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41.禁書
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翌日、カインデルとレスティーナは神殿に向かった。
着いた時は昼近くになっており、陽は真上に差し掛かっていた。
案内をしてくれたのは年若い見習い神官だった。
大神官の待つ部屋に着くと、レスティーナは目を大きく見開いて驚いた。
「大神官様!そ…その手はどうしたのですか?」
「ああ、これはどうやら呪いを受けたらしい」
「呪い…?」
見れば大神官の両手は黒く腫れあがている。これでは祈祷が出来ないのではないかという程の状態だった。
「すぐに癒しの力を…」
レスティーナが手を翳しても大神官の手は治らなかった。
「一体これはどういう事なのでしょうか?」
「恐らく、女神クレマンテの呪いだからだよ。同じ女神の能力では効果が無いのかもしれない…」
困惑している二人を傍で見ていたカインデルが、
「大神官様手を…」
カインデルが大神官の手に触れると、たちまち大神官の手が元の状態に戻ったのだ。
「一体何をされたのですか?」
「イフェルの加護の一つに元に戻す方法があるんだ」
「時戻しの術ですか」
「そうです。クレマンテの癒しとは違ってイフェルの能力は元の状態に戻すだけですので、生まれ付きのものには使えませんし、色々と制約があるので…」
「そうですか、イフェルの能力はあまり使われない方が良いでしょう。ですが助かりました。ありがとうございます。第一王子殿下カインデル様」
「俺の事を知っているのですか?」
「勿論です。殿下がお生まれになった時、洗礼を授けようとしたのは他ならぬ私だったのですから」
「そうだったのですか」
「結局は、クレマンテに拒まれてしまいましたが…」
「拒まれた?」
「はい、殿下が神殿に入るのを邪魔するかの如く、濃い霧が辺りを包んだのです。仕方無く殿下を連れた一行が立ち去ると不思議な事に霧が晴れて、辺りは元の晴天に変わりました。何度も王宮でも試したのですが、どうしても殿下にだけは洗礼を行う事ができなかったのです。まるで女神が洗礼を拒んでいるとしか思えない状況でした」
「そうだったのか」
「今、思えば殿下のイフェルの加護の所為だったのかもしれません」
「それは仲の良くない姉弟神だったからか」
「そう伝えられていますが…セガールの教えでは違うようです」
「我が国独自の解釈なのか」
「それは、今の所よく分かっていないのです。女神の秘密を解き明かした者は皆、一様に死を賜る事になったからです。これは大神官のみが読む事の出来る禁書に書かれていました。『決して女神を暴いてはいけない』と…」
「女神の秘密か…しかし、どうやら我々に掛けられた呪いを解くためにはその秘密を暴かなくてはならないようだ」
「呪い…?」
「ああ、この世界の人間は女神の呪いによって何度も繰り返し時を戻されている。俺とレスティーナが結ばれるのを拒んでいるとしか思えないのだ」
「拒んでいる…女神がですか」
「そうとしか思えない。もう王宮にある女神像の9枚の翼は折れて無くなっている。これが最後になる」
「女神像の翼が折れている…そんなことが」
「だから、今日来たのは他でもない。あなたが保管している禁書を読みたいのだ。何が我々の身に起こっているのか知らなくてはいけない」
カインデルの言葉に同調して、隣のレスティーナもコクリと頷いた。
大神官は神妙な面持ちで考えていたが、二人の顔を交互に見た後、
「お二人ともついてきてください」
大神官は二人を連れて、神殿の奥にある女神の像の祭壇をずらした。そこから現れたのは地下に続く道だった。
レスティーナとカインデルは顔を見合わせ、息を大きく吸い込むと大神官の後に続いて地下への階段を降りて行った。
着いた時は昼近くになっており、陽は真上に差し掛かっていた。
案内をしてくれたのは年若い見習い神官だった。
大神官の待つ部屋に着くと、レスティーナは目を大きく見開いて驚いた。
「大神官様!そ…その手はどうしたのですか?」
「ああ、これはどうやら呪いを受けたらしい」
「呪い…?」
見れば大神官の両手は黒く腫れあがている。これでは祈祷が出来ないのではないかという程の状態だった。
「すぐに癒しの力を…」
レスティーナが手を翳しても大神官の手は治らなかった。
「一体これはどういう事なのでしょうか?」
「恐らく、女神クレマンテの呪いだからだよ。同じ女神の能力では効果が無いのかもしれない…」
困惑している二人を傍で見ていたカインデルが、
「大神官様手を…」
カインデルが大神官の手に触れると、たちまち大神官の手が元の状態に戻ったのだ。
「一体何をされたのですか?」
「イフェルの加護の一つに元に戻す方法があるんだ」
「時戻しの術ですか」
「そうです。クレマンテの癒しとは違ってイフェルの能力は元の状態に戻すだけですので、生まれ付きのものには使えませんし、色々と制約があるので…」
「そうですか、イフェルの能力はあまり使われない方が良いでしょう。ですが助かりました。ありがとうございます。第一王子殿下カインデル様」
「俺の事を知っているのですか?」
「勿論です。殿下がお生まれになった時、洗礼を授けようとしたのは他ならぬ私だったのですから」
「そうだったのですか」
「結局は、クレマンテに拒まれてしまいましたが…」
「拒まれた?」
「はい、殿下が神殿に入るのを邪魔するかの如く、濃い霧が辺りを包んだのです。仕方無く殿下を連れた一行が立ち去ると不思議な事に霧が晴れて、辺りは元の晴天に変わりました。何度も王宮でも試したのですが、どうしても殿下にだけは洗礼を行う事ができなかったのです。まるで女神が洗礼を拒んでいるとしか思えない状況でした」
「そうだったのか」
「今、思えば殿下のイフェルの加護の所為だったのかもしれません」
「それは仲の良くない姉弟神だったからか」
「そう伝えられていますが…セガールの教えでは違うようです」
「我が国独自の解釈なのか」
「それは、今の所よく分かっていないのです。女神の秘密を解き明かした者は皆、一様に死を賜る事になったからです。これは大神官のみが読む事の出来る禁書に書かれていました。『決して女神を暴いてはいけない』と…」
「女神の秘密か…しかし、どうやら我々に掛けられた呪いを解くためにはその秘密を暴かなくてはならないようだ」
「呪い…?」
「ああ、この世界の人間は女神の呪いによって何度も繰り返し時を戻されている。俺とレスティーナが結ばれるのを拒んでいるとしか思えないのだ」
「拒んでいる…女神がですか」
「そうとしか思えない。もう王宮にある女神像の9枚の翼は折れて無くなっている。これが最後になる」
「女神像の翼が折れている…そんなことが」
「だから、今日来たのは他でもない。あなたが保管している禁書を読みたいのだ。何が我々の身に起こっているのか知らなくてはいけない」
カインデルの言葉に同調して、隣のレスティーナもコクリと頷いた。
大神官は神妙な面持ちで考えていたが、二人の顔を交互に見た後、
「お二人ともついてきてください」
大神官は二人を連れて、神殿の奥にある女神の像の祭壇をずらした。そこから現れたのは地下に続く道だった。
レスティーナとカインデルは顔を見合わせ、息を大きく吸い込むと大神官の後に続いて地下への階段を降りて行った。
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