腹が立つが、ならマリアンヌはそんな思い込みをするようになったのか。不意にアマンダの姿が頭に浮かんだ。
王家主催の懇親会や夜会の招待状は公爵家に必ず届いている筈だ。それをレスティーナが知らないはずはない。でも現に彼女は知らないと言っている。
しかも何故、祭にも参加せずに神殿に籠っているのか分からない。神官達はレスティーナに何も言わなかったのだろうか?
様々な疑問がクロイツェルの頭の中を駆け巡っている。
レスティーナの方も「そう言えば毎年、神官様からお出かけにならないのですか?と聞かれたけれど、母から神殿から出ないで祈りを奉げる事が貴女の務めですと言われたのでそうしますと言ったら、神官様はとても困った顔をされていたわね」等と言い出した。
つまり、レスティーナは母親に言いつけられた事を守っていたのだ。それが偽りなのだと知らずに……。
傍で聞いていた侍従と侍女が王妃グレイシスにその事を告げに行く。
その時になって、
「もしかして…私…お母様に騙されていたのかしら」
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エルリアーナとユーミリアの大きな声は中庭に響いたのだった。
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