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メディアの正体
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ルドヴィックが喚いているとオースティンは何事もなかったかの様に静かに訊ねた。
「ルドヴィック…?お前はメディアという女が何者なのか知っているのか?」
「何を今更…ローガン侯爵家の令嬢だったではありませんか」
そのおかしな問いにルドヴィックは眉間に皺を寄せる。
「そう言う事になっていたな。だが、お前は事実を確認したのか?本当にあれが侯爵令嬢だと思うのか?」
そう言われ、ルドヴィックは閨でのメディアの様子があまりにも慣れている事に疑問が生じないわけではなかった。
だが、国の届け出には確かに彼女は侯爵令嬢として貴族名鑑にも載っている。
兄オースティンの意図が全くつかめない。
「確かにローガン家に令嬢は生まれた。だが、その子は死んでいるんだよ。ヘクター・ローガン侯爵は死んだ子供の代わりに隣国で娼婦の産んだ女児を取り換えたんだ。侯爵夫人に当時仕えていた使用人に確認している」
「それでは、王妃になれるわけがない。身分を詐称するなんて…」
ルドヴィックは、一体何が起きているのか分からない。どうして、亡き大公家の遺児がパトリックなのか。メディアが本当はローガン家の子供でないのか。何もかもルドヴィックの知らない所で起きている出来事だった。
そして、その全てを兄オースティンは把握している。
亡き父がオースティンを国王に押すはずだ。
自分の無能さを改めて思い知ったルドヴィックは、オースティンの言葉を待っている。
「ヘクター・ローガンは、隣国に大使として赴任中、ローガン家の幼い令嬢は流行病で亡くなった。そこへ接待と称して娼館に行っていたヘクターは美しい娼婦が子供を抱えて困っている事を知った。大層な身請け金を払って子供を引き取ると憔悴していた夫人に死んだ子供が生き返った様に思わせたのだ。夫人は大層その娘を大切にして、育てたそうだ」
「その子供がメディアなのですか」
「そうだ。だから、父ルードリッヒはお前との婚約を反対した。義母が私に押し付けたのは、私が父の庶子だからだ。しかし、そんな罪を犯した者に手を出す事など出来るはずがないだろう。ただでさえ国は我らが曾祖父の代で大きく傾きかけている事は国王になったお前には分かっているはずだ」
そう言われてルドヴィックも頷いた。
国が傾き出している大きな原因は、神殿への多額の寄付だ。
200年ほど前に前王家最後の女王は、現王家の始祖を王配に迎えた。
彼らの間に子供はいなかった。何度も懐妊したが流産したり、死産。生まれても数年でこの世を去るという異常事態に、女王はある提案を王配にしたのだ。
有力な貴族の令嬢から愛妾を娶る事を勧めてしまった。それが悲劇の始まりだった。
仲の良かった二人は、愛妾を迎えた事により、一気に関係が壊れ始めた。既に今は亡きケネス大公家にも後を継がせるべき子供もいたのだから、その子を養子に迎えても良かったのだ。
その選択を誤ってしまった。縺れ拗れた関係は元には戻らず、愛妾が子供を産むと王配は、妻よりも愛妾を優先するようになった。
何度も流産や出産を繰り返した女王の身体は限界で、長く病床に就くことになったのだ。
しかし、愛しい夫は愛妾とその子供の所には行くが、病に伏した自分を顧みる事はなかった。次第に生きる気力も奪われて女王は、若くして亡くなった。
その時に王配は、玉座を手に入れる事になった。ケネス大公が急死して、その遺児の行方も分からないままとなっていた。
神殿側は王家を乗っ取る為に、女王と大公を毒殺したのではないかと疑った。王配は神殿と話し合い、多額の寄付をする代わりに、玉座に座る事を黙認させたのだ。
そして、もう一つの条件は、王の子供は10才になると神殿の承認を得られなければ、正式な王子とは認められない聖約を交わした。
10年経って、オースティンとエレオノーラが姿を現したのには、そういう理由があった。
神殿への寄付と言う名の賂は、国を傾けるには十分な額だった。
その上に、曾祖父時代に食糧を隣国から援助してもらったツケがまだ残っている。
ルードリッヒは国を本来の形に戻し、神殿への寄付の額を減らすことを決断した。
王位を継ぐべきものは本来3人。
一人はオースティン。もう一人はエレオノーラが産んだ子共。そして大公家の遺児だけなのだ。
オースティンは既に死者となった。
エレオノーラとルドヴィックの子は流産した。
残ったのは大公家の遺児パトリックだけとなったのだ。
神殿で匿われていたパトリックを王位につける事で、神殿もようやく譲歩した。
元々前王家は神殿を推奨していた為、関係は密なものだった。
「メディアの産んだ子供の父親は…」
ここに来てようやく現実が見えたのかルドヴィックは、オースティンに答えを求めた。
