5 / 93
キスは突然に
しおりを挟む
思わず突進した私を余裕で交わし、抱き締めたかと思ったら、唇を奪われた。
ーーーゲッ、二度も同じ手に
二度も唇を奪われてしまった。かなりショックである。
◇◇◇
あれは、先月の事だった。丁度王子妃教育が終わって、久しぶりの休日をお忍び下町散策を楽しんでいた時、偶然路地に引っ張り込まれ、いきなり彼に抱き締められた。
何やら不穏な輩に追われていたようで、私を隠れ蓑に使ったのだ。
「やれやれ、やっと行ったか。助かったよ。エミュール嬢、んクリームがついているぞ」
等と親指でクリームを拭い、舌で舐めている。
ーーー何だかエロい
とボーとしていた私は、次の瞬間不意討ちを食らったのだ。
いきなり彼の顔が近づいて来て、口を塞がれた。生暖かい感触と同時に羞恥心が溢れて来た。
「お前、甘いなぁ」
思わず、彼を突き飛ばしてその場を去った。
ーーーこれって、浮気したの?
事故よ事故よ事故ーーー
気持ちを切り替えて次の日から王子妃教育に邁進したのに一月後、婚約者から婚約解消を言われた。
私のあの苦労は何だったんだろう。あの時には、既にナターシャと行くとこまでいっていた訳で、罪悪感を感じていた私が馬鹿みたいだ。
何だか、気が抜けちゃった。
「なあ、エミュール。泣けば?我慢せずに泣いたらいいだろう」
「えっ、私、泣いてる?」
知らない間に涙が溢れていたみたいだ。
「もう我慢しなくてもいいんだから、これからは、もっと自由に生きられる。縛られなくてもいいんだ」
私を抱き締めてくれている彼の胸は温かくて安心出来た。
本当は、辛かった。限界だった。学園生活でも婚約者は浮気癖が酷かった。
何度注意しても止まなかった。学園の裏庭の旧校舎でこっそり泣いてる時に、カーネリアンと出会った。
彼の素顔を知ったのは、この時からだった。
お互い着飾らない話し方が出来て、友人として会っていた。
本当は、いつも思っていた。彼が婚約者だったらいいのにって。
その気持ちに蓋をしながら、王子の婚約者でいる事が更に私に追い討ちをかけた。
やっと、自分の気持ちに素直になれるのに、天の邪鬼な私の声から出たのは、挑発的な言葉だった。
もう多分、蓋から溢れている私の思いはどうにも出来ない。
例え、ナターシャが今の彼を手に入れようとしたら、全力で潰すわ。
ーーーそう草の根も残さないほどね
「ねぇ、エミュール、何か悪い事考えてるの?オーラが黒いよ?さっきまでエロいオーラだったのに、残念」
「オーラ?まさか、私にフェロモン流したの?信じられない、ばっかじゃないの。サイテー」
「チッ」
小さく舌打ちしたのが聞こえた私は、油断大敵だと。強く心に誓った。
ーーー気を抜くと骨抜きにされるから
また、気持ちに蓋をして鍵を二重三重にかけ直した。
この出来事を屋敷の使用人らが
【悲恋の恋人同士が結ばれた】
等と数日、騒ぎ立てることになるのだった。
それは、そうだ二人切りでも扉は少し開けられている。覗いている出歯亀は多かったはずだ。
皆、ロマンス小説の読み過ぎだよ!
ーーーゲッ、二度も同じ手に
二度も唇を奪われてしまった。かなりショックである。
◇◇◇
あれは、先月の事だった。丁度王子妃教育が終わって、久しぶりの休日をお忍び下町散策を楽しんでいた時、偶然路地に引っ張り込まれ、いきなり彼に抱き締められた。
何やら不穏な輩に追われていたようで、私を隠れ蓑に使ったのだ。
「やれやれ、やっと行ったか。助かったよ。エミュール嬢、んクリームがついているぞ」
等と親指でクリームを拭い、舌で舐めている。
ーーー何だかエロい
とボーとしていた私は、次の瞬間不意討ちを食らったのだ。
いきなり彼の顔が近づいて来て、口を塞がれた。生暖かい感触と同時に羞恥心が溢れて来た。
「お前、甘いなぁ」
思わず、彼を突き飛ばしてその場を去った。
ーーーこれって、浮気したの?
