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ある男の懺悔
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春の日溜まりの午後、貴族教会の墓地に一人の男が佇んでいた。手には、墓標に手向ける赤い薔薇と白い薔薇を持っていた。
墓標に薔薇など相応しくは無いだろうが、彼の思いが籠っていた。
ーーーー俺が彼女に初めて会ったのは、10歳の頃だった。
親友の妹として、紹介された5歳年下の彼女は、とても愛らしかった。
いつの頃だろう。彼女を一人の女性として意識し始めたのは…
多分、俺の中の矛盾な思いを理解してくれる唯一の存在だと感じたあの時からかも知れない。
俺の家は名門貴族で、祖母は王女だった。俺には、2歳年下の弟と5歳年下の妹がいた。妹は、同い年の彼女と仲が良かったので、よくお互いの家を行き来していた。
元々、祖母が王女なので、王宮にも連れていかれ、王子達ともよく一緒に遊んだものだった。
特に第一王子とは、同い年だった事もあり、親友のセドリックやアンドレらと共に過ごした。
学園の夏期休暇には、妹達も加わり、避暑地や、お互いの領地で楽しい一時を過ごした。
弟は、実直な堅物で、羽目をはずす俺は、両親に「兄より弟の方がよほど兄らしい」とよく叱られた。
優秀な弟がいるから、俺の事はどうでもいいだろう。と少し斜め上の考えで、あの頃は、生きていた。思えば餓鬼だったと今にして思う。
そんな時に、彼女は、「あなたと彼は違う人間だし、皆同じ人だったら気持ち悪いもの」と言って、側にいてくれた。
きっと俺の中では、この時から、彼女は『特別』だったんだ。
俺は、家が堅苦しくて、嫌だった。うちは、代々、外交官を多く輩出した家系で、俺もいずれは跡を継がなくてならなかった。
若かった俺は親の敷いたレールから少し外れたくて、半ば反抗的に学園を卒業した後、18歳で騎士団に入った。
彼女が14歳の時、王宮で開かれたデビュータントの年、妹のエスコートをして、王宮に入った俺は、彼女を見て何だか胸が高鳴った。
王族に挨拶し終えた彼女に声をかけられた時は、心臓がドキドキして、鼓動を彼女に聞かれはしないかと、焦っていた。
彼女とその日、一度だけ踊った。
彼女は、美しくなった。幼い少女は、いつの間にか麗しい乙女に変身を遂げ、淑女の階段を登り始めた。それ以後は、社交界の花と呼ばれ、密かに男達の話題になった。
彼女の周りには、いつも男が群がっていた。誰が彼女に選ばれるのか。常に男達の話題に上がる彼女に内心気が気でなかった。いつ、彼女を他の男に取られるかと。
まだ、第一王子の婚約者も決まっていなかったので、誰も彼女に申し込みが出来なかった。彼女も候補の一人だった。何処か安堵した自分がいた。
第一王子の婚約者が俺の妹に決まった。と王子から告げられた後、素早く両親に彼女と婚約したい旨を伝えた。
両親は、大喜びで、彼女の家に申し込みに行き、了承を得た。
元々、両家の交流は合ったので、直ぐに婚約は整った。
でも、彼女には叱られた。最初に自分の意思を確認しに来て欲しかったと言われ、求婚もしていない自分のヘタレ加減に愛想が尽きた。
彼女からしたら、無理やり家同士の婚約になったのだから、愛されていないと誤解があっても仕方がない。
恋愛経験も無かった俺は、妹に何を贈ったら女性は喜ぶのか、よく相談していた。
その内、俺の趣味は、変わっていると、親友から言われるはめになる。
俺からの贈り物を受け取る時の彼女は、いつも少し困った様な顔をして、次には「ありがとうございます。嬉しいですわ」と返してくれる、そんな彼女を心から愛しいと思えた。
でも、そんな幸福な時間は、長くは続かなかった。
19年前のあの焼けるような暑い日に全てが壊された。
今も何故、彼女をもっと信じなかったのだろう。
彼女を永遠に失う事になったあの事件!
