【本編完結】この度、記憶喪失の公爵様に嫁ぐことになりまして

春野オカリナ

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本編 この度、記憶喪失の公爵様に嫁ぐことになりまして

決断~ラインハルト~

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 王宮の元自室でのベッドの中で安らかな寝顔を向けている妻の髪を一房とって口付ける。

 なんでもない幸せな日常を与えてくれる妻に感謝しながら……。

 ロバートから賊を捕縛したとの知らせを貰った僕は、直接拷問部屋に向かった。

 案の定予測通り、デニーロ伯爵たちの仕業だった。

 予測通りとはいえもっと他に手段はないのかと思えるくらい単純で稚拙な思考だ。

 デニーロ伯爵には大きな借りがある。それは僕が5才の時の母の毒殺にも関与しているから。

 あの当時、彼の家は側妃側で彼女に言われて僕に毒を仕込んだ。当時彼は文官の一人で、王妃として公務を行なっていた母のところにも出入りしていたのだ。

 だが、僕の食べ物の好みは知らなかったのだろう。僕の嫌いな野菜スープに毒を入れる様に彼侍女に指示を出していた。

 侍女は彼の情婦だった。昔からおんな癖が悪かった彼は、王宮の侍女に手を出していた。

 メイナード侯爵とは学友で、彼の手下のような存在だっだ。

 だから今回、温情など一切かけない。

 二人まとめて消えてもらう。

 メイナード侯爵の罪はアデイラが証拠書類を集めてくれていた。その裏付けを取っている。夜会までには間に合わせる。

 母が殺された時は僕はまだ何の力もなかったが今は違う。

 それにこれは陛下の望みでもある。第四王子を王太子にするためには、反対勢力の力をそぎ落としておきたいのだろう。

 それこそ自分の力がまだあるうちに……。

 僕としてもアシュリーとの平穏な生活を邪魔されたくない。

 折角、王都の喧騒から離れて静かにのんびりできる場所にいるのだからね。

 「うーーーんっ」

 おっと、起きたかな?

 いや大丈夫だ。寝返りを打っただけだ。

 なんともいえない可愛い寝顔を見ていると、僕の殺伐とした心も癒される。

 本当にこんなに僕を虜にして、君は一体どうしたいんだい?

 それにしても大きなお腹だね。ここに赤ん坊が入っているのか。何とも不思議な光景だ。

 もうじき生まれてくる子供か…できれば僕よりもアシュリーに似て欲しい。特に中身が…。

 男ならいいが女なら苦労すると思うからな。

 僕は隣で寝ている可愛い奥さんアシュリーの大きなお腹を撫でながら、彼女の身体を引き寄せて腕に抱いて眠った。

 後少しで、僕の役目も終わるだろう。そうすれば彼女や子供とゆっくりと過ごせる。

 そんな事を夢見て瞼を閉じたのだった。

 

 
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