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24.カインデルの願い
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国王に呼び出されてカインデルは、初めて父エドウィンと対峙した。
王城の謁見の間には、神官長と書記官長そしてアーロンがいる。
11才のカインデルは、巻き戻し前の事を聞かれるのだろうと予測はしていた。
初めて間近にみる父に何処か自分と似ているところを探している自分に気付いて苦笑した。
生まれて間もない我が子を他人に預ける父を未だ父と慕っている。いや今もこの場で認めてもらいたいと考えている自分に対して愚かだと思ったのだ。
もう、既に11才という年齢で、周りの愛情等期待していなかったはずなのに…まだそれを望む自分に腹も立った。
心の何処かで、誰にも愛されないのなら、せめてたった一人でいいから自分を望んでくれる相手が欲しいと拙に願っている。
そしてその相手を生涯かけて愛しぬく自身もあった。
その相手は意外と近くにいた。
それがレスティーナなのだ。
カインデルにとっては、レスティーナ以外の者など目に入らない程、長く切なく只管に想い続けていた。だから、カインデルはふと、欲を出してみた。
父王から時を戻した事に対する褒賞が与えられるなら、レスティーナを妻にと……。自分も腐っても王子だ。王族との結びつきが絶対なら自分にも権利があるはずだ。
少なくともあの愚弟クロイツェル等より、はるかに相応しいのではないか。
心の中で、陽の当たる場所に常に座している弟達を羨ましく思わなかったと言えば嘘になる。
カインデルの心の中を見透かす様に国王が訊ねる。
『お前は自分の命を捧げてまで、時を戻した。一体何が望みなのだ?』
『…レスティーナ……彼女と共に生きる権利が欲しい……』
『今のお前は王族として認められてもいないのだ。それをどうやって皆を納得させるつもりなのだ』
『なら、どうすれば俺を認めてくれるのです?レスティーナを大切に愛し守れるのは俺しかいないのに…』
『アーロンもいる。キャッスル公爵家のクロードも…それに……』
『無駄です。父上。他のどなたもレスティーナの番にはなれない。彼女は最後に自分で選んだのですから、カインデル兄上を……。二人の心臓は運命の糸で結ばれています』
その言葉に周りからどよめきが起こった。誰よりカインデル自身が驚愕し、次第にその肌は朱色に染まって行った。口元だけを綻ばせて……。
国王にカインデルは、石版をセガールの従兄弟ロダンから聞いたと話した。
そこで、過去にも石版を使って時を戻した事があることを、日記に記して残してあるという事実も伝えた。
アーロンはカインデルがイフェルの加護を持ち『神眼』の持ち主だとは知らなかった。
理由を知り、何故王宮から出され、秘匿した王子として過ごしているのかも同時に理解したのだ。
外に出すには危険すぎる力だからだ。
『転移についてはイフェルが手助けしてくれたのでしょう。クレマンテの石版に触れられたのは女神の意志だったのではないでしょうか?』
傍で話を聞いていた神官長が口を挟んだ。
『クレマンテのか…』
『ええ、女神の代弁者を助けるという思いに応えて下さったのではないですか。でなければ、洗礼の時と同じように弾かれていたでしょう』
『洗礼の時…』
カインデルの疑問に神官長が答えた。
『はい、貴方様がお生まれになった時、王城に呼ばれて洗礼の義を始めようとしたのですが、弾かれたのです。貴方様は最初からイフェルの加護を持つ者。クレマンテは貴方様を拒絶なさいました。ですので、王城から出されることになったのです。王子が洗礼も受けられない異端な存在だと知られれば、貴方様の未来に影を差すことになるからです。これは陛下にとって苦渋の決断だったのでしょう』
『なら、公爵家に預けたのは…』
『サトラー公爵家の祖先はセガールの出身だ。時折黒髪の子供も生まれている。だが、その眼だけは誤魔化しが利かない。だから眼帯を付けさせ、病弱だと偽り、極力人前に姿を見せさせない様に余が公爵に頼んだのだ』
『ですが、養母は疑っていましたよ。養父が他の女に産ませた子供だと…』
『あれの性根は変わらぬ。あの女もグレイシアの飲ませた薬で子は成せない。意味は分かるな』
エドウィンの言っている事をカインデルは理解できた。
前王妃を貶めて、苦しめた罰をグレイシス自ら与えたのだ。毎回お茶会に招き、その飲み物に不妊薬を少しずつ混ぜて飲ませた。その為、アマンダは子供が出来ない身体になった。
そのアマンダの呟きにレスティーナが反応し、願いを叶えてマリアンヌが生まれている。
今、この時にも元凶となる母子は呑気に偽りの親子ごっこを楽しんでいるのだ。
『カインデル、アーロンそなたらに話さなければならない事がある。書記官長あれを読ませてやってくれ』
国王の指示で、カインデルとアーロンは書記官長から古い記述を見せられた。
それは前回、時間を撒き戻した時のものだった。
書かれた内容を見て驚く。
まさにそれは今起こっている出来事と酷似していたからだった。
二人はお互いの顔を見合わせて静かに頷いた。
