【完結】旦那様、溺愛するのは程々にお願いします♥️仮面の令嬢が辺境伯に嫁いで、幸せになるまで

春野オカリナ

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特別な呼び名

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 静寂が駆け抜けるなかジョゼフィーネは、ふと思った。

 「あのエルリック様?ここは何処でしょう、何だか別世界の様な…」

 そう、ここには侍女も護衛もいない。最初は、曾祖母が内密な話をするために席を外させているのかと思ったが、不自然な程の静寂さ、風もなく、木漏れ日の位置も変わっていない。何の変化もないのだ。まるで時が止まったかの様な空間。

 「ああ、ここは絵画の中の世界だよ」

 その言葉にダンドーラ侯爵、クリーク公爵とジョゼフィーネは驚いた。だが、曾祖母は何の反応も示さなかった。当たり前の光景を楽しんでいる様にも見えた。

 「爺さんが婆さんに息抜きさせるために作った秘密の場所だよ」

 「秘密の場所?」

 「ある国に物に空間魔法を作る魔法使いがいるんだ。爺さんがその人に頼んで作ったもらった物だよ。他にも王宮には、婆さんの安全のための仕掛けがあちこちにあるよ。その一つが『秘密の花園』だよ」

 『秘密の花園』と呼ばれる場所は、かつて『ビクトリア女王』が子供達を密かに育てた場所である。腹心の侍女や護衛騎士しか立ち入れない不思議な場所だ。

 だが、今はない。エドワードが亡くなって空間は、閉ざされたのだ。

 「先程から、陛下に対して不敬な言葉を次々と」

 横から口を出したのは、クリーク公爵だった。

 「婆さんは、婆さんだよ。だって、爺さんの唯一だから、婆さんが望んだらこんなところにはいないさ。爺さんから聞いてないのか?」

 「何をじゃ?グレ…エドワードとはただの主従関係で何もない」

 「今、爺さんの呼び方を間違えたよね」

 「…」

 そのエルリックの言葉に皆、女王の表情が変わるのを見た。

 「どういうことですか?エルリック様」

 「つまり、爺さんは婆さんに自分の真名を教えてたんだよ。特別な人にしか教えない本当の名前をね。だから、爺さんの唯一なんだよ」

 「そんな話をしている場合では、ないだろう」

 『ビクトリア女王』は、話の矛先を折ろうとしたが、エルリックはそうさせなかった。

 「大事な話だよ。ジョゼフィーネにも関係しているし、ダンドーラ侯爵にも関わっているからな」

 エルリックは、真剣な顔をしている。

 「それは解ったが何故、ジョゼフィーネに本当の姿を見せない?ここへ来る時は本来の姿で来ると約束したはずであろう」

 (本来の姿?)

 「俺は、あの姿は好きじゃない」

 「子供みたいな事をぬかすな。いい年をした大人が」

 『ビクトリア女王』とエルリックのやりとりは、まるで本当の孫と祖母の様だとジョゼフィーネは感じていた。

 「私もエルリック様の本当の姿がみたいです」

 と口に出すと「ジョゼフィーネが言うなら」渋々ながら、変身術を解いていった。

 其処に現れた姿に

 「「お、お前…ディル・アン・グレイか?」」

 ダンドーラ侯爵とクリーク公爵が揃って声を上げた。

  【ディル・アン・グレイ】

 それは、史上最年少の魔導調査官として知られる『黒の魔導師』と呼ばれる人の名前だった。

 (どうやら、私の夫には、まだまだ秘密が多そうね)

 ジョゼフィーネは、心の中で呟いた。

 



 

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