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本編 この度、記憶喪失の公爵様に嫁ぐことになりまして
二人ともそっくりですね
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翌日、先触れを出して、私とハルト様は王宮に向かった。
初めての王宮は絢爛豪華で、私は見たことのないキラキラとした部屋に案内されたのだ。
「ほわ~っ、凄いですねーーー」
ぼんやりと天井を見ながら呟いていた。そして、眩しくて目が潰れそうにもなっていた。
ハルト様が隣で「大丈夫だから」そう言ってくれたけれど、周りは私達に頭を下げてくる。私もつい頭を下げそうになると、ルファスさんが「奥様は頭を下げなくいいです。その代り扇で顔を隠して微笑んでください」と言われたのでそのようにしている。
まだハルト様は王族籍から抜けていない。だから、その正式な妻の私も王族に属するのだそうだ。
謁見の間に通された私とハルト様は、陛下に挨拶をした。
「久しぶりだな、ラインハルト。隣の女性がそちの妻となったデニーロ伯爵家の庶子か?」
「畏れながら、庶子という呼び方はお止め下さい。彼女はサザーランド国のペティール侯爵家の令嬢です。お間違えない様にお願いします」
「ああ、そうだったな」
「初めまして、国王陛下。エステル公爵の妻アシュリーと申します。今後ともよろしくお願いします」
そう言って私は、出来る限り丁寧にお辞儀した。
「王宮は初めてだろう。ラインハルトの部屋はそのままにしてある。今日はそこに泊まるとよい」
そう言った陛下の顔は父親の顔をしていた。
きっと、今まで何もしてこなかったお詫びのつもりだったのかもしれない。
「ありがとうございます」
ハルト様と陛下の間にどれほどの溝があるのかは分からなかったが、この一瞬だけは親子だったのだと私はそう思った。
「陛下は、ラインハルト様とよく似ているのですね。姿も性格も…」
私の心の声がダダ漏れだったようで、退出しようとした陛下の足が止まった。
しまった。やらかしてしまった。
陛下はじっと私の方を見て、微かに笑ったのだ。
傍に控えていた侍従たちが驚いた表情をしている。
そんなに珍しいのかしら?人間誰でも笑うわよね。
「陛下、笑った顔もラインハルト様にそっくりなんですね」
私の言葉にルファスさんがギョッとしている。
何か失言でもしたかな?
私が首を傾げていると、
「なかなか面白い娘だな。ラインハルト、お前が気に入るのも頷ける。大切にするがいい」
そう言って、今度こそ部屋から出て行った。
私とハルト様は、陛下が退出した後、暫くして部屋を出た。
「本当にアシュリーには敵わないなあ」
「えっ、何がですか?おかしなことを言いましたか?」
「いや、何時までもそのままのアシュリーでいてね」
「はあ……」
それは褒められているのだろうか?それともからかわれている?
