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6.シーリス
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「カリム、面白いこと考えてるわね。」
唐突にそう言われた。不意の出来事で理解が遅れている。
「どういう意味だ?」
「そのままの意味よ。」
余計に分からない。
「余計に分からないなんて考えられても、こういう事としか言えないわよ。」
まさか…、僕の考えてる事が分かるのか…?
「その通りよ。眷属にだけ使えるのよ。最初、自害しようとしたカリムから剣を奪った時にも見せたと思うのだけれど。」
あの時か…。確かに速すぎるとは思ったが、そういう事だったのか。
というか、それは話してもいい事なのか?
「ええ、だから話したのよ。一つ忠告するとしたら、余計なことは考えない事ね。命が惜しいのなら特に。」
詮索するな。って事か…。
「それよりも、カリムにはやるべき事があるんじゃないの? リリスを雇った相手、黒幕に復讐とかね。」
「記憶を読めるなら分かるだろ。無理なんだよ。」
「記憶を読める訳じゃないわ、考えを読めるだけ。」
「…説明すると長くなるぞ。」
まず、何から話すべきか…。
「確認だけど、僕の名前は知ってるんだよな。」
「ええ、カリムでしょ。」
「違う、フルネームだよ。」
「ああ。カリム・シーリスね。」
やっぱり、知ってるんだな。僕でさえ、つい最近知った事なのに。
「そうシーリス。現勇者アルマ・シーリスの息子だ。」
シエルキューテは露骨に驚いていた。
「カリム…。勇者の子供なのに、弱いのね…。」
…。
「話を戻すぞ。簡潔に言うと、僕は現勇者と愛人の間に出来た子供だ。その事が気に食わずに勇者の正妻である第二王女が母と双子の兄を暗殺した。だが暗殺者は僕の存在に気が付かずに殺しそびれ、僕だけが生き延びた。」
要所要所端折って僕の見解も混じえたが、大体はこんな感じだ。
「ふーん。それで今回、暗殺者を送り付けたのも第二王女と思っているのかしら。」
「そうだ、間違いなく第二王女と考えている。」
「根拠はあるのかしら。」
「僕を殺すくらい恨んでるやつなんて第二王女くらいしか思いつかない。時期的にも辻褄が合うしね。」
「正体が分かってるのに何故やり返さないの?」
「王族兼勇者の正妻だぞ。護衛と勇者と僕のような勇者の子孫達。そいつらを何とかしなくちゃならない。僕一人じゃ無理だ。」
そう、一人じゃ無理だ。だがどうだろう。シエルキューテみたいな強力な魔物を味方に──
「嫌よ。面倒臭いわ。」
「そ、そんな。一考の余地くらいは…。」
「無いわ。」
なら、復讐は無理だな。シエルキューテから話を持ち出された時はちょっと期待したんだけど…。
「私は面倒くさいと言っただけよ。私はね。」
と言うと…?
「私以外にも魔物は居るわ。紹介程度ならしてもいいわよ。着いて来なさい。」
このチャンスを逃すつもりは無い。首を縦に振りシエルキューテの後ろをピッタリと着いて走った。
◇□◇□◇□◇
もう三十分程は走り続けていると思うが、どのくらい深くダンジョンを潜ったのだろうか。
それと、知能のない魔物が一切襲って来なかった。吸血鬼になった事と関係があるのだろうか?
「そろそろ着くわ。」
すると目の前には、眩く光る水晶達とエメラルドグリーンに透き通った地底湖の織り成す幻想的な空間が広がっていた。
「綺麗だな。」
「何をしにここまで来たのか、忘れた訳じゃないでしょう。」
ああ、正直な所まだ決意は固まっていない。けど、顔も知らない兄と母、育ての親である叔母さんを殺し、僕を殺そうとした屑がまだのんびりと気楽に生きている。そして、まだ僕の命を狙っているかもしれない。
このまま安全圏からやられっぱなしというのは癪に障る。
例え進む先が地獄だろうと。やり返せる、復讐出来るチャンスが目の前にあるのなら。迷わず僕は地獄を選ぶ。
「ふふっ。面白いわね。そこまでの復讐心がありながら、ほんの少し前までは諦めていたなんて。」
「ああ、それはな。吸血鬼になる前に一度止められたんだよ。勇者に。文字通り手も足も出なくて手加減された上に慈悲までかけられた。結構腕に自身があったんだけど、安い剣も安いプライドも完全にへし折られたんだ。」
「それは仕方のないことよ。カリムは弱いのだから。」
…。
「で、魔物は何処に居るんだ?」
「ここは溜まり場みたいな所よ。待っていればいずれ来るはずよ。」
いずれか…。それまで暇だな。
「そうね…。久しぶりにここへ来たのだから、沐浴でも済ませようかしら。カリムも来なさい。」
沐浴か。…ん…沐浴か?
「あの、シエルキューテ…様。僕はあちらでして来ますね。」
そそくさと退場しようとしたその時、首根っこを捕まれ止められる。
「ダメよ。眷属なのだから主人の身体くらい洗いなさい。」
冷や汗が止まらない…。この魔物に羞恥心は無いのか?