突如、カインデルの右目が光ったと思ったら、皆の頭の中に当時の状況が鮮明な映像の様に見えていた。
──全知全能の神イフェルの眼…『神眼』の過去を見る力だった。
王城の謁見の間には、神官長と書記官長そしてアーロンがいる。
11才のカインデルは、巻き戻し前の事を聞かれるのだろうと予測はしていた。
初めて間近にみる父に何処か自分と似ているところを探している自分に気付いて苦笑した。
生まれて間もない我が子を他人に預ける父を未だ父と慕っている。いや今もこの場で認めてもらいたいと考えている自分に対して愚かだと思ったのだ。
もう、既に11才という年齢で、周りの愛情等期待していなかったはずなのに…まだそれを望む自分に腹も立った。
心の何処かで、誰にも愛されないのなら、せめてたった一人でいいから自分を望んでくれる相手が欲しいと拙に願っている。
そしてその相手を生涯かけて愛しぬく自身もあった。
その相手は意外と近くにいた。
それがレスティーナなのだ。
カインデルにとっては、レスティーナ以外の者など目に入らない程、長く切なく只管に想い続けていた。だから、カインデルはふと、欲を出してみた。
父王から時を戻した事に対する褒賞が与えられるなら、レスティーナを妻にと……。自分も腐っても王子だ。王族との結びつきが絶対なら自分にも権利があるはずだ。
少なくともあの愚弟クロイツェル等より、はるかに相応しいのではないか。
心の中で、陽の当たる場所に常に座している弟達を羨ましく思わなかったと言えば嘘になる。
カインデルの心の中を見透かす様に国王が訊ねる。
『お前は自分の命を捧げてまで、時を戻した。一体何が望みなのだ?』
『…レスティーナ……彼女と共に生きる権利が欲しい……』
『今のお前は王族として認められてもいないのだ。それをどうやって皆を納得させるつもりなのだ』
『なら、どうすれば俺を認めてくれるのです?レスティーナを大切に愛し守れるのは俺しかいないのに…』
『アーロンもいる。キャッスル公爵家のクロードも…それに……』
『無駄です。父上。他のどなたもレスティーナの番にはなれない。彼女は最後に自分で選んだのですから、カインデル兄上を……。二人の心臓は運命の糸で結ばれています』
その言葉に周りからどよめきが起こった。誰よりカインデル自身が驚愕し、次第にその肌は朱色に染まって行った。口元だけを綻ばせて……。
国王にカインデルは、石版をセガールの従兄弟ロダンから聞いたと話した。
そこで、過去にも石版を使って時を戻した事があることを、日記に記して残してあるという事実も伝えた。
アーロンはカインデルがイフェルの加護を持ち『神眼』の持ち主だとは知らなかった。
理由を知り、何故王宮から出され、秘匿した王子として過ごしているのかも同時に理解したのだ。
外に出すには危険すぎる力だからだ。
『転移についてはイフェルが手助けしてくれたのでしょう。クレマンテの石版に触れられたのは女神の意志だったのではないでしょうか?』
傍で話を聞いていた神官長が口を挟んだ。
『クレマンテのか…』
『ええ、女神の代弁者を助けるという思いに応えて下さったのではないですか。でなければ、洗礼の時と同じように弾かれていたでしょう』
『洗礼の時…』
カインデルの疑問に神官長が答えた。
『はい、貴方様がお生まれになった時、王城に呼ばれて洗礼の義を始めようとしたのですが、弾かれたのです。貴方様は最初からイフェルの加護を持つ者。クレマンテは貴方様を拒絶なさいました。ですので、王城から出されることになったのです。王子が洗礼も受けられない異端な存在だと知られれば、貴方様の未来に影を差すことになるからです。これは陛下にとって苦渋の決断だったのでしょう』
『なら、公爵家に預けたのは…』
『サトラー公爵家の祖先はセガールの出身だ。時折黒髪の子供も生まれている。だが、その眼だけは誤魔化しが利かない。だから眼帯を付けさせ、病弱だと偽り、極力人前に姿を見せさせない様に余が公爵に頼んだのだ』
『ですが、養母は疑っていましたよ。養父が他の女に産ませた子供だと…』
『あれの性根は変わらぬ。あの女もグレイシアの飲ませた薬で子は成せない。意味は分かるな』
エドウィンの言っている事をカインデルは理解できた。
前王妃を貶めて、苦しめた罰をグレイシス自ら与えたのだ。毎回お茶会に招き、その飲み物に不妊薬を少しずつ混ぜて飲ませた。その為、アマンダは子供が出来ない身体になった。
そのアマンダの呟きにレスティーナが反応し、願いを叶えてマリアンヌが生まれている。
今、この時にも元凶となる母子は呑気に偽りの親子ごっこを楽しんでいるのだ。
『カインデル、アーロンそなたらに話さなければならない事がある。書記官長あれを読ませてやってくれ』
国王の指示で、カインデルとアーロンは書記官長から古い記述を見せられた。
それは前回、時間を撒き戻した時のものだった。
書かれた内容を見て驚く。
まさにそれは今起こっている出来事と酷似していたからだった。
二人はお互いの顔を見合わせて静かに頷いた。
突如、カインデルの右目が光ったと思ったら、皆の頭の中に当時の状況が鮮明な映像の様に見えていた。
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