婚約者は妹をご所望のようです…

春野オカリナ

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25.過去の婚約解消

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 それは100年前の記録だった。

 当時の女神の代弁者は見つからず、それに近しい容姿の者を身代わりに立てていた。

 その娘は平民の孤児院で育ち、彼女が微笑むと花が咲き誇り、田畑に豊穣を願うと作物がたわわに実るという報告があがった。

 神殿はそのことを聞き、祭祀として迎え入れ丁重に扱った。神官の一人が女神からのお告げを受け、彼女の腹から次代の代弁者が生まれると……。

 王家は直ぐに王族の一人侯爵家の次男と婚約させた。

 王子が5人もいたのにもかかわらずだ。

 盲目の老神官は見えない物を見る力を持っており、彼女の左手の薬指から運命の糸が侯爵家の次男と繋がっていると言った。だから彼が選ばれたのだが、それが大きな間違いだったのだ。

 野心家だった侯爵家の次男は、平民の孤児である代弁者が疎ましかった。

 とうとう次男は彼女に冤罪をかけて国外に追放する事を思いついた。

 従兄弟の王子らを巻き込んで……。

 王太子と第5王子だけは最後まで彼女の無実を訴えていたが、彼らが証拠を集めている間に代弁者の彼女は砂漠の地へと追いやられた。

 西の砂漠のドルーマン帝国には若き皇帝が即位したばかりで、年々砂漠化している国の状況を憂いていた。そこに突如現れた不思議な少女の話を聞き、急いで迎えに行き彼女を自分のハーレムに囲ったのだ。

 代弁者である彼女は皇帝に愛され、ドルーマン帝国は緑豊かな国になって行った。

 逆に彼女を捨てたエイダールは砂漠化していったのだ。

 事を重く見た王太子は石版を使って時を戻したのだ。

 しかし、時を戻しても彼女と次男を結びつけている糸は細く繋がっている。

 神殿で『縁切り』の儀式を行なうと女神が鋏の様なもので二人を結びつけていた糸を断ち切った。

 ぶらりと垂れ下がっている糸を今度は第5王子の指に結びつけた。

 二人は国王から大公の地位を与えられた。仲睦まじく暮らし、生涯お互いを慈しんだと記録されていた。

 残念な事は、別の相手と結ばれた二人には子供が出来なかったのだ。

 その後、侯爵家の次男は、切られた糸が黒くなりどんどん膨らみ、絡み付いて窒息死した様な死に方だったと記されていた。

 きっとこれが女神が下した罰…呪いなのだ。


 今起こっている事と変わりがない。

 繋がっている糸を無理やり切ろうとすれば、神罰が下る。そういう事なのだろうか?なら、今もレスティーナの左手の薬指にある糸は……。

 そう考えたのはカインデルだけではなかった。

 神官長もそう考えて国王に提案したのだ。

 『陛下、どうか『縁切り』の儀式の許可を……』

 国王は許可を出したが、儀式の最中にレスティーナが気を失い、糸を断ち切ることが出来なかった。

 そうして、二度目の生でも同じことが繰り返された。

 せめてもの慰めは、最後の瞬間にカインデルの手を取ったレスティーナが救われた事だけなのかもしれない。

 ──彼女は最後には自分の意志でカインデルを選んでいたのだから……。

 今も女神の運命の糸は、レスティーナとクロイツェルを結びつけているままなのだ。

 

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