【完結】私は、愛しい貴方に毒を盛る

思い出した事

　突然、アンドリュ様が豹変しました。

　「お茶に何を入れた！」

　大声で叫びました。すると近衛騎士達がやって来て、彼の周りを固めます。

　そう、今日は王妃様のお茶会で王太子殿下もいらしゃいます。

　アンドリュ様の口からはおぞましい計画が語られました。

　「お前を殺して、伯爵家を乗っ取りミーシャを妻に迎えるはずだった。それなのに…」

　そう、この毒薬は【真実薬】と呼ばれる自白薬なのです。でも大量に摂取すると毒薬と同じ効果がある薬なのです。

　あの日、アンドリュ様が密会していたのは、ミーシャ・ガストン男爵令嬢で王宮の侍女としては働いています。勿論、この会場にもいます。

　私は、侯爵家から帰った後、父にこの事を話し父は王家に直ぐ報告を入れ、この場を設けました。

　毒薬を入れるのも王家と父の指示です。

　アンドリュ様は、まだ話し足りないのか。次々と驚愕の真実を話ました。

　「邪魔なアンドリュを崖から落とし、入れ替わったのに、お前のせいで台無しだ！殺してやる」

　アンドリュと名乗る別人は、いきなり私に襲いかかって来ました。

　ふいに私の体を守るように誰かが私の前に立ちました。

　「お、お前生きていたのか」

　「もう止めるんだ。兄上」

　その聞き覚えのある声の主を見上げるとアンドリュ様でした。アンドリュ様が二人いるのです。

　いえ、アンドリュ様とアンドリュ様に瓜二つの人物がいるのです。

　騒然となったお茶会はお開きとなり、私は侍女達とその場から帰宅しました。

　後日査問会が開かれ、ドメイク侯爵家の闇が明らかにされたのでした。

　勿論、私は査問会には出席出来ません。後から父に聞かされた事と、事前に尋問官が家に来て事情を聴かれた程度でした。

　しばらくは、アンドリュ様とも会っておりません。

　私が中庭のガゼボで花壇を眺めているとアンドリュ様が立っていました。

　「アンドリュ様？」

　「ただいま、エスメラルダ。長い間すまなかったね。もう悪夢は終わったよ」

　そう言い、私を抱き締めてくれました。

　私は、子供の様にアンドリュ様にしがみついて泣いていました。

　そして、アンドリュ様は私が落ち着いてから今までの事を話しました。

　私は、静かにアンドリュ様の言葉を聞いていました。