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母との対峙

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 母が葬儀の後、私を待ち伏せていた。

 「サフィニア、もう私の子供は貴女だけ、一体いつになったら公爵家に戻って来るの?もう体はいいのでしょう。私の傍にいてちょうだい。ローズの分まで婿を取って、公爵家の跡を継いで幸せに暮らしましょう」

 「お母様、お父様から聞いていないのですか?もう私に拘るのはお止めになって下さい。その所為でローズは…」

 母を詰った所で妹は甦らない。どんなにやり直したくても、どうしようもない所まで来ている。父と決別し、今また母とも決別する。

 たった一人の妹も見送った。もう私には殿下しかいない。彼の愛に縋って生きるしか道は残されていないのだ。

 母は私の両肩を掴んで激しく揺さぶった。

 「サフィニア、どうして解ってくれないの!私には貴女が大切なのよ!ローズは死んでしまった。もう貴女しか残されていない!」

 泣き叫びながら、私に縋っている母をもう、私は母と慕う事は出来ない。母の私への執着がローズを破滅へと導いた。そのことを知ってしまったから……。

 父は泣き崩れた母を支えながら、宥めている。どうでもいい。勝手にすればいい。二人は愛し合っているのだろうが、その何分の一かでも本当の愛情を私達に注いでくれたなら、こんな結末を迎えなかったのに。

 誰が悪いとか考えたくもないが、知ってしまった今、何も知らなかった頃には戻れない。

 「お父様、お母様をお願いします」

 私は、冷たい娘なのだろう。泣いて縋ってくる母を可哀相だと思えなかった。あるのは自業自得。その思いだけだった。

 父と母を後にして私はまたユリウス様と一緒に王宮の離宮に向かった。

 離宮の部屋で着替えもせずにぼんやりと窓の外を見つめている。

 どのくらい経ったのか分からないが、侍女が殿下の訪れを告げて来た。

 「サフィ、疲れただろう。夕食を摂ったら休みなさい」

 殿下が珍しく私に早めの就寝を勧めてくる。今まで朝まで放そうとしなかったのに。殿下の言葉と行動を訝しんでいる私は夕食の後、殿下に勧められた通り床に入った振りをした。

 そして、殿下の後をこっそりつけて行った。

 殿下はある部屋に入って行った。

 そこには大きな肖像画があり、肖像画に描かれているのは私だった。

 そして、部屋の中に飾っているものは、かつて私が殿下に贈った物や無くした物がガラスケースに入れてある。

 殿下が私の肖像画に口付けを落としている。

 その姿が倒錯的な程、美しく恐ろしいものだった。

 怖くなった私は、部屋に逃げ帰ったのだ。

 殿下はおかしい。怖い。私に対する執着の程が解るコレクションを見て、殿下の行動があの手紙の国王に似ている事に気付いた。 

 その後、寝台で震えながら、横になっていた。

 いつの間にか夜が明け、白々と朝日が射し込むのを感じた頃、侍女に起こされた。

 殿下はどうやら、昨夜はあの部屋に籠っていたようだった。

 私は、改めて殿下の執着を目の当たりにして私は、この事をもしかしてローズは知っていたのかもしれない。そう思うに至った。

 朝食時に北の塔の妹の遺品を引き取りたいというとあっさり許可をくれた。

 私は妹が何か他に残していないかを探る為、北の塔を目指したのだ。

 

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