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29.レスティーナの記憶
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レスティーナは、カインデルによって暴走馬の事故から運よく免れた。
自分が今、7度目の生を生きている事など何も知らないレスティーナは、馬車の中でカインデルの膝枕で眠りに付いている。
そして、失った過去の夢の中にいた。
毎回誰かとのお茶会に遠慮なく自分よりも先に来て、楽しそうにお喋りをしている二人……。
それを遠くから眺めている自分。
相手の女性を罵倒して、
『婚約者でもないのに、距離が近すぎるのは貴族の子女としてはしたないことだわ。不用意にべたべたと触らないで!!』
『単に女神の代弁者だから婚約者に選ばれただけでしょう?私を愛しているといつも言ってくれているわ』
『私だって好きであの方の婚約者になったのではないわ。決して振り向いてくれなのなら、婚約を解消したいのは私の方よ!』
『なら、そう言ってよ。愛されている私が……様の婚約者になるんだから…』
『何度も言っているけれど、婚約者でもない男性を名前で呼ぶのはいけない事よ。どうして分からないの?』
『あら、嫉妬しているのね……様は、……様に愛されていないからって、私に八つ当たりするのは心が醜い証拠だわ』
『何をしている!!!レスティーナ!!……をまた虐めているのか!なんて虚量な人間なんだ!この私に全く相応しくない可愛げのない女め!女神が何故お前の様な女を女神の代弁者に選んだのか分からない。……の方がよほど相応しいのに』
顔が黒塗りの年若い男女は抱き合いながら、レスティーナを嘲笑っている。
『もう嫌なの…どんなに努力しても何も変わらない。お母様も……殿下も…誰からも愛されないなら、どうして女神の代弁者なの。どうして私でなければならないの。こんな思いをしてまで……何もかも嫌になる…』
『誰からも愛されないなんて事はない。俺はティーナが好きだよ。お前がどれほど努力をしているのかは屋敷の者達も知っている。だから誰もお前を蔑にしていないだろう。辛いのなら、止めればいい。あいつの婚約者でいる必要はない。いつでも止められるんだから。選ぶのはお前自身だよ』
『でも…あの方の婚約者でなくなった私に何の価値があるというの?』
『人の価値なんてそれこそ千差万別だよ。俺はこの世にお前が存在してくれているだけで幸せだよ』
『カインデルお兄様がお兄様でなければいいのに、血の繋がりなんて欲しくなかった。そうすれば私はお兄様を……』
その先をいう事の出来ないレスティーナはカインデルの前で悲しげに俯いた。
カインデルは何かを察したように、レスティーナをそっと優しく抱きしめた。
いつもいつも私の前で仲睦まじい恋人ごっこを見せつけられている。
ああ……これは運命なんだ…。
暴走馬に蹴られそうなクロイツェルを庇ったレスティーナは、クロイツェルが咄嗟にマリアンヌを庇った姿を見て、『また…』と頭に浮かんだ言葉に疑問が浮かんだが、今見ている夢がもし、現実に起きているのなら納得がいく。
きっと私は彼から選ばれない…。選ばれ愛されるのは妹なのだ。
夢の中で、最後の恋心が砕けた様な気がして、レスティーナは一滴の涙を流した。
レスティーナの髪からクロイツェルから贈られた髪飾りはない。
暴走馬の前に飛び出した時に髪から滑り落ちたのだ。
その髪飾りは暴れる馬に踏みつけられ、二つに割れてしまっている。
髪飾りの破片をクロイツェルが持っていることなどレスティーナは知らない。
いつも11才の誕生日にクロイツェルがレスティーナに贈った物だった。
割れた髪飾りはこれからの二人の未来を示しているかの様…。
前世の記憶のないレスティーナは毎回クロイツェルがその髪飾りを大切にしていることも…
──レスティーナ…君と一緒でないと私は幸せになれないんだ…。
クロイツェルのひび割れた魂の一部がそう呟きながら、女神の石版で時を戻していることも……。
