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40.不可解な行動
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翌日、カインデルは朝食後にサロンでレスティーナとお茶を飲みながら、昨夜の事を二人で分析した。
「で、レスティーナは何か引っかかった事があったのか?」
「ええ、早死にする事も何だけれど、あの夢…どうしていつも幸せになれないのか不思議なの。女神の代弁者なら幸せにならないと豊穣も安寧も無いと思うの。なのにあんな結末を迎えるなんて…。それで神罰がくだらないのはおかしいし、それに明らかに私が幸せになるのを邪魔している様にしか見えない」
「確かにそれは俺も感じていた違和感だ。何度も繰り返されるやり直しに何の意味があるのかという点ではな」
「カインデルお兄様は記憶があるんですか?」
「ああ、俺の左眼にはイフェル神の加護が宿っているからな。だから前の記憶を持っているんだ。記憶をとどめる事が出来るし、未来を視る事も出来る」
「なら…」
「なぜ使わないかってことなら、精神が神の支配下におかれて自分を失うからだ」
「自分を失う…」
「つまり早い話が神に身体を乗っ取られるってことだよ」
その答えにレスティーナはあの空間の事を思い出した。
そういえばあの空間はなんだったのかしら?まるで私を閉じ込める様に出口が見えなかった…。
レスティーナは見えない空間を必死でもがきながら手探りで、出口を探していた時の事を思い出す。それは果てしなく終わりの見えない酷く長く感じた時間だった。
このまま、ここから出られないのではないかと恐怖を感じて、今にも泣き出しそうになる自分をなんとか抑えていたのだ。
あの時カインデルが助けてくれなければ、間違いなくレスティーナは空間に閉じ込められたままだっただろう。
もし、閉じ込められたのならその後はどうなったのだろう?
レスティーナはまた同じことが起きるかも知れない未来を想像して身震いした。
「寒いのか?」
レスティーナの顔が青ざめていくのを見てカインデルはそう訊ねた。
「違うの…怖いの…もしこの前の様になったらと考えると…」
カインデルは、怯えて震えているレスティーナの肩を抱き寄せた。
「大丈夫だ…今度こそきっと守るから…」
カインデルはレスティーナに微笑みながらそう言い聞かせて、自分を奮い立たせた。
カインデルの言葉に安堵したレスティーナは気を取り直して、また夢の話を続けた。
そこでのクロイツェルの行動は矛盾しているもので、まるで別の人格が存在するかの様だった。
マリアンヌを大切に思っているのに、一方ではレスティーナに固執する。
そして、最後には何かに突き動かされるように石版の元に行くのだ。
虚ろな幽鬼の様な姿を思い出して、レスティーナの中で何処か確信したようにカインデルに告げる。
「殿下の中に何か別の意志がいるのではないかしら…。私が殿下に触れた時、無数の糸が私を取り込もうと覆ってきたことと関係があるんじゃないかしら。あの糸が最初のマリアンヌから出た糸ならば……」
「そうだな。女神の意志が働いているのかもしれない」
カインデルはやり直す時に聞いた「これで最期」という言葉が気にかかった。
あの時は深く考えずに単に翼が全部無くなった事を指していると考えていたが、実は別の意味があったのかもしれない。そう考えていた。何かを終わりにする為に…。それが一体何を示しているのは分からないが…レスティーナが幸せになる事を女神が望んでいない事だけは確かだ。
きっと自分たちの知らない秘密が隠されているとカインデルも考えた。
「ティナ。神殿には神の禁書が存在すると聞いたことがある。そこに何か書かれているかも知れない」
「そうね。王宮の書庫にはないものが沢山あると思う。でも禁書は大神官様しか見れない決まりなの。閲覧できるかどうかは分からないわ」
「だが、可能性がある。一か八かで頼んでみる価値はある」
「そうね。何もしないよりましだもの」
「ああ、まだティナは12才だ。時間はあるはずだ」
「…ならいいのだけれど」
「まだ何か不安な事でもあるのか」
「はっきりとよく分からないけど、もし女神が私の身体を欲しがっているのならそんなに時間はないかもしれないと思って」
「ティナの身体を女神が…どうして」
カインデルはその言葉にハッとなった。
──イフェルの加護を使えば使うほど己を失って神に身体を支配される。
もしかして…同じじゃないのか?女神の代弁者と例えば力を使えば使うほど命が削られるとか…それなら代弁者の寿命が短い事も頷ける。
しかし、それだけではないだろう。
レスティーナに関しては当てはまらない。さっきレスティーナが言っていたように、女神は彼女の身体を欲しがっているのかもしれない。問題は何の為に…。何をする為に肉体を欲しがっているかだ。
やはり、神殿の禁書の閲覧は必要不可欠な事だ。
まだ大神官が王都に留まっている間に許可を貰わなくてはいけない。
カインデルはレスティーナと一緒に王都の神殿を明日訊ねる旨を手紙に認めて従僕に持って行かせた。