事故よ事故よ事故ーーー
気持ちを切り替えて次の日から王子妃教育に邁進したのに一月後、婚約者から婚約解消を言われた。
私のあの苦労は何だったんだろう。あの時には、既にナターシャと行くとこまでいっていた訳で、罪悪感を感じていた私が馬鹿みたいだ。
何だか、気が抜けちゃった。
「なあ、エミュール。泣けば?我慢せずに泣いたらいいだろう」
「えっ、私、泣いてる?」
知らない間に涙が溢れていたみたいだ。
「もう我慢しなくてもいいんだから、これからは、もっと自由に生きられる。縛られなくてもいいんだ」
私を抱き締めてくれている彼の胸は温かくて安心出来た。
本当は、辛かった。限界だった。学園生活でも婚約者は浮気癖が酷かった。
何度注意しても止まなかった。学園の裏庭の旧校舎でこっそり泣いてる時に、カーネリアンと出会った。
彼の素顔を知ったのは、この時からだった。
お互い着飾らない話し方が出来て、友人として会っていた。
本当は、いつも思っていた。彼が婚約者だったらいいのにって。
その気持ちに蓋をしながら、王子の婚約者でいる事が更に私に追い討ちをかけた。
やっと、自分の気持ちに素直になれるのに、天の邪鬼な私の声から出たのは、挑発的な言葉だった。
もう多分、蓋から溢れている私の思いはどうにも出来ない。
例え、ナターシャが今の彼を手に入れようとしたら、全力で潰すわ。
ーーーそう草の根も残さないほどね
「ねぇ、エミュール、何か悪い事考えてるの?オーラが黒いよ?さっきまでエロいオーラだったのに、残念」
「オーラ?まさか、私にフェロモン流したの?信じられない、ばっかじゃないの。サイテー」
「チッ」
小さく舌打ちしたのが聞こえた私は、油断大敵だと。強く心に誓った。
ーーー気を抜くと骨抜きにされるから
また、気持ちに蓋をして鍵を二重三重にかけ直した。
この出来事を屋敷の使用人らが
【悲恋の恋人同士が結ばれた】
等と数日、騒ぎ立てることになるのだった。
それは、そうだ二人切りでも扉は少し開けられている。覗いている出歯亀は多かったはずだ。
皆、ロマンス小説の読み過ぎだよ!
13
あなたにおすすめの小説
嘘をありがとう
七辻ゆゆ
恋愛
「まあ、なんて図々しいのでしょう」
おっとりとしていたはずの妻は、辛辣に言った。
「要するにあなた、貴族でいるために政略結婚はする。けれど女とは別れられない、ということですのね?」
妻は言う。女と別れなくてもいい、仕事と嘘をついて会いに行ってもいい。けれど。
「必ず私のところに帰ってきて、子どもをつくり、よい夫、よい父として振る舞いなさい。神に嘘をついたのだから、覚悟を決めて、その嘘を突き通しなさいませ」
【完結】仲の良かったはずの婚約者に一年無視され続け、婚約解消を決意しましたが
ゆらゆらぎ
恋愛
エルヴィラ・ランヴァルドは第二王子アランの幼い頃からの婚約者である。仲睦まじいと評判だったふたりは、今では社交界でも有名な冷えきった仲となっていた。
定例であるはずの茶会もなく、婚約者の義務であるはずのファーストダンスも踊らない
そんな日々が一年と続いたエルヴィラは遂に解消を決意するが──
立派な王太子妃~妃の幸せは誰が考えるのか~
矢野りと
恋愛
ある日王太子妃は夫である王太子の不貞の現場を目撃してしまう。愛している夫の裏切りに傷つきながらも、やり直したいと周りに助言を求めるが‥‥。
隠れて不貞を続ける夫を見続けていくうちに壊れていく妻。
周りが気づいた時は何もかも手遅れだった…。
※設定はゆるいです。
地獄の業火に焚べるのは……
緑谷めい
恋愛
伯爵家令嬢アネットは、17歳の時に2つ年上のボルテール侯爵家の長男ジェルマンに嫁いだ。親の決めた政略結婚ではあったが、小さい頃から婚約者だった二人は仲の良い幼馴染だった。表面上は何の問題もなく穏やかな結婚生活が始まる――けれど、ジェルマンには秘密の愛人がいた。学生時代からの平民の恋人サラとの関係が続いていたのである。
やがてアネットは男女の双子を出産した。「ディオン」と名付けられた男児はジェルマンそっくりで、「マドレーヌ」と名付けられた女児はアネットによく似ていた。
※ 全5話完結予定
〈完結〉だってあなたは彼女が好きでしょう?
ごろごろみかん。
恋愛
「だってあなたは彼女が好きでしょう?」
その言葉に、私の婚約者は頷いて答えた。
「うん。僕は彼女を愛している。もちろん、きみのことも」
貴方が側妃を望んだのです
cyaru
恋愛
「君はそれでいいのか」王太子ハロルドは言った。
「えぇ。勿論ですわ」婚約者の公爵令嬢フランセアは答えた。
誠の愛に気がついたと言われたフランセアは微笑んで答えた。
※2022年6月12日。一部書き足しました。
※架空のお話です。現実世界の話ではありません。
史実などに基づいたものではない事をご理解ください。
※話の都合上、残酷な描写がありますがそれがざまぁなのかは受け取り方は人それぞれです。
表現的にどうかと思う回は冒頭に注意喚起を書き込むようにしますが有無は作者の判断です。
※更新していくうえでタグは幾つか増えます。
※作者都合のご都合主義です。
※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。
※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります)
※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。
お飾り王妃の死後~王の後悔~
ましゅぺちーの
恋愛
ウィルベルト王国の王レオンと王妃フランチェスカは白い結婚である。
王が愛するのは愛妾であるフレイアただ一人。
ウィルベルト王国では周知の事実だった。
しかしある日王妃フランチェスカが自ら命を絶ってしまう。
最後に王宛てに残された手紙を読み王は後悔に苛まれる。
小説家になろう様にも投稿しています。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる