婚約者を取り替えたいと言ったのは貴方でしょう。今更元に戻りたいなんてもう遅いですよ

春野オカリナ

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キスは突然に

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 思わず突進した私を余裕で交わし、抱き締めたかと思ったら、唇を奪われた。


 ーーーゲッ、二度も同じ手に


 二度も唇を奪われてしまった。かなりショックである。


◇◇◇


 あれは、先月の事だった。丁度王子妃教育が終わって、久しぶりの休日をお忍び下町散策を楽しんでいた時、偶然路地に引っ張り込まれ、いきなり彼に抱き締められた。

 何やら不穏な輩に追われていたようで、私を隠れ蓑に使ったのだ。


 「やれやれ、やっと行ったか。助かったよ。エミュール嬢、んクリームがついているぞ」


 等と親指でクリームを拭い、舌で舐めている。

 ーーー何だかエロい

 とボーとしていた私は、次の瞬間不意討ちを食らったのだ。

 いきなり彼の顔が近づいて来て、口を塞がれた。生暖かい感触と同時に羞恥心が溢れて来た。


 「お前、甘いなぁ」


 思わず、彼を突き飛ばしてその場を去った。


 ーーーこれって、浮気したの?


 事故よ事故よ事故ーーー



 気持ちを切り替えて次の日から王子妃教育に邁進したのに一月後、婚約者から婚約解消を言われた。

 私のあの苦労は何だったんだろう。あの時には、既にナターシャと行くとこまでいっていた訳で、罪悪感を感じていた私が馬鹿みたいだ。

 何だか、気が抜けちゃった。


 「なあ、エミュール。泣けば?我慢せずに泣いたらいいだろう」

 「えっ、私、泣いてる?」


 知らない間に涙が溢れていたみたいだ。


 「もう我慢しなくてもいいんだから、これからは、もっと自由に生きられる。縛られなくてもいいんだ」


 私を抱き締めてくれている彼の胸は温かくて安心出来た。


 本当は、辛かった。限界だった。学園生活でも婚約者は浮気癖が酷かった。

 何度注意しても止まなかった。学園の裏庭の旧校舎でこっそり泣いてる時に、カーネリアンと出会った。

 彼の素顔を知ったのは、この時からだった。

 お互い着飾らない話し方が出来て、友人として会っていた。

 本当は、いつも思っていた。彼が婚約者だったらいいのにって。

 その気持ちに蓋をしながら、王子の婚約者でいる事が更に私に追い討ちをかけた。

 やっと、自分の気持ちに素直になれるのに、天の邪鬼な私の声から出たのは、挑発的な言葉だった。

 もう多分、蓋から溢れている私の思いはどうにも出来ない。

 例え、ナターシャが今の彼を手に入れようとしたら、全力で潰すわ。



 ーーーそう草の根も残さないほどね


 「ねぇ、エミュール、何か悪い事考えてるの?オーラが黒いよ?さっきまでエロいオーラだったのに、残念」

 「オーラ?まさか、私にフェロモン流したの?信じられない、ばっかじゃないの。サイテー」

 「チッ」


 小さく舌打ちしたのが聞こえた私は、油断大敵だと。強く心に誓った。


ーーー気を抜くと骨抜きにされるから


 また、気持ちに蓋をして鍵を二重三重にかけ直した。


 この出来事を屋敷の使用人らが

  【悲恋の恋人同士が結ばれた】

 等と数日、騒ぎ立てることになるのだった。


 それは、そうだ二人切りでも扉は少し開けられている。覗いている出歯亀は多かったはずだ。

 皆、ロマンス小説の読み過ぎだよ!
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