神殿からは快い返事が貰え、レスティーナとカインデルは翌日神殿に出向いたのだ。
「で、レスティーナは何か引っかかった事があったのか?」
「ええ、早死にする事も何だけれど、あの夢…どうしていつも幸せになれないのか不思議なの。女神の代弁者なら幸せにならないと豊穣も安寧も無いと思うの。なのにあんな結末を迎えるなんて…。それで神罰がくだらないのはおかしいし、それに明らかに私が幸せになるのを邪魔している様にしか見えない」
「確かにそれは俺も感じていた違和感だ。何度も繰り返されるやり直しに何の意味があるのかという点ではな」
「カインデルお兄様は記憶があるんですか?」
「ああ、俺の左眼にはイフェル神の加護が宿っているからな。だから前の記憶を持っているんだ。記憶をとどめる事が出来るし、未来を視る事も出来る」
「なら…」
「なぜ使わないかってことなら、精神が神の支配下におかれて自分を失うからだ」
「自分を失う…」
「つまり早い話が神に身体を乗っ取られるってことだよ」
その答えにレスティーナはあの空間の事を思い出した。
そういえばあの空間はなんだったのかしら?まるで私を閉じ込める様に出口が見えなかった…。
レスティーナは見えない空間を必死でもがきながら手探りで、出口を探していた時の事を思い出す。それは果てしなく終わりの見えない酷く長く感じた時間だった。
このまま、ここから出られないのではないかと恐怖を感じて、今にも泣き出しそうになる自分をなんとか抑えていたのだ。
あの時カインデルが助けてくれなければ、間違いなくレスティーナは空間に閉じ込められたままだっただろう。
もし、閉じ込められたのならその後はどうなったのだろう?
レスティーナはまた同じことが起きるかも知れない未来を想像して身震いした。
「寒いのか?」
レスティーナの顔が青ざめていくのを見てカインデルはそう訊ねた。
「違うの…怖いの…もしこの前の様になったらと考えると…」
カインデルは、怯えて震えているレスティーナの肩を抱き寄せた。
「大丈夫だ…今度こそきっと守るから…」
カインデルはレスティーナに微笑みながらそう言い聞かせて、自分を奮い立たせた。
カインデルの言葉に安堵したレスティーナは気を取り直して、また夢の話を続けた。
そこでのクロイツェルの行動は矛盾しているもので、まるで別の人格が存在するかの様だった。
マリアンヌを大切に思っているのに、一方ではレスティーナに固執する。
そして、最後には何かに突き動かされるように石版の元に行くのだ。
虚ろな幽鬼の様な姿を思い出して、レスティーナの中で何処か確信したようにカインデルに告げる。
「殿下の中に何か別の意志がいるのではないかしら…。私が殿下に触れた時、無数の糸が私を取り込もうと覆ってきたことと関係があるんじゃないかしら。あの糸が最初のマリアンヌから出た糸ならば……」
「そうだな。女神の意志が働いているのかもしれない」
カインデルはやり直す時に聞いた「これで最期」という言葉が気にかかった。
あの時は深く考えずに単に翼が全部無くなった事を指していると考えていたが、実は別の意味があったのかもしれない。そう考えていた。何かを終わりにする為に…。それが一体何を示しているのは分からないが…レスティーナが幸せになる事を女神が望んでいない事だけは確かだ。
きっと自分たちの知らない秘密が隠されているとカインデルも考えた。
「ティナ。神殿には神の禁書が存在すると聞いたことがある。そこに何か書かれているかも知れない」
「そうね。王宮の書庫にはないものが沢山あると思う。でも禁書は大神官様しか見れない決まりなの。閲覧できるかどうかは分からないわ」
「だが、可能性がある。一か八かで頼んでみる価値はある」
「そうね。何もしないよりましだもの」
「ああ、まだティナは12才だ。時間はあるはずだ」
「…ならいいのだけれど」
「まだ何か不安な事でもあるのか」
「はっきりとよく分からないけど、もし女神が私の身体を欲しがっているのならそんなに時間はないかもしれないと思って」
「ティナの身体を女神が…どうして」
カインデルはその言葉にハッとなった。
──イフェルの加護を使えば使うほど己を失って神に身体を支配される。
もしかして…同じじゃないのか?女神の代弁者と例えば力を使えば使うほど命が削られるとか…それなら代弁者の寿命が短い事も頷ける。
しかし、それだけではないだろう。
レスティーナに関しては当てはまらない。さっきレスティーナが言っていたように、女神は彼女の身体を欲しがっているのかもしれない。問題は何の為に…。何をする為に肉体を欲しがっているかだ。
やはり、神殿の禁書の閲覧は必要不可欠な事だ。
まだ大神官が王都に留まっている間に許可を貰わなくてはいけない。
カインデルはレスティーナと一緒に王都の神殿を明日訊ねる旨を手紙に認めて従僕に持って行かせた。
神殿からは快い返事が貰え、レスティーナとカインデルは翌日神殿に出向いたのだ。
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