「近衛の騎士に私達と背格好の似ていた者がいただろう。髪の色や目の色もよく似ていた。何代か前に王女が嫁いだ伯爵家の三男だ。トゥール・バジルと言う名だったか。昔、お前が王子教育の途中で抜け出す時に、替え玉に使った男だよ。偶々、髪や目の色が似ている事からメディアの相手をさせられたらしい」
「兄上は知っていたのですか?」
「ああ、密会している所を見られたから殺そうと馬車の車輪に細工したのだろう」
「何故、教えてくれなかったのです」
「教えて素直にお前はそれを信じたか?疑いを持ってメディアを調べたか?あの時のお前はきっとメディアの言い分だけを信じて私の言葉に耳を貸さなかったはずだ。だから、エレオノーラの諫言にも耳を貸さずにこのような結果になったのだ。私から見れば自業自得だ」
「そうかもしれません。あの頃の私なら兄上やエレオノーラの言葉を信じようとはしなかったでしょうね」
項垂れて肩を震わせながら、ルドヴィックは小さな声で自身の過ちを肯定した。
「議会が承認したなら、その子を私の養子として発表し、子供が成人したら私は王宮を去ります」
「王宮を去るかどうかはその子供に任せる。私から言える事は、子供には良き父親が必要だ。あの子は親の愛情に飢えている。出来るだけ愛情を注いでやってくれ。彼は本当にエレオノーラに良く似ているから…」
ルドヴィックは静かに頷いた。
きっと、オースティンも気付いている。ルドヴィックは、あの過ちの後、一度もメディアに触れていない。
目が覚める様にあれほど恋焦がれていた筈のメディアへの想いは次第に消えていったのだ。代わりにエレオノーラに対するものが、子供を死なせた後ろめたさでも憐憫でも同情でもない感情が支配するようになっていった。
それは、恋情と呼べる物なのかは分からないが、ルドヴィックの中で小さく芽吹いて行った事だけは確かな事。
だから、ルドヴィックはエレオノーラ探した。
やり直そうと考えて……。
しかし、全ての事は手遅れだったのだ。かつてエレオノーラが慕っていたルドヴィックは、メディアに出会って死んでしまったのだ。
「兄上、もう一度だけエレオノーラに会いたいのです。許可をください」
真摯に頭を下げる弟の頼みをオースティンは聞くことにした。
「私の方から伝えるが、彼女が会うかどうかは分からない。期待しないでくれ」
「分かっております。私には非難する資格などないのですから」
それでも、ルドヴィックは期待していた。
もし、会ってくれるなら最後にきちんと別れたいと考えていた。
そうすれば、彼女の問いにも応えられる気がしたのだ。
──あなたは今、幸せですか?
エレオノーラ、君を失ってから私は一度も幸せを感じた事はなかったよ。全てはあの夜に終わったのだと理解できる。
一人よがりな想いをぶつけて苦しめた事を今は彼女に謝りたい。
ルドヴィックは憑き物が取れたような穏やかな表情を浮かべていたのだった。
「ルドヴィック…?お前はメディアという女が何者なのか知っているのか?」
「何を今更…ローガン侯爵家の令嬢だったではありませんか」
そのおかしな問いにルドヴィックは眉間に皺を寄せる。
「そう言う事になっていたな。だが、お前は事実を確認したのか?本当にあれが侯爵令嬢だと思うのか?」
そう言われ、ルドヴィックは閨でのメディアの様子があまりにも慣れている事に疑問が生じないわけではなかった。
だが、国の届け出には確かに彼女は侯爵令嬢として貴族名鑑にも載っている。
兄オースティンの意図が全くつかめない。
「確かにローガン家に令嬢は生まれた。だが、その子は死んでいるんだよ。ヘクター・ローガン侯爵は死んだ子供の代わりに隣国で娼婦の産んだ女児を取り換えたんだ。侯爵夫人に当時仕えていた使用人に確認している」
「それでは、王妃になれるわけがない。身分を詐称するなんて…」
ルドヴィックは、一体何が起きているのか分からない。どうして、亡き大公家の遺児がパトリックなのか。メディアが本当はローガン家の子供でないのか。何もかもルドヴィックの知らない所で起きている出来事だった。
そして、その全てを兄オースティンは把握している。
亡き父がオースティンを国王に押すはずだ。
自分の無能さを改めて思い知ったルドヴィックは、オースティンの言葉を待っている。
「ヘクター・ローガンは、隣国に大使として赴任中、ローガン家の幼い令嬢は流行病で亡くなった。そこへ接待と称して娼館に行っていたヘクターは美しい娼婦が子供を抱えて困っている事を知った。大層な身請け金を払って子供を引き取ると憔悴していた夫人に死んだ子供が生き返った様に思わせたのだ。夫人は大層その娘を大切にして、育てたそうだ」
「その子供がメディアなのですか」
「そうだ。だから、父ルードリッヒはお前との婚約を反対した。義母が私に押し付けたのは、私が父の庶子だからだ。しかし、そんな罪を犯した者に手を出す事など出来るはずがないだろう。ただでさえ国は我らが曾祖父の代で大きく傾きかけている事は国王になったお前には分かっているはずだ」
そう言われてルドヴィックも頷いた。
国が傾き出している大きな原因は、神殿への多額の寄付だ。
200年ほど前に前王家最後の女王は、現王家の始祖を王配に迎えた。