何も知らないレスティーナは、ただ優しい兄カインデルの温もりを感じながら、馬車で公爵家に帰るのだった。
自分が今、7度目の生を生きている事など何も知らないレスティーナは、馬車の中でカインデルの膝枕で眠りに付いている。
そして、失った過去の夢の中にいた。
毎回誰かとのお茶会に遠慮なく自分よりも先に来て、楽しそうにお喋りをしている二人……。
それを遠くから眺めている自分。
相手の女性を罵倒して、
『婚約者でもないのに、距離が近すぎるのは貴族の子女としてはしたないことだわ。不用意にべたべたと触らないで!!』
『単に女神の代弁者だから婚約者に選ばれただけでしょう?私を愛しているといつも言ってくれているわ』
『私だって好きであの方の婚約者になったのではないわ。決して振り向いてくれなのなら、婚約を解消したいのは私の方よ!』
『なら、そう言ってよ。愛されている私が……様の婚約者になるんだから…』
『何度も言っているけれど、婚約者でもない男性を名前で呼ぶのはいけない事よ。どうして分からないの?』
『あら、嫉妬しているのね……様は、……様に愛されていないからって、私に八つ当たりするのは心が醜い証拠だわ』
『何をしている!!!レスティーナ!!……をまた虐めているのか!なんて虚量な人間なんだ!この私に全く相応しくない可愛げのない女め!女神が何故お前の様な女を女神の代弁者に選んだのか分からない。……の方がよほど相応しいのに』
顔が黒塗りの年若い男女は抱き合いながら、レスティーナを嘲笑っている。
『もう嫌なの…どんなに努力しても何も変わらない。お母様も……殿下も…誰からも愛されないなら、どうして女神の代弁者なの。どうして私でなければならないの。こんな思いをしてまで……何もかも嫌になる…』
『誰からも愛されないなんて事はない。俺はティーナが好きだよ。お前がどれほど努力をしているのかは屋敷の者達も知っている。だから誰もお前を蔑にしていないだろう。辛いのなら、止めればいい。あいつの婚約者でいる必要はない。いつでも止められるんだから。選ぶのはお前自身だよ』
『でも…あの方の婚約者でなくなった私に何の価値があるというの?』
『人の価値なんてそれこそ千差万別だよ。俺はこの世にお前が存在してくれているだけで幸せだよ』
『カインデルお兄様がお兄様でなければいいのに、血の繋がりなんて欲しくなかった。そうすれば私はお兄様を……』
その先をいう事の出来ないレスティーナはカインデルの前で悲しげに俯いた。
カインデルは何かを察したように、レスティーナをそっと優しく抱きしめた。
いつもいつも私の前で仲睦まじい恋人ごっこを見せつけられている。
ああ……これは運命なんだ…。
暴走馬に蹴られそうなクロイツェルを庇ったレスティーナは、クロイツェルが咄嗟にマリアンヌを庇った姿を見て、『また…』と頭に浮かんだ言葉に疑問が浮かんだが、今見ている夢がもし、現実に起きているのなら納得がいく。
きっと私は彼から選ばれない…。選ばれ愛されるのは妹なのだ。
夢の中で、最後の恋心が砕けた様な気がして、レスティーナは一滴の涙を流した。
レスティーナの髪からクロイツェルから贈られた髪飾りはない。
暴走馬の前に飛び出した時に髪から滑り落ちたのだ。
その髪飾りは暴れる馬に踏みつけられ、二つに割れてしまっている。
髪飾りの破片をクロイツェルが持っていることなどレスティーナは知らない。
いつも11才の誕生日にクロイツェルがレスティーナに贈った物だった。
割れた髪飾りはこれからの二人の未来を示しているかの様…。
前世の記憶のないレスティーナは毎回クロイツェルがその髪飾りを大切にしていることも…
──レスティーナ…君と一緒でないと私は幸せになれないんだ…。
クロイツェルのひび割れた魂の一部がそう呟きながら、女神の石版で時を戻していることも……。
何も知らないレスティーナは、ただ優しい兄カインデルの温もりを感じながら、馬車で公爵家に帰るのだった。
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