俺は、今日も彼女【ヴィオレット・クリーク】の墓標の前で、懺悔をしている。
ーーー俺の永遠の愛を君に捧げるーーー
墓標に薔薇など相応しくは無いだろうが、彼の思いが籠っていた。
ーーーー俺が彼女に初めて会ったのは、10歳の頃だった。
親友の妹として、紹介された5歳年下の彼女は、とても愛らしかった。
いつの頃だろう。彼女を一人の女性として意識し始めたのは…
多分、俺の中の矛盾な思いを理解してくれる唯一の存在だと感じたあの時からかも知れない。
俺の家は名門貴族で、祖母は王女だった。俺には、2歳年下の弟と5歳年下の妹がいた。妹は、同い年の彼女と仲が良かったので、よくお互いの家を行き来していた。
元々、祖母が王女なので、王宮にも連れていかれ、王子達ともよく一緒に遊んだものだった。
特に第一王子とは、同い年だった事もあり、親友のセドリックやアンドレらと共に過ごした。
学園の夏期休暇には、妹達も加わり、避暑地や、お互いの領地で楽しい一時を過ごした。
弟は、実直な堅物で、羽目をはずす俺は、両親に「兄より弟の方がよほど兄らしい」とよく叱られた。
優秀な弟がいるから、俺の事はどうでもいいだろう。と少し斜め上の考えで、あの頃は、生きていた。思えば餓鬼だったと今にして思う。
そんな時に、彼女は、「あなたと彼は違う人間だし、皆同じ人だったら気持ち悪いもの」と言って、側にいてくれた。
きっと俺の中では、この時から、彼女は『特別』だったんだ。
俺は、家が堅苦しくて、嫌だった。うちは、代々、外交官を多く輩出した家系で、俺もいずれは跡を継がなくてならなかった。
若かった俺は親の敷いたレールから少し外れたくて、半ば反抗的に学園を卒業した後、18歳で騎士団に入った。
彼女が14歳の時、王宮で開かれたデビュータントの年、妹のエスコートをして、王宮に入った俺は、彼女を見て何だか胸が高鳴った。
王族に挨拶し終えた彼女に声をかけられた時は、心臓がドキドキして、鼓動を彼女に聞かれはしないかと、焦っていた。
彼女とその日、一度だけ踊った。
彼女は、美しくなった。幼い少女は、いつの間にか麗しい乙女に変身を遂げ、淑女の階段を登り始めた。それ以後は、社交界の花と呼ばれ、密かに男達の話題になった。
彼女の周りには、いつも男が群がっていた。誰が彼女に選ばれるのか。常に男達の話題に上がる彼女に内心気が気でなかった。いつ、彼女を他の男に取られるかと。
まだ、第一王子の婚約者も決まっていなかったので、誰も彼女に申し込みが出来なかった。彼女も候補の一人だった。何処か安堵した自分がいた。
第一王子の婚約者が俺の妹に決まった。と王子から告げられた後、素早く両親に彼女と婚約したい旨を伝えた。
両親は、大喜びで、彼女の家に申し込みに行き、了承を得た。
元々、両家の交流は合ったので、直ぐに婚約は整った。
でも、彼女には叱られた。最初に自分の意思を確認しに来て欲しかったと言われ、求婚もしていない自分のヘタレ加減に愛想が尽きた。
彼女からしたら、無理やり家同士の婚約になったのだから、愛されていないと誤解があっても仕方がない。
恋愛経験も無かった俺は、妹に何を贈ったら女性は喜ぶのか、よく相談していた。
その内、俺の趣味は、変わっていると、親友から言われるはめになる。
俺からの贈り物を受け取る時の彼女は、いつも少し困った様な顔をして、次には「ありがとうございます。嬉しいですわ」と返してくれる、そんな彼女を心から愛しいと思えた。
でも、そんな幸福な時間は、長くは続かなかった。
19年前のあの焼けるような暑い日に全てが壊された。
今も何故、彼女をもっと信じなかったのだろう。
彼女を永遠に失う事になったあの事件!
俺は、今日も彼女【ヴィオレット・クリーク】の墓標の前で、懺悔をしている。
ーーー俺の永遠の愛を君に捧げるーーー
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