婚約者は妹をご所望のようです…

春野オカリナ

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26.二度目の終わりが来るときは…

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 レスティーナは、いつもある分岐点で運命が変わる。

 それは11才のあの暴走馬に出くわして体に深い傷を負ってから…。

 二度目もレスティーナは暴走馬に出くわした。その時神殿から連れてきた護衛も彼女を庇って怪我をした。

 その場にいたクロイツェルとマリアンヌは無事だった。

 彼らは一度目と同様に二人で祭りを楽しんでいた。

 しかし、どういう訳かクロイツェルの様子がおかしい。

 一度目と違い何故か怪我をしたレスティーナの見舞いに度々訪れたり、学院に通うになっても彼女を気遣う様子が見て取れた。

 だから、国王も婚約を続行させ暫く様子を見る事にした。

 国王夫妻が安心したのも束の間で、レスティーナの15才の誕生日にそれは起こった。

 デビュタントにエスコートするべきクロイツェルは、レスティーナではなくマリアンヌに自分が贈ったドレスを着せて入場した。

 当然、会場に集まっている招待客らは戸惑いを隠せない。注目されているマリアンヌだけは嬉しそうに頬を薔薇色に染め上げていた。

 逆に隣のクロイツェルは何故か暗い表情をしていた。

 その行為は彼の望んだ結果ではなかった。レスティーナに合わせて作らせたドレスが何故かマリアンヌのサイズに仕立てられている。

 仕方なくクロイツェルは既製品で一番上等な物をレスティーナの身体のサイズに仕立て直したのだ。

 こんなはずではなかった…。どうしてこんな事になったのだろうか?

 どんなに考えてもクロイツェルはその答えに辿り着けない。

 何せ、公爵家に採寸をしにいったお使いは、マリアンヌとレスティーナを間違えた。勿論確認はした。顔を知られていないレスティーナよりも常にクロイツェルの隣に陣取っているマリアンヌの方が知られている。

 だから、念のために訊ねたのだ。

 『クロイツェル王子殿下の婚約者のご令嬢でしょうか?』

 マリアンヌとアマンダは微笑むだけで否定も肯定もしなかった。ただ、嬉しそうにはにかみながら微笑むマリアンヌが婚約者だと勘違いしたのはお使いの者の不手際だった。

 顔に傷を負ったレスティーナは常に仮面をつけ、ベールでその姿を隠していた為に起こった不幸な事故……。

 だからと言って、赦される行いではない。

 この時ばかりはレスティーナも怒りの矛先をマリアンヌに向けて、王城のバルコニーの一角でマリアンヌを睨み付け、言葉にならぬ怒りを喚いたのだ。

 その泣き声か呻き声な様な声で、マリアンヌを睨み付けながら掴みかかろうとした時に、クロイツェルがマリアンヌを庇い、その反動でレスティーナはバルコニーから降りる為の階段から落ちた。

 しかし、地面に落ちる寸前で体がふわりと浮きあがるのを感じると、瞑っていた目を少し開けた。

 そこには、隣国に留学しているカインデルの姿があった。

 何故ここにお兄様が…?

 レスティーナの疑問を読み取ったかのように、

 『ただいま、俺のお姫様。留学は終わったよ。これからの事を陛下と義父上と話さなければならない。一緒においで…』

 そう言って、レスティーナを抱き上げたまま国王に謁見した。

 その場で起きた事は、近衛騎士から国王、王妃に報告され、クロイツェルはその場で謹慎処分となった。

 アマンダとマリアンヌは王族を謀った罪で、戒律の厳しい修道院に送られる事になったのだ。

 カインデルは、国王から言われた課題を見事やり遂げ、その存在を臣下に知らしめた。

 隣国セガールとある約束事をしたのだ。

 自身がセガールに残らずとも、何か返事がある場合は直ぐに連絡が取れる様に一年の半分をセガールで過ごし、半分をエイダールで過ごす。

 そして、子供が産まれば女子をセガールの王家に嫁がせるという事でセガールの国王と話をつけた。

 エドウィンもそれに同意した為、条約は締結された。

 この功績によってカインデルは大公位を与えられ、婚約者にレスティーナを熱望した。

 当然、レスティーナの方は、戸惑った。

 なにせ、血の繋がった兄だと思っていたカインデルがこの国の第一王子で、自分を妻にと望んでくれている。

 『レスティーナは嫌か?』

 その問いに首を横に振り、カインデルの掌の上に「嬉しい」と書いたのだ。

 自分の手をそっとカインデルの手の上に乗せると、カインデルはその手の甲に口付けた。

 『必ず幸せにしてみせる』

 そう言うと、何故かレスティーナの方は困惑した様子で、「一緒に幸せに…」そう掌に書いてきた。

 カインデルは破顔して、「そうだな。一緒に幸せになろう」そう告げた。

 この時は、誰もがこの二人の未来は明るいもので、これで大円満を迎えたのだと思っていた。

 

 18才になったレスティーナは約束通りカインデルの元に嫁いだ。

 二人の結婚式は華やかに行われ、カインデルが花嫁であるレスティーナに口付けた途端、レスティーナから花の様な笑みが浮かんだ。

 『ティーナ、笑えている』

 そうカインデルに言われ、レスティーナも自分が笑えている事に気付いた。

 同時に身体の異変にも気付いたのだ。

 ──身体が軽い様な気がする…。

 顔の突っ張った感覚などが感じられない。

 『わ…私…』

 声が出せた事に更に驚いているレスティーナの仮面をカインデルは取り外した。

 すると仮面の下からは、以前と変わらぬ美しいレスティーナの花の顔が覗いている。

 『私の顔、元に戻っている…傷跡が治っている…』

 嬉しそうに満面の笑顔を見せるレスティーナの頬にカインデルは口付けた。

 すると、レスティーナの心に反応したかの様に、冬間近の季節では考えられない現象が起きたのだ。

 外は、緑が生い茂り、季節問わず花々が咲き乱れている。

 その現象は国中に起こり、西の砂漠の国ドル―マン帝国にまで届いた。女神はかつて愛し子を助けて貰った恩を返したのだ。

   


 レスティーナは遂に癒しの能力を使える様になったのだ。


 その日、国中が祭りの様に賑わっていた。

 だが、誰も知らない所で運命の糸車は再び逆行し始めた。

 愛しい新妻となったレスティーナを腕に抱いてカインデルが深く眠った新婚の初夜の夜、それは起きたのだ。




 目覚めるとカインデルの腕には愛しいレスティーナの姿はなく、公爵家の別棟で目覚めた。

 

 ──誰かが、時を戻した…?


 その答えに辿り着くのにカインデルは半時ほどかかった。

 カインデルの幸せは一瞬で泡沫となって消えたのだった。

 慌ててカインデルは過去に国王から教えられた王城に続く秘密の通路を使って、ある人物の元に向かった。

 それは弟王子アーロンの元に行く為に……。
 
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