「あの…、見られるの恥ずかしいんですけど…。」
「その程度の事、我慢なさい。」
その後、抵抗虚しく全裸にひん剥かれた。
唐突にそう言われた。不意の出来事で理解が遅れている。
「どういう意味だ?」
「そのままの意味よ。」
余計に分からない。
「余計に分からないなんて考えられても、こういう事としか言えないわよ。」
まさか…、僕の考えてる事が分かるのか…?
「その通りよ。眷属にだけ使えるのよ。最初、自害しようとしたカリムから剣を奪った時にも見せたと思うのだけれど。」
あの時か…。確かに速すぎるとは思ったが、そういう事だったのか。
というか、それは話してもいい事なのか?
「ええ、だから話したのよ。一つ忠告するとしたら、余計なことは考えない事ね。命が惜しいのなら特に。」
詮索するな。って事か…。
「それよりも、カリムにはやるべき事があるんじゃないの? リリスを雇った相手、黒幕に復讐とかね。」
「記憶を読めるなら分かるだろ。無理なんだよ。」
「記憶を読める訳じゃないわ、考えを読めるだけ。」
「…説明すると長くなるぞ。」
まず、何から話すべきか…。
「確認だけど、僕の名前は知ってるんだよな。」
「ええ、カリムでしょ。」
「違う、フルネームだよ。」
「ああ。カリム・シーリスね。」
やっぱり、知ってるんだな。僕でさえ、つい最近知った事なのに。
「そうシーリス。現勇者アルマ・シーリスの息子だ。」
シエルキューテは露骨に驚いていた。
「カリム…。勇者の子供なのに、弱いのね…。」
…。
「話を戻すぞ。簡潔に言うと、僕は現勇者と愛人の間に出来た子供だ。その事が気に食わずに勇者の正妻である第二王女が母と双子の兄を暗殺した。だが暗殺者は僕の存在に気が付かずに殺しそびれ、僕だけが生き延びた。」
要所要所端折って僕の見解も混じえたが、大体はこんな感じだ。
「ふーん。それで今回、暗殺者を送り付けたのも第二王女と思っているのかしら。」
「そうだ、間違いなく第二王女と考えている。」
「根拠はあるのかしら。」
「僕を殺すくらい恨んでるやつなんて第二王女くらいしか思いつかない。時期的にも辻褄が合うしね。」
「正体が分かってるのに何故やり返さないの?」
「王族兼勇者の正妻だぞ。護衛と勇者と僕のような勇者の子孫達。そいつらを何とかしなくちゃならない。僕一人じゃ無理だ。」
そう、一人じゃ無理だ。だがどうだろう。シエルキューテみたいな強力な魔物を味方に──
「嫌よ。面倒臭いわ。」
「そ、そんな。一考の余地くらいは…。」
「無いわ。」
なら、復讐は無理だな。シエルキューテから話を持ち出された時はちょっと期待したんだけど…。
「私は面倒くさいと言っただけよ。私はね。」
と言うと…?
「私以外にも魔物は居るわ。紹介程度ならしてもいいわよ。着いて来なさい。」
このチャンスを逃すつもりは無い。首を縦に振りシエルキューテの後ろをピッタリと着いて走った。
◇□◇□◇□◇
もう三十分程は走り続けていると思うが、どのくらい深くダンジョンを潜ったのだろうか。
それと、知能のない魔物が一切襲って来なかった。吸血鬼になった事と関係があるのだろうか?
「そろそろ着くわ。」
すると目の前には、眩く光る水晶達とエメラルドグリーンに透き通った地底湖の織り成す幻想的な空間が広がっていた。
「綺麗だな。」
「何をしにここまで来たのか、忘れた訳じゃないでしょう。」
ああ、正直な所まだ決意は固まっていない。けど、顔も知らない兄と母、育ての親である叔母さんを殺し、僕を殺そうとした屑がまだのんびりと気楽に生きている。そして、まだ僕の命を狙っているかもしれない。
このまま安全圏からやられっぱなしというのは癪に障る。
例え進む先が地獄だろうと。やり返せる、復讐出来るチャンスが目の前にあるのなら。迷わず僕は地獄を選ぶ。
「ふふっ。面白いわね。そこまでの復讐心がありながら、ほんの少し前までは諦めていたなんて。」
「ああ、それはな。吸血鬼になる前に一度止められたんだよ。勇者に。文字通り手も足も出なくて手加減された上に慈悲までかけられた。結構腕に自身があったんだけど、安い剣も安いプライドも完全にへし折られたんだ。」
「それは仕方のないことよ。カリムは弱いのだから。」
…。
「で、魔物は何処に居るんだ?」
「ここは溜まり場みたいな所よ。待っていればいずれ来るはずよ。」
いずれか…。それまで暇だな。
「そうね…。久しぶりにここへ来たのだから、沐浴でも済ませようかしら。カリムも来なさい。」
沐浴か。…ん…沐浴か?
「あの、シエルキューテ…様。僕はあちらでして来ますね。」
そそくさと退場しようとしたその時、首根っこを捕まれ止められる。
「ダメよ。眷属なのだから主人の身体くらい洗いなさい。」
冷や汗が止まらない…。この魔物に羞恥心は無いのか?
「あの…、見られるの恥ずかしいんですけど…。」
「その程度の事、我慢なさい。」
その後、抵抗虚しく全裸にひん剥かれた。
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