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27.三度目……
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カインデルは、王城の裏庭の物置小屋に出た。
そこから地下の薄暗い回廊を通って、初代国王の銅像の裏に出る。そこからアーロンのいる王子宮までは割と近い。
アーロンも自身の異変に気付き、国王の元に先触れを送って会いに行く途中、カインデルと出くわした。
『まさか…お前が…』
『兄上が時間を戻したんじゃあないよね』
『『え…』』
ほぼ二人同時に喋ったのだが、その後冷静になって考えれば、そんな事をする理由は見当たらない。
カインデルは幸せの渦中にいたし、アーロンは1年後にはリーゼロッタと結婚するはずだった。
そんな二人がもう一度時間を戻すことなどあり得なかった。しかし、実際に時間を戻した人間がいる。
国王が戻していないのなら、考えられる人間は一人だけ……。
『そう言えば、今日クロイツェル兄上…右手首に包帯を巻いていたんだ。きっとあの下には巻き戻した時に浮かぶ印があるんだよ』
そう言ってアーロンは自分の手首を見たら、手首の数字は薄くなっている。
『もしかしたら、誰かが上書きするように時間を戻したら消えるのかもしれないな』
それなら、証拠が無くなってしまう。後、確認する方法は女神の像にある翼の数だけだ。
カインデルとアーロンは急いで、国王に謁見する為に廊下を走った。
国王はカインデルを見て驚いた。呼び出しをしてもいないのに王城に居る事が不思議でならなかったのだ。
カインデルは、前の過去で直接城から出入りできる緊急用の通路を教えてもらったと説明した。
そして、二人はまた時間が撒き戻っている事を国王に説明したのだ。
国王は事態を重く見て、神官長と書記官長を部屋に呼んだ。
時間を戻した場合は、必ず国王に報告することが義務付けられているにも関わらず、戻した本人から何の説明もない。
だが、まだ確証もないのに憶測だけで物事を決めるわけにもいかず、クロイツェル付きの侍女と侍従から王子の手首に痣がないか聞くことにした。
ところがクロイツェルの手首には痣がないが、体全体に何か細い紐のような物で擦った様な跡があるという。鞭で打ったような跡ではなく、本当に何かに肌が擦れたような軽いものだと報告された。
確証が得られないまま、国王とアーロン、カインデルは地下にある女神の像に向かったのだ。
そして、3人は見た!
女神の像の翼が5枚になり、一枚朽ちて先ほど落ちた様にまだその生え際からまたポロポロと破片が落ちて行くのを……。
──間違いない!時間が戻っている。
国王はクロイツェルをその場に呼び出した。カインデルとアーロンは、隣の部屋でその様子を見ていた。
『先ほど、そなたの侍従から体中に擦り傷があると聞いた?何かの病かもしれない丁度神官長が来ている。見てもらうといい』
国王はクロイツェルに上半身に衣服を脱ぐように指示すると、侍従が王子から衣服を脱がせた。
神官長はその奇妙な傷跡のようなものを見たり、直接指でなぞったりした。
その後、神官長はある仮説に辿り着いた。
──この傷跡の様なものはもしかしたら運命の糸なのかもしれない。
そう考え、国王にある提案をしたのだ。
『殿下は、運命の糸に呪われたかもしれません。神殿で取りあえず身を清めた方がいいかと思います。公爵家のレスティーナ様も同行して頂きたいのですが…』
カインデルは隣でそのことを聞いて、動揺した。
今、レスティーナに会わせる訳にはいかない。
また婚約して、辛い想いをするかもしれないと考えただけで腸が煮えくり返る思いをしていた。
だが、カインデルの予想通り、呪われた体になったクロイツェルの為には傍に癒やしの力を持つレスティーナがいた方がいいという結論になったのだ。
それにしてもおかしいとアーロンは言った。
二度もレスティーナではなく、マリアンヌを選んだのにどうして女神は彼らの縁を切らないのだろうと……。
確かにそうだとカインデルも同意した。
それにクロイツェルも何故、時間を戻したんだ?
