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護衛はつらいよ

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 俺は領主様の護衛Aです。最近の悩みは、毎晩の領主夫妻の夜の営が激しくて、はっきり言って俺はつらいです。何せ、護衛の詰所は、夫妻の寝室の真下だ。当然、緊急時の対応ができるよう起きてなきゃいけない。

  あの仮面を付けた奥方様との初夜をやり過ごした、領主様は『強者だ』と皆が思うのは無理もない。俺も自信がない。

 しかーし、領主様、毎晩毎晩、やりすぎだろう──

 お陰で、護衛の夜間勤務は、罰ゲームの扱いだ。何せ悶々とした朝を迎えるんだからな──

 そりゃそうだろう?真上の部屋のベッドの軋む音やあの奥様の鈴を転がすような艶かしい喘ぎ声なんかが聞こえてみろ、健全な若い男は、邪な妄想に駆られるってもんだ。当然、自然の摂理で、夜の勤務は自己処理タイム化している現状だ!

 まあ、中には開けちゃいけない扉を開いた奴らもいるけどな。俺は断固、女がいい!


 ここは、辺境地なんで、女の数が男の半分にも満たない。娼館もない。だが隣の領地にはある。

 だから、独身者は、休みの日に隣の領地に行って、欲求を満たしてくる。

 既婚者は、嫁と大抵、朝からベッドインだ!

 お蔭で、今、妊婦急上昇中だ!

 これで領民が増えるから良いこと何だが…



 新婚二日目、俺の夜勤明け、階段から降りて来た奥方様と目が合うと、真っ赤な顔をして、執務室に逃げ込んだ。何かと思ったら、

 「エル様、お願いがございます。あ、あのう、護衛兵士の詰所を隣の部屋に移して頂けないでしょうか?」

 上目遣いで、領主様に真っ赤な顔を向けて、頼み込んでいた。

 『ナイス、奥方様!!』

 その場にいた護衛達は、全員、同じ事を思っていたに違いない。

 「うっ、俺の奥さんが可愛い過ぎる」

 と領主様は、顔を片手で、押さえながら天井を仰いでいた。

 きっと、理性と欲望がせめぎ合っているんだろう。

 でも、やっぱり欲望に負けて、視線で俺達を部屋から追い出した。

 部屋から生々しい、やり取りが聞こえてくる。

 (転職してぇーーーー)

 こんな事を思っているのは、俺だけじゃないだろう。



◇◇◇◇◇◇◇


 後日、護衛の詰所は、隣の物置部屋と入れ替えられ、俺達の悶々とした日々は、終わりを告げた。


 だが、新境地の扉を開いた同僚達から自分の尻を守ることになったのは、後の祭りである。


 
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