婚約者を取り替えたいと言ったのは貴方でしょう。今更元に戻りたいなんてもう遅いですよ

春野オカリナ

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破綻した婚約

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 既に三竦みの様な状態になっている私達にヨゼフが

 「緊急の用事だとアトラス殿下が」

 そう告げた瞬間、殿下とザイールが居間に入って来た。

 「な、何をやっている」

 まるで、浮気の現場を押さえられた様な顔のカーネリアン

 勝ち誇った顔をしたナターシャ

 そして、婚約者を寝とられ怒り心頭の私

 誰から見てもそんな風にしか見えないだろう。

 二人の顔は何とも言えないそんな表情を浮かべていた。

 「ち、違う、何度も言うが誤解だ」

 「なら、何故ナターシャ・ゲイル伯爵令嬢が君の屋敷にいるんだ」

 「それを言うならナターシャは殿下の婚約者になったはずだろう」

 「婚約破棄している。王家も認めている」

 「だとしても、俺はエミュール・シュトラウスと別れない」

 「どっちにしても、私は公爵家に帰るわ」

 「あら、ちょうどいいわ。負け犬さんがいなくなったから続きを楽しみましょうよ」

 「放せ、エミュール、きちんと冷静に話そう」

 「話す事なんてないわ。私は忙しいの」

 私は、優柔不断なカーネリアンの態度に苛立ちを隠せなかった。

 居間を後にした私を彼が追ってきた。

 「ま、待ってくれ。お願いだからきちんと話そう」

 彼に捕まれた腕を無理に放し

 「だから、話す事はないと言っているでしょう」

 「一体、何が気に入らないんだ。君が望むように振る舞ったはずだろう」

 その言葉に私は更に怒りを覚えた。

 振る舞った。そう演技していたって言うのね。

 だから、貴方は告げない。私が欲しい言葉を

 『愛している』

 その一言を言わない貴方に私が何を信じられると言うのだろう。

 「ねえ、カーネリアンそんな女なんか相手にしないでこっちに来て」

 甘ったるい声で男を誘うナターシャを振り払って、カーネリアンは私を腕に抱こうとした。

 彼の胸を押した瞬間三人ともエントランスに転がった。

 「すまない」

 そう言って手を出した先に愉悦に見える顔をしたナターシャがいた。

 「大丈夫か、エミュール怪我はない?」

 心配そうに私を起こしたのはアトラス殿下だった。

 私よりナターシャを優先したカーネリアンから

 「危ないだろう。いくらなんでもやり過ぎだ。ここは君の家ではない、屋敷の主として君のやり方には我慢が出来ない」

 「分かったわ、二度と会わない」

 「ふふ、ほらね貴女は誰にも愛しされないのよ」

 ナターシャのその言葉に私の何かが反応した。

 それは魔女が私にかけた呪いの言葉だった。

 私の中の何かは私を突き動かしていた。

 ーーーそれを壊せ!


 と、ザイールの腰の剣を取り、それに突き立てた。

 私はメアリージェーン王女の肖像画に剣を突き立てたのだ。
 
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