彼らの間に子供はいなかった。何度も懐妊したが流産したり、死産。生まれても数年でこの世を去るという異常事態に、女王はある提案を王配にしたのだ。
有力な貴族の令嬢から愛妾を娶る事を勧めてしまった。それが悲劇の始まりだった。
仲の良かった二人は、愛妾を迎えた事により、一気に関係が壊れ始めた。既に今は亡きケネス大公家にも後を継がせるべき子供もいたのだから、その子を養子に迎えても良かったのだ。
その選択を誤ってしまった。縺れ拗れた関係は元には戻らず、愛妾が子供を産むと王配は、妻よりも愛妾を優先するようになった。
何度も流産や出産を繰り返した女王の身体は限界で、長く病床に就くことになったのだ。
しかし、愛しい夫は愛妾とその子供の所には行くが、病に伏した自分を顧みる事はなかった。次第に生きる気力も奪われて女王は、若くして亡くなった。
その時に王配は、玉座を手に入れる事になった。ケネス大公が急死して、その遺児の行方も分からないままとなっていた。
神殿側は王家を乗っ取る為に、女王と大公を毒殺したのではないかと疑った。王配は神殿と話し合い、多額の寄付をする代わりに、玉座に座る事を黙認させたのだ。
そして、もう一つの条件は、王の子供は10才になると神殿の承認を得られなければ、正式な王子とは認められない聖約を交わした。
10年経って、オースティンとエレオノーラが姿を現したのには、そういう理由があった。
神殿への寄付と言う名の賂は、国を傾けるには十分な額だった。
その上に、曾祖父時代に食糧を隣国から援助してもらったツケがまだ残っている。
ルードリッヒは国を本来の形に戻し、神殿への寄付の額を減らすことを決断した。
王位を継ぐべきものは本来3人。
一人はオースティン。もう一人はエレオノーラが産んだ子共。そして大公家の遺児だけなのだ。
オースティンは既に死者となった。
エレオノーラとルドヴィックの子は流産した。
残ったのは大公家の遺児パトリックだけとなったのだ。
神殿で匿われていたパトリックを王位につける事で、神殿もようやく譲歩した。
元々前王家は神殿を推奨していた為、関係は密なものだった。
「メディアの産んだ子供の父親は…」
ここに来てようやく現実が見えたのかルドヴィックは、オースティンに答えを求めた。
「近衛の騎士に私達と背格好の似ていた者がいただろう。髪の色や目の色もよく似ていた。何代か前に王女が嫁いだ伯爵家の三男だ。トゥール・バジルと言う名だったか。昔、お前が王子教育の途中で抜け出す時に、替え玉に使った男だよ。偶々、髪や目の色が似ている事からメディアの相手をさせられたらしい」
「兄上は知っていたのですか?」
「ああ、密会している所を見られたから殺そうと馬車の車輪に細工したのだろう」
「何故、教えてくれなかったのです」
「教えて素直にお前はそれを信じたか?疑いを持ってメディアを調べたか?あの時のお前はきっとメディアの言い分だけを信じて私の言葉に耳を貸さなかったはずだ。だから、エレオノーラの諫言にも耳を貸さずにこのような結果になったのだ。私から見れば自業自得だ」
「そうかもしれません。あの頃の私なら兄上やエレオノーラの言葉を信じようとはしなかったでしょうね」
項垂れて肩を震わせながら、ルドヴィックは小さな声で自身の過ちを肯定した。
「議会が承認したなら、その子を私の養子として発表し、子供が成人したら私は王宮を去ります」
「王宮を去るかどうかはその子供に任せる。私から言える事は、子供には良き父親が必要だ。あの子は親の愛情に飢えている。出来るだけ愛情を注いでやってくれ。彼は本当にエレオノーラに良く似ているから…」
ルドヴィックは静かに頷いた。
きっと、オースティンも気付いている。ルドヴィックは、あの過ちの後、一度もメディアに触れていない。
目が覚める様にあれほど恋焦がれていた筈のメディアへの想いは次第に消えていったのだ。代わりにエレオノーラに対するものが、子供を死なせた後ろめたさでも憐憫でも同情でもない感情が支配するようになっていった。
それは、恋情と呼べる物なのかは分からないが、ルドヴィックの中で小さく芽吹いて行った事だけは確かな事。
だから、ルドヴィックはエレオノーラ探した。
やり直そうと考えて……。
しかし、全ての事は手遅れだったのだ。かつてエレオノーラが慕っていたルドヴィックは、メディアに出会って死んでしまったのだ。
「兄上、もう一度だけエレオノーラに会いたいのです。許可をください」
真摯に頭を下げる弟の頼みをオースティンは聞くことにした。
「私の方から伝えるが、彼女が会うかどうかは分からない。期待しないでくれ」
「分かっております。私には非難する資格などないのですから」
それでも、ルドヴィックは期待していた。
もし、会ってくれるなら最後にきちんと別れたいと考えていた。
そうすれば、彼女の問いにも応えられる気がしたのだ。
──あなたは今、幸せですか?
エレオノーラ、君を失ってから私は一度も幸せを感じた事はなかったよ。全てはあの夜に終わったのだと理解できる。
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