ハルト様の真意は分からないが、彼の使っていた部屋で過ごせる事が、私にとっては最大のご褒美となった。
やった──っ!やっぱり夫の実家の部屋って気になるのよね。ハルト様の部屋ってどんなんだろう。
「奥様、声に出ていますよ」
「えっ…声に出してたの?」
「はい」
「聞こえた?」
「ばっちり」
「えへへへ…すみません」
「はあ──っ、ここは王宮です。なんでも口に出さない様にして下さい」
「分かりました」
「アシュリー、ルファスばかり構ってないで、僕の傍においで」
ルファスさんとのやり取りが気に入らないとばかりに何だか拗ねている。
「拗ねてます?ハルト様」
「拗ねてない」
「嫉妬してます?」
「嫉妬はしている。だから、今夜はお仕置きタイムだね」
「い…嫌です。それだけはご勘弁を…」
「アシュリーがそう仕向けたんだよ」
「ごめんなさい。二度としませんから」
「ふふっ、もういいから傍においで」
わたしはおずおずとハルト様の近くによると、腰をグイッと引き寄せられ、額に軽く口付けられた。
王宮の回廊でのやり取りを宮人に一部始終見られていたのだ。
その後、宮人たちは、
「あまーい」
と口から砂糖を吐いていたらしい。
初めての王宮は絢爛豪華で、私は見たことのないキラキラとした部屋に案内されたのだ。
「ほわ~っ、凄いですねーーー」
ぼんやりと天井を見ながら呟いていた。そして、眩しくて目が潰れそうにもなっていた。
ハルト様が隣で「大丈夫だから」そう言ってくれたけれど、周りは私達に頭を下げてくる。私もつい頭を下げそうになると、ルファスさんが「奥様は頭を下げなくいいです。その代り扇で顔を隠して微笑んでください」と言われたのでそのようにしている。
まだハルト様は王族籍から抜けていない。だから、その正式な妻の私も王族に属するのだそうだ。
謁見の間に通された私とハルト様は、陛下に挨拶をした。
「久しぶりだな、ラインハルト。隣の女性がそちの妻となったデニーロ伯爵家の庶子か?」
「畏れながら、庶子という呼び方はお止め下さい。彼女はサザーランド国のペティール侯爵家の令嬢です。お間違えない様にお願いします」
「ああ、そうだったな」
「初めまして、国王陛下。エステル公爵の妻アシュリーと申します。今後ともよろしくお願いします」
そう言って私は、出来る限り丁寧にお辞儀した。
「王宮は初めてだろう。ラインハルトの部屋はそのままにしてある。今日はそこに泊まるとよい」
そう言った陛下の顔は父親の顔をしていた。
きっと、今まで何もしてこなかったお詫びのつもりだったのかもしれない。
「ありがとうございます」
ハルト様と陛下の間にどれほどの溝があるのかは分からなかったが、この一瞬だけは親子だったのだと私はそう思った。
「陛下は、ラインハルト様とよく似ているのですね。姿も性格も…」
私の心の声がダダ漏れだったようで、退出しようとした陛下の足が止まった。
しまった。やらかしてしまった。
陛下はじっと私の方を見て、微かに笑ったのだ。
傍に控えていた侍従たちが驚いた表情をしている。
そんなに珍しいのかしら?人間誰でも笑うわよね。
「陛下、笑った顔もラインハルト様にそっくりなんですね」
私の言葉にルファスさんがギョッとしている。
何か失言でもしたかな?
私が首を傾げていると、
「なかなか面白い娘だな。ラインハルト、お前が気に入るのも頷ける。大切にするがいい」
そう言って、今度こそ部屋から出て行った。
私とハルト様は、陛下が退出した後、暫くして部屋を出た。
「本当にアシュリーには敵わないなあ」
「えっ、何がですか?おかしなことを言いましたか?」
「いや、何時までもそのままのアシュリーでいてね」
「はあ……」
それは褒められているのだろうか?それともからかわれている?
ハルト様の真意は分からないが、彼の使っていた部屋で過ごせる事が、私にとっては最大のご褒美となった。
やった──っ!やっぱり夫の実家の部屋って気になるのよね。ハルト様の部屋ってどんなんだろう。
「奥様、声に出ていますよ」
「えっ…声に出してたの?」
「はい」
「聞こえた?」
「ばっちり」
「えへへへ…すみません」
「はあ──っ、ここは王宮です。なんでも口に出さない様にして下さい」
「分かりました」
「アシュリー、ルファスばかり構ってないで、僕の傍においで」
ルファスさんとのやり取りが気に入らないとばかりに何だか拗ねている。
「拗ねてます?ハルト様」
「拗ねてない」
「嫉妬してます?」
「嫉妬はしている。だから、今夜はお仕置きタイムだね」
「い…嫌です。それだけはご勘弁を…」
「アシュリーがそう仕向けたんだよ」
「ごめんなさい。二度としませんから」
「ふふっ、もういいから傍においで」
わたしはおずおずとハルト様の近くによると、腰をグイッと引き寄せられ、額に軽く口付けられた。
王宮の回廊でのやり取りを宮人に一部始終見られていたのだ。
その後、宮人たちは、
「あまーい」
と口から砂糖を吐いていたらしい。
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