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そして…
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昔の光景を浮かべながら、隣のジョゼフィーネに目をやると、エルリックが「ジョーこのケーキ、美味しいよ。食べてごらん」と言って、親鳥が雛に餌を食べさせる様に「はい、あーん」とせっせと食べさせている。
「エルリック様、こんなところでいけません。不敬ですよ」
と注意しても聞き入れなかった。
「大丈夫だよ。ここには身内しか居ないからね。誰にも見られないよ」
等と、自分達の世界に入っている。父、伯父、曾祖母の事など全く目に入っていない様子のエルリックに半ば呆れた様にダンドーラ侯爵が
「俺達も一応いるのだが」
「別に構わないでしょう。ジョーを甘やかすのは俺の特権です」
「ジョゼフィーネも大変だな。こんな粘着男の妻で」
「義父上だって昔は、こんなことヴィオレット様にしてたでしょう。俺はしたいときにするんです。我慢は身体に毒です」
「時と場合によるだろう?兎に角ジョゼフィーネが困っているからやめろ」
「ハイハイ、男の焼き餅は見苦しいですよ」
等と他愛のない会話を楽しんでいると
「そろそろ、本題に、入ったらどうじゃ?小僧」
『ビクトリア女王』が口火を切った。
「ああ、でも伝えて合ったでしょう。後は婆さん次第だと、決心はついたんですか」
「当の昔に見切りをつけている。今更だ」
「じゃあ、いいんですね。ハウエル侯爵家を潰しても」
その言葉にダンドーラ侯爵、クリーク公爵そしてジョゼフィーネが固まった。
先王時代にハウエル前伯爵家は、現侯爵家に陞爵されている元『ビクトリア女王』の実家だ。
「構わん。この際徹底的にやるとよい。再起が叶わぬ程な。元々、ハウエル領が『水の都』と呼ばれる様になったのは、妾の父と兄が心血を注いだからだ。それを自分の手柄の様に吹聴した挙げ句、国政にまで口出しし出した。目障りだ」
「それだけじゃないよね。裏で色々やってるよね。そのせいで、婆さんの息子は死んで、孫は死にかけた。そして。ヴィオレットは殺された」
「こ…殺された…、お母様は病気で亡くなられたのでは無かったの?」
そこには、哀しい顔をしたジョゼフィーネが目に涙を浮かべていた。
「ジョゼフィーネには、教えるなとあれ程言っただろう」
クリーク公爵が止めに入ったがエルリックと『ビクトリア女王』には、届かなかった。
最早、来るべき断罪劇に向かって、誰もが歩み始めていた。
そう、『ビクトリア女王』の息子アントニオ・アルバトロス大公は、一見病死と公表されたが実は毒殺されたのだ。首謀者一族は、今ものうのうと素知らぬ顔で生きている。
偶々、エドワードの誘いで近隣諸国へ御忍び旅をしていた最中の出来事だった。
国を離れていた為、対処が遅れた。唯一出来たのは生き残ったウィストンを逃す事だけだった。
だからこそ守りたかったのに、二度目は体調を崩し、床に伏していた時に起こった。ウィストンに『毒を盛る』父と同じ手口で犯行に及んだ。
当時、『ビクトリア女王』の指示でそれは行われた様に思わされた。
実際は己の権力を維持し拡大する為、隠れ蓑に使ったのだ。
「エルリック様、こんなところでいけません。不敬ですよ」
と注意しても聞き入れなかった。
「大丈夫だよ。ここには身内しか居ないからね。誰にも見られないよ」
等と、自分達の世界に入っている。父、伯父、曾祖母の事など全く目に入っていない様子のエルリックに半ば呆れた様にダンドーラ侯爵が
「俺達も一応いるのだが」
「別に構わないでしょう。ジョーを甘やかすのは俺の特権です」
「ジョゼフィーネも大変だな。こんな粘着男の妻で」
「義父上だって昔は、こんなことヴィオレット様にしてたでしょう。俺はしたいときにするんです。我慢は身体に毒です」
「時と場合によるだろう?兎に角ジョゼフィーネが困っているからやめろ」
「ハイハイ、男の焼き餅は見苦しいですよ」
等と他愛のない会話を楽しんでいると
「そろそろ、本題に、入ったらどうじゃ?小僧」
『ビクトリア女王』が口火を切った。
「ああ、でも伝えて合ったでしょう。後は婆さん次第だと、決心はついたんですか」
「当の昔に見切りをつけている。今更だ」
「じゃあ、いいんですね。ハウエル侯爵家を潰しても」
その言葉にダンドーラ侯爵、クリーク公爵そしてジョゼフィーネが固まった。
先王時代にハウエル前伯爵家は、現侯爵家に陞爵されている元『ビクトリア女王』の実家だ。
「構わん。この際徹底的にやるとよい。再起が叶わぬ程な。元々、ハウエル領が『水の都』と呼ばれる様になったのは、妾の父と兄が心血を注いだからだ。それを自分の手柄の様に吹聴した挙げ句、国政にまで口出しし出した。目障りだ」
「それだけじゃないよね。裏で色々やってるよね。そのせいで、婆さんの息子は死んで、孫は死にかけた。そして。ヴィオレットは殺された」
「こ…殺された…、お母様は病気で亡くなられたのでは無かったの?」
そこには、哀しい顔をしたジョゼフィーネが目に涙を浮かべていた。
「ジョゼフィーネには、教えるなとあれ程言っただろう」
クリーク公爵が止めに入ったがエルリックと『ビクトリア女王』には、届かなかった。
最早、来るべき断罪劇に向かって、誰もが歩み始めていた。
そう、『ビクトリア女王』の息子アントニオ・アルバトロス大公は、一見病死と公表されたが実は毒殺されたのだ。首謀者一族は、今ものうのうと素知らぬ顔で生きている。
偶々、エドワードの誘いで近隣諸国へ御忍び旅をしていた最中の出来事だった。
国を離れていた為、対処が遅れた。唯一出来たのは生き残ったウィストンを逃す事だけだった。
だからこそ守りたかったのに、二度目は体調を崩し、床に伏していた時に起こった。ウィストンに『毒を盛る』父と同じ手口で犯行に及んだ。
当時、『ビクトリア女王』の指示でそれは行われた様に思わされた。
実際は己の権力を維持し拡大する為、隠れ蓑に使ったのだ。
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