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ありふれた日常で
アリスティア
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以前は頭に靄がかかった様だったのに、レイラン様と過ごしている内に段々、記憶も安定してすっきりとしている自分に気付いている。
今はもう過去を振り返る事はない。
誰にも愛されずに不幸だと思っていた自分はもういない。
記憶を取り戻した時、父と母との思い出も甦った。
今ならはっきり言える。
父の名はローフェル。
母の名はアデライト。
私が夜会の度に王妃殿下から着せられていたドレスは、本当は母が用意してくれたものだと、父から聞いた時には自然と涙が流れていた。
父から記憶がない時に母と普通に過ごせていたのかと訊ねると
「大丈夫だ。アデライトの前では普通の母と娘だったよ。安心しなさい」
「それなら良かった」
私はその言葉を聞いて安心した。
そして、父からあの後の彼らのその後を聞かされた。何故、私に知らせなかったのかという事も。
「アデライトはお前のオーウェンに対する言葉を聞いた時、もし、アリスティアが自ら彼らに仕置きしたら、冷徹な女公爵になるのではと懸念していた。だから我々に任された。マリエル、エリーゼ、オーウェンは反省の色を見せなかった。何度もアデライトは彼らに分不相応な物を求めるなと言って訊かせていたが、彼らはそれをよしとしなかった。自ら招いた破滅だよ。アデライトはお前が落ち着いた時に、その事を伝えて欲しいとも言い残した。それは記憶欠乏症が治ったらという意味でだ。ケロイドはお前に謝罪した後、エリーゼの悪事を暴くのに協力してくれた。今は隣国で自分の店を構えて結婚もしているそうだ」
「それを聞いて少し安心しました」
私は一人でも処罰されなかったことにホッとした。
「これを踏まえて、お前はレイラン様と幸せになってほしい。それがアデライトへの供養になる。お前の幸せを願っていた母親への最高の親孝行だよ」
「はい、お父様」
「お母様。早くきてーーー」
小さな男の子が手を振っている。今年3才になる嫡男アスラン。今持っているのは異国からの土産といってレイラン様が買ってきた凧というもの。
風に乗って凧を揚げていると、何だか私の悩み事などあの凧の様に、大きな世界では些細な事だと感じている。
それに長女のミュゼリーナを抱きしめていると、何だか母、アデライトに抱きしめられている様な気がするのは、ミュゼリーナがアデライトに瓜二つだからかも知れない。
小さな子供が増える度に私の幸せも増えていく。
今、お腹の中には4人目の子供がいる。まだ誰にも言っていないから、今夜こっそり、レイラン様に教えよう。彼は今度はどんな顔を見せてくれるのだろう。
私の日常は子供たちと愛する夫と父に囲まれた賑やかな物に変わって行った。
このありふれた愛のある日常をずっと死ぬまで守りたいとそう心に誓ったのだった。
**************
これにて「わたしの婚約者には愛する人がいる」は完結です。
たくさんの方の感想やしおりを頂きありがとうございます。
今、ファンタジー小説を執筆中。暫く更新はお休みさせて頂きます。
尚、今、投稿中の小説を取り下げて、今回の様に新しい小説に甦らせる事を考えています。
その一つが「イザベル。デュルマンの肖像」です。内容が変わってしまうので、途中投稿を断念した小説なのですが、新しく生まれ変わらす為に取り下げます。
それでは、まだまだ暑い夏が続きますが、皆様お体ご自愛ください。
春野オカリナ
今はもう過去を振り返る事はない。
誰にも愛されずに不幸だと思っていた自分はもういない。
記憶を取り戻した時、父と母との思い出も甦った。
今ならはっきり言える。
父の名はローフェル。
母の名はアデライト。
私が夜会の度に王妃殿下から着せられていたドレスは、本当は母が用意してくれたものだと、父から聞いた時には自然と涙が流れていた。
父から記憶がない時に母と普通に過ごせていたのかと訊ねると
「大丈夫だ。アデライトの前では普通の母と娘だったよ。安心しなさい」
「それなら良かった」
私はその言葉を聞いて安心した。
そして、父からあの後の彼らのその後を聞かされた。何故、私に知らせなかったのかという事も。
「アデライトはお前のオーウェンに対する言葉を聞いた時、もし、アリスティアが自ら彼らに仕置きしたら、冷徹な女公爵になるのではと懸念していた。だから我々に任された。マリエル、エリーゼ、オーウェンは反省の色を見せなかった。何度もアデライトは彼らに分不相応な物を求めるなと言って訊かせていたが、彼らはそれをよしとしなかった。自ら招いた破滅だよ。アデライトはお前が落ち着いた時に、その事を伝えて欲しいとも言い残した。それは記憶欠乏症が治ったらという意味でだ。ケロイドはお前に謝罪した後、エリーゼの悪事を暴くのに協力してくれた。今は隣国で自分の店を構えて結婚もしているそうだ」
「それを聞いて少し安心しました」
私は一人でも処罰されなかったことにホッとした。
「これを踏まえて、お前はレイラン様と幸せになってほしい。それがアデライトへの供養になる。お前の幸せを願っていた母親への最高の親孝行だよ」
「はい、お父様」
「お母様。早くきてーーー」
小さな男の子が手を振っている。今年3才になる嫡男アスラン。今持っているのは異国からの土産といってレイラン様が買ってきた凧というもの。
風に乗って凧を揚げていると、何だか私の悩み事などあの凧の様に、大きな世界では些細な事だと感じている。
それに長女のミュゼリーナを抱きしめていると、何だか母、アデライトに抱きしめられている様な気がするのは、ミュゼリーナがアデライトに瓜二つだからかも知れない。
小さな子供が増える度に私の幸せも増えていく。
今、お腹の中には4人目の子供がいる。まだ誰にも言っていないから、今夜こっそり、レイラン様に教えよう。彼は今度はどんな顔を見せてくれるのだろう。
私の日常は子供たちと愛する夫と父に囲まれた賑やかな物に変わって行った。
このありふれた愛のある日常をずっと死ぬまで守りたいとそう心に誓ったのだった。
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これにて「わたしの婚約者には愛する人がいる」は完結です。
たくさんの方の感想やしおりを頂きありがとうございます。
今、ファンタジー小説を執筆中。暫く更新はお休みさせて頂きます。
尚、今、投稿中の小説を取り下げて、今回の様に新しい小説に甦らせる事を考えています。
その一つが「イザベル。デュルマンの肖像」です。内容が変わってしまうので、途中投稿を断念した小説なのですが、新しく生まれ変わらす為に取り下げます。
それでは、まだまだ暑い夏が続きますが、皆様お体ご自愛ください。
春野オカリナ
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