最初の時にクロイツェルとマリアンヌの間に、何が起きたのか分からない二人は首を捻るばかりだった。
不思議な事はそれだけではなかった。
二度目の時もそうだったが、クロイツェルのレスティーナへの扱いが変化していった。一度目であれほど毛嫌いしていたはずなのに、段々お互いの距離が近くなっている様だった。
しかし、マリアンヌが絡むとクロイツェルはおかしくなる。
矛盾した行動にレスティーナ以外の人間も困惑した。
カインデルの不安も募るばかりだった。
今回は、もしかしたらレスティーナは自分を選ばないかもしれない。
そんな思いを打ち消す様に、今度の人生もレスティーナの為に隣国での留学を早めに切り上げて来ようとした。
カインデルを嘲笑うかの様に、またもや豊穣祭にレスティーナは暴走馬に襲われたのだった。
治療の為に公爵領の避暑地に出かけたカインデルとレスティーナは、二人で静かに誰も邪魔されずに過ごした。
冬になると暖炉の前で他愛のない話をしたり、チェスや読書をして楽しんだ。
春の訪れまでは、レスティーナとカインデルは公爵領で静かに穏やかに過ごしたのだ。
そこから地下の薄暗い回廊を通って、初代国王の銅像の裏に出る。そこからアーロンのいる王子宮までは割と近い。
アーロンも自身の異変に気付き、国王の元に先触れを送って会いに行く途中、カインデルと出くわした。
『まさか…お前が…』
『兄上が時間を戻したんじゃあないよね』
『『え…』』
ほぼ二人同時に喋ったのだが、その後冷静になって考えれば、そんな事をする理由は見当たらない。
カインデルは幸せの渦中にいたし、アーロンは1年後にはリーゼロッタと結婚するはずだった。
そんな二人がもう一度時間を戻すことなどあり得なかった。しかし、実際に時間を戻した人間がいる。
国王が戻していないのなら、考えられる人間は一人だけ……。
『そう言えば、今日クロイツェル兄上…右手首に包帯を巻いていたんだ。きっとあの下には巻き戻した時に浮かぶ印があるんだよ』
そう言ってアーロンは自分の手首を見たら、手首の数字は薄くなっている。
『もしかしたら、誰かが上書きするように時間を戻したら消えるのかもしれないな』
それなら、証拠が無くなってしまう。後、確認する方法は女神の像にある翼の数だけだ。
カインデルとアーロンは急いで、国王に謁見する為に廊下を走った。
国王はカインデルを見て驚いた。呼び出しをしてもいないのに王城に居る事が不思議でならなかったのだ。
カインデルは、前の過去で直接城から出入りできる緊急用の通路を教えてもらったと説明した。
そして、二人はまた時間が撒き戻っている事を国王に説明したのだ。
国王は事態を重く見て、神官長と書記官長を部屋に呼んだ。
時間を戻した場合は、必ず国王に報告することが義務付けられているにも関わらず、戻した本人から何の説明もない。
だが、まだ確証もないのに憶測だけで物事を決めるわけにもいかず、クロイツェル付きの侍女と侍従から王子の手首に痣がないか聞くことにした。
ところがクロイツェルの手首には痣がないが、体全体に何か細い紐のような物で擦った様な跡があるという。鞭で打ったような跡ではなく、本当に何かに肌が擦れたような軽いものだと報告された。
確証が得られないまま、国王とアーロン、カインデルは地下にある女神の像に向かったのだ。
そして、3人は見た!
女神の像の翼が5枚になり、一枚朽ちて先ほど落ちた様にまだその生え際からまたポロポロと破片が落ちて行くのを……。
──間違いない!時間が戻っている。
国王はクロイツェルをその場に呼び出した。カインデルとアーロンは、隣の部屋でその様子を見ていた。
『先ほど、そなたの侍従から体中に擦り傷があると聞いた?何かの病かもしれない丁度神官長が来ている。見てもらうといい』
国王はクロイツェルに上半身に衣服を脱ぐように指示すると、侍従が王子から衣服を脱がせた。
神官長はその奇妙な傷跡のようなものを見たり、直接指でなぞったりした。
その後、神官長はある仮説に辿り着いた。
──この傷跡の様なものはもしかしたら運命の糸なのかもしれない。
そう考え、国王にある提案をしたのだ。
『殿下は、運命の糸に呪われたかもしれません。神殿で取りあえず身を清めた方がいいかと思います。公爵家のレスティーナ様も同行して頂きたいのですが…』
カインデルは隣でそのことを聞いて、動揺した。
今、レスティーナに会わせる訳にはいかない。
また婚約して、辛い想いをするかもしれないと考えただけで腸が煮えくり返る思いをしていた。
だが、カインデルの予想通り、呪われた体になったクロイツェルの為には傍に癒やしの力を持つレスティーナがいた方がいいという結論になったのだ。
それにしてもおかしいとアーロンは言った。
二度もレスティーナではなく、マリアンヌを選んだのにどうして女神は彼らの縁を切らないのだろうと……。
確かにそうだとカインデルも同意した。
それにクロイツェルも何故、時間を戻したんだ?
最初の時にクロイツェルとマリアンヌの間に、何が起きたのか分からない二人は首を捻るばかりだった。
不思議な事はそれだけではなかった。
二度目の時もそうだったが、クロイツェルのレスティーナへの扱いが変化していった。一度目であれほど毛嫌いしていたはずなのに、段々お互いの距離が近くなっている様だった。
しかし、マリアンヌが絡むとクロイツェルはおかしくなる。
矛盾した行動にレスティーナ以外の人間も困惑した。
カインデルの不安も募るばかりだった。
今回は、もしかしたらレスティーナは自分を選ばないかもしれない。
そんな思いを打ち消す様に、今度の人生もレスティーナの為に隣国での留学を早めに切り上げて来ようとした。
カインデルを嘲笑うかの様に、またもや豊穣祭にレスティーナは暴走馬に襲われたのだった。
治療の為に公爵領の避暑地に出かけたカインデルとレスティーナは、二人で静かに誰も邪魔されずに過ごした。
冬になると暖炉の前で他愛のない話をしたり、チェスや読書をして楽しんだ。
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