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密葬
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夏の日差しを受けながら、ローズマリアの葬儀は密かに行われた。社交シーズンが終わっている為、殆どの貴族が領地に帰っている。
それに遺体の状態維持が難しいのも理由の一つ。だが、殿下達はそんな事よりも次の計画にローズマリアの遺体が必要なのだ。
国王夫妻と公爵家、そして王都に居を構えている貴族達が参列する中、姉の私に注目が集まるのは仕方がない事。
ざわめき合っている会場で、ローズマリアの棺にそれぞれが別れの花を入れていく。神官達が冥府の神に妹の冥福を祈りを奉げている。
参列者からは若くして逝ってしまったローズマリアへの同情の声が多く囁かれていたが、殿下の次の妃の事が気になっている者が殆どだった。
分かってはいたが、寂しい葬儀の中、憔悴しきった母・アマンダの姿を見つけた。父に支えられた母は若々しく自身に満ちていた公爵夫人ではなく。最愛の娘を亡くした母親の姿が確かにあった。
棺が定刻通り、王家の墓地に埋葬される頃になると、母は棺にしがみ付き、髪を振り乱しながら泣いている。大勢の貴族達はその憐れな姿に涙を誘われ、至る所ですすり泣きが聞こえてきた。
私はユリウス様に支えられながら、ローズマリアがもう一度、生まれ変わったら今度こそ、幸せを掴んでほしいと願った。
誰でもない自身の人生を歩んでほしいとそう願わずにはいられなかった。
葬儀は略式で行われ、社交シーズンが始まる秋に改めて国葬が行われる。私は親族として墓地までユリウス様の馬車で向かった。
「ユリウス様、お聞きしたい事があるのです。子供はどうなったのですか?」
「私の信用のおける人物に養育してもらっている。何れ、公爵家に仕えてもらえるように教育するつもりだ」
「それを聞いて安心しました。ありがとうございます」
その答えを聞いて私は安堵した。ローズの思いは無駄にならなかった。
「私を恨んでいますか?」
不意に聞かれたその問いをどう返していいのか分からなかった。
それは何に対して?私との婚約の事。それともローズマリアとの取引の事。殿下と何か計画を立てている事。
「何の事だか分かりません」
私は取り敢えず知らない振りを決め込んだ。どう足掻いても殿下の妃になるしかないのだから。
二人で墓地へ向かう馬車の中は重苦しい空気で一杯だった。
もう、私に構わないで欲しい。殿下の手を取った私を惑わすのは止めて欲しい。婚約者の振りをするのはこれで最後なのだから。
この時、私は妹の最期の言葉の意味を知らなかった。知ったのは墓地に着いて、棺を持っている従者達の様子がおかしい事に気が付いた。
何だか軽そうに見えたのだ。
私はその様子を見て初めて理解したのだ。私が名前を変えるという事は、私は死ななければならない。そしてそれには身代わりが必要になってくる。
だから、ローズは最後に「お姉様になれる」と言ったのだ。
私の身代わりに公爵家の墓地に眠る為に。初めてローズマリアの気持ちが解った。これが妹の私に対しての償いだったのだ。
ユリウス様と殿下はこの為にローズマリアと取引したのだ。
私は名前を失い、別人となって生きる。でもローズマリアはサフィニア・ミシェルウィーとなって、悲劇の主人公として語り継がれることになる。
それがローズの願いだった。私になりたいと言っていたローズは死してサフィニアとして人々の中に生きる事になる。きっとそれがローズにとって何よりも大切な事。
私は空の棺に土を被せていく作業をただ黙って虚ろな目で見つめていた。
それに遺体の状態維持が難しいのも理由の一つ。だが、殿下達はそんな事よりも次の計画にローズマリアの遺体が必要なのだ。
国王夫妻と公爵家、そして王都に居を構えている貴族達が参列する中、姉の私に注目が集まるのは仕方がない事。
ざわめき合っている会場で、ローズマリアの棺にそれぞれが別れの花を入れていく。神官達が冥府の神に妹の冥福を祈りを奉げている。
参列者からは若くして逝ってしまったローズマリアへの同情の声が多く囁かれていたが、殿下の次の妃の事が気になっている者が殆どだった。
分かってはいたが、寂しい葬儀の中、憔悴しきった母・アマンダの姿を見つけた。父に支えられた母は若々しく自身に満ちていた公爵夫人ではなく。最愛の娘を亡くした母親の姿が確かにあった。
棺が定刻通り、王家の墓地に埋葬される頃になると、母は棺にしがみ付き、髪を振り乱しながら泣いている。大勢の貴族達はその憐れな姿に涙を誘われ、至る所ですすり泣きが聞こえてきた。
私はユリウス様に支えられながら、ローズマリアがもう一度、生まれ変わったら今度こそ、幸せを掴んでほしいと願った。
誰でもない自身の人生を歩んでほしいとそう願わずにはいられなかった。
葬儀は略式で行われ、社交シーズンが始まる秋に改めて国葬が行われる。私は親族として墓地までユリウス様の馬車で向かった。
「ユリウス様、お聞きしたい事があるのです。子供はどうなったのですか?」
「私の信用のおける人物に養育してもらっている。何れ、公爵家に仕えてもらえるように教育するつもりだ」
「それを聞いて安心しました。ありがとうございます」
その答えを聞いて私は安堵した。ローズの思いは無駄にならなかった。
「私を恨んでいますか?」
不意に聞かれたその問いをどう返していいのか分からなかった。
それは何に対して?私との婚約の事。それともローズマリアとの取引の事。殿下と何か計画を立てている事。
「何の事だか分かりません」
私は取り敢えず知らない振りを決め込んだ。どう足掻いても殿下の妃になるしかないのだから。
二人で墓地へ向かう馬車の中は重苦しい空気で一杯だった。
もう、私に構わないで欲しい。殿下の手を取った私を惑わすのは止めて欲しい。婚約者の振りをするのはこれで最後なのだから。
この時、私は妹の最期の言葉の意味を知らなかった。知ったのは墓地に着いて、棺を持っている従者達の様子がおかしい事に気が付いた。
何だか軽そうに見えたのだ。
私はその様子を見て初めて理解したのだ。私が名前を変えるという事は、私は死ななければならない。そしてそれには身代わりが必要になってくる。
だから、ローズは最後に「お姉様になれる」と言ったのだ。
私の身代わりに公爵家の墓地に眠る為に。初めてローズマリアの気持ちが解った。これが妹の私に対しての償いだったのだ。
ユリウス様と殿下はこの為にローズマリアと取引したのだ。
私は名前を失い、別人となって生きる。でもローズマリアはサフィニア・ミシェルウィーとなって、悲劇の主人公として語り継がれることになる。
それがローズの願いだった。私になりたいと言っていたローズは死してサフィニアとして人々の中に生きる事になる。きっとそれがローズにとって何よりも大切な事。
私は空の棺に土を被せていく作業をただ黙って虚ろな目で見つめていた。
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