婚約者を取り替えたいと言ったのは貴方でしょう。今更元に戻りたいなんてもう遅いですよ

春野オカリナ

文字の大きさ
6 / 93

鬼畜令息と撲殺姫

しおりを挟む
 「貴方、私にまでフェロモン使わないでよ。昔と違って制御できるでしょう!」

 「でも、君には何故か効かない。わかる?この意味」

 「わかるわけないでしょう。そんなこと」

 「ふふふ、フェロモンが効かないってこは昔から運命の相手なんだよ」

 「えっ、運命」

 
 私は、乙女心全開に聞き返した。


 (運命の乙女かあ。いい響きよね)


 思わずうっとりしている私に追い討ちをかける彼は、


 「なぁ、俺達中々いい夫婦になると思うんだけど、今度どのくらい相性がいいか試さないか」

 「はぁ?な…何を…」


 何となく雰囲気でわかっているが、声が裏返ってしまった。


 「ククク、本当に飽きない」

 「揶揄ったのね。この鬼畜令息」


 彼を叩こうとした手首を掴まれて、また引き寄せられた。


 「いい加減、暴力で訴えるのはやめろよ。君も女何だから身体に傷でも出来たら取り返しがつかないだろう」


 この言葉に顔を赤らめた。

 いつもそうだ。彼や家族以外の人間は、軍神マルスの加護を持つ私を女扱いしないのだ。

 だから、彼には本当の気持ちを言いたくない。何故か負けた気になるから…


 「まあ、そうなっても俺が貰うから大丈夫だけどな。君はそのままの方が魅力的だよ」


 (ち、近い近い近い、耳元で囁かないで)


 もうきっと私の顔は茹で蛸になっている。

 「と…兎に角近いから離れて」

 彼を押し退けようとしたが、びくともしない。いくら加護があっても使えば彼は遥か彼方まで吹っ飛ぶだろう。うん、絶対そうなる。運が良くても屋根に引っ掛かったり、地面に頭を突っ込むことになるかも…

 私は、大人しく捕縛されておくことにした。

 (何だかいい匂い。何の香りだろう?)

 頭の中枢を刺激されるような匂いを嗅ぎながら、うっとりしている私を抱き締めている彼の腕が強くなったのは気のせいだろう。私の願望と欲望がそうさせたのだと勝手に自己完結した。

 でも、あんまり気持ち良かったのと、昨夜あまり睡眠が取れていなかったのとで、彼の腕の中で爆睡してしまった。

 「君は危機管理が出来ていないね。こんな状態で男の腕の中で眠るなんて、呆れるよホント」

 彼が何か呟いていたが聞かなかった事にした。

 

☆☆☆☆☆☆☆


 目が覚めると自室の寝台の中だった。

 「不味い、寝てしまった。また揶揄われる」

 何たる失態を犯したのだろう。又もや彼に付け入る隙を与えてしまった。

 サイドテーブルにメッセージカードが置いてあり

 『明日、又来ます』

 と書かれていた。


ーーー明日も来るのーっ!

 と思い悩んでも仕方がないので、取り敢えず夕食を食べに食堂に行くことにした。

 (今日の夕食は何かな?)

 等と呑気に考えていた私を次の日後悔する事になるのだった。



しおりを挟む
感想 15

あなたにおすすめの小説

立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~

矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。 隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。 周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。 ※設定はゆるいです。

嘘をありがとう

七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」 おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。 「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」 妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。 「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」

本日、貴方を愛するのをやめます~王妃と不倫した貴方が悪いのですよ?~

なか
恋愛
 私は本日、貴方と離婚します。  愛するのは、終わりだ。    ◇◇◇  アーシアの夫––レジェスは王妃の護衛騎士の任についた途端、妻である彼女を冷遇する。  初めは優しくしてくれていた彼の変貌ぶりに、アーシアは戸惑いつつも、再び振り向いてもらうため献身的に尽くした。  しかし、玄関先に置かれていた見知らぬ本に、謎の日本語が書かれているのを見つける。  それを読んだ瞬間、前世の記憶を思い出し……彼女は知った。  この世界が、前世の記憶で読んだ小説であること。   レジェスとの結婚は、彼が愛する王妃と密通を交わすためのものであり……アーシアは王妃暗殺を目論んだ悪女というキャラで、このままでは断罪される宿命にあると。    全てを思い出したアーシアは覚悟を決める。  彼と離婚するため三年間の準備を整えて、断罪の未来から逃れてみせると……  この物語は、彼女の決意から三年が経ち。  離婚する日から始まっていく  戻ってこいと言われても、彼女に戻る気はなかった。  ◇◇◇  設定は甘めです。  読んでくださると嬉しいです。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません

ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは 私に似た待望の男児だった。 なのに認められず、 不貞の濡れ衣を着せられ、 追い出されてしまった。 実家からも勘当され 息子と2人で生きていくことにした。 * 作り話です * 暇つぶしにどうぞ * 4万文字未満 * 完結保証付き * 少し大人表現あり

わたくしは、すでに離婚を告げました。撤回は致しません

絹乃
恋愛
ユリアーナは夫である伯爵のブレフトから、完全に無視されていた。ブレフトの愛人であるメイドからの嫌がらせも、むしろメイドの肩を持つ始末だ。生来のセンスの良さから、ユリアーナには調度品や服の見立ての依頼がひっきりなしに来る。その収入すらも、ブレフトは奪おうとする。ユリアーナの上品さ、審美眼、それらが何よりも価値あるものだと愚かなブレフトは気づかない。伯爵家という檻に閉じ込められたユリアーナを救ったのは、幼なじみのレオンだった。ユリアーナに離婚を告げられたブレフトは、ようやく妻が素晴らしい女性であったと気づく。けれど、もう遅かった。

お飾り王妃の死後~王の後悔~

ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。 王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。 ウィルベルト王国では周知の事実だった。 しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。 最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。 小説家になろう様にも投稿しています。

【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが

ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。 定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──

【完結】お飾りの妻からの挑戦状

おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。 「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」 しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ…… ◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています ◇全18話で完結予定

処理中です...