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祖父から孫に渡された物

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 エルリックの一族は、元々【神眼】と呼ばれる能力を持っていた。

 この能力は物の本当の名前【真名】を見ることができる。

 【真名】を知られると知った相手に支配され、絶対服従を強いられる。

 例えば【魔眼】だと魅了の魔法を使える。
魅了は、精神に直接干渉する魔法。

 【神眼】は、真名を知られると、絶対服従契約が一方的に成立する。

 魅了は、解くことができるが、真名で支配されたら支配者が解かない限り死ぬまで支配される。

 「エルリック様は、私の事を…」

 その先は、言いたくなかった。

 「ジョー、俺も特別な名前を君に教えただろう?覚えてない?」

 エルリックは、少し苦笑した。確かにジョゼフィーネは、特別な名前をエルリックから教えてもらった。二人だけの秘密の名前を

 「俺は、真名を君に預けた。もし、俺が暴走したら君が止めてくれたらいいよ。俺の全てを君に捧げるよ。例えそれが俺の命だとしてもね。全部あげるよ」

 「命だなんて、そんな…」

 冗談にしても質が悪い。ジョゼフィーネは、顔を青くした。

 エルリックは、そんな彼女を愛しそうに抱き寄せた。

 「心配いらないよ。君を残して死んだりしないから」

 エルリックは、そう言うと今度は頬に口付けを落とした。

 真っ赤になっているジョゼフィーネを抱き締めながら

 「爺さんからこれを預かっている」

 エルリックが『ビクトリア女王』に見せた物はバングルだった。

 だが、その腕輪に彫られた紋章は『ビクトリア女王』の象徴花【マーガレット】だった。

 このバングルは、エドワードにかつて女王が渡した信頼の証だった。

 「何故?これを持っている。エドワードから預かったとは?」

 女王は怪訝そうな表情を見せた。

 「このバングルには、婆さんの状態を示す魔術が施されている。この魔石の色で婆さんが危険に晒されてないか判断できる。もちろんジョゼフィーネのは、俺が持ってる」

 エルリックは、どういう造りになっているのか説明した。

 「まず、石の色が変化する時は、守護する対象者の感情に左右される様になっている。まず、平常は青、赤になると危険、黄色は動揺、白は冷、灰色は悩み事がある時、そして黒これは人を憎んだりする負の感情を表している。爺さんは、離れていても婆さんの心の感情を察知していた」

 「つまり、感情によって危険を察知できるのか?」

 クリーク公爵が問いかけた。

 「その通りです。でもこの石には、予め対象者の血を滴らせ、認識させないと発動しません」

 「じゃあ、どうやって手にしたんだ?」

 この場にいた全員の疑問だっただろう。

 「簡単ですよ。この国には、貴族限定の血縁鑑定記録があるでしょう。それを利用すればいいだけですから」

 【血縁鑑定記録】それは、貴族内の戸籍乗っ取りを防ぐ為に五代前の国王が定めた法律だった。

 生まれた時に一度、10歳に一度、そして成人18歳で一度、後は戦争等に出たりして長期に国内から出たり、不在にした時にするようになっている。

 だから、本物と偽物が入れ替わったりしないし、勿論偽りの申告も許されない。

 だから、この保存機関は厳重なはず、何故?彼がその機関の機密情報を手に入れられるのか?

 一体、何処までこの男の底は計り知れないのだろう。

 クリーク公爵は、ふと考えていた。 

 


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