婚約者を取り替えたいと言ったのは貴方でしょう。今更元に戻りたいなんてもう遅いですよ

春野オカリナ

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戦況

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 次の朝、伝令の早馬が到着し、戦況報告を聞いた俺達は全員その場に立ち尽くした。

 我が国有利であった戦況は先行部隊の判断ミスから一転、最悪の状態となっていた。

 辺境伯が守っている砦は今や籠城戦状態で、長雨の為に物資を運んでいた先行部隊が足場の悪い近道を通り抜けようとして崖崩れに巻き込まれた。

 部隊は半数となった。

 迂回すれば日数がかかると踏んで近道を選んだ事が辺境の砦に大きな大打撃を与えてしまう結果となったのだ。

 迂回すれば三日かかる為、そのまま推し進めるか判断に迷うところではある。

 それまでに砦が持つかどうか瀬戸際なのだ。

 「このまま進もう。俺に考えがある」

 カーネリアンはザイールとカイルにそう言った。

 カーネリアンには結界の能力がある。結界で足場を固めながら進めば何とかなる。

 因みに部隊全部に結界を敷くとかなりの体力を消耗する。

 だが、もう一人ドガーズ侯爵家の次男ライザスが一緒に出兵している。

 カーネリアンは二人なら結界を張りながら山道を難なく走り抜けられると考えていた。

 この部隊が山道を通りすぎる迄の間、結界を張り続けられるかどうか

 問題は、ライザスにそれだけの体力があるかどうか

 彼が騎士に混じって練習をしている風景を見たことがなかった。

 カーネリアンと違いドガーズ家の本邸でぬくぬくと胡座をかいていた彼に果たしてどれだけの能力があるのだろう。

 結局、部隊を二つに分け、エミュール、ザイールらは迂回する事に決まる。

 カーネリアンの疑問が確信に変わったのは、二時間後に彼が張った結界が徐々に効力を失っていく。

 カーネリアンが密かに別の結界を敷きながら何とか部隊が山道を通り過ぎた頃、山から大きな土砂の嵐が降ってきた。

 「危なかった。二手に別れていなければどちらかがあれ・・の下敷きになっているところだ」

 「全く間一髪でした」

 ホッと一息ついたのもつかの間、目指す砦迄はここから5㎞程の所にある。
 
 もう、陽は傾きかけている。

 夜営をとるよりも先に進むことを優先し、砦に向かった。

 着いた時には陽は既に沈んでいて、当たり一面焼け野原の様な状態。

 恐らく火気を用いた戦法で人の焼け焦げた匂いが充満している。

 戦場が初めての人間には耐え兼ねる者が続出した。

 砦の中に入れば死体と怪我人があちこちに散らばっている。

 先行部隊の生き残りも到着していたが、半分の物資では到底補いきれるものではなかった。

 「兎に角、現状を辺境伯に説明願おう」
 
 カーネリアンとカイルらは辺境伯の元へ急いだ。

 一方、別動隊を指揮していたエミュール達にも異変が生じていた。
 
 

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