9 / 44
第9話 初めての喧嘩 ―前編―
しおりを挟む
入社式の翌日の朝、ヒカリは会社に行く準備をしていた。今日からいよいよ本格的に、魔女になるための生活が始まるので、何をするにもワクワクしてしまう。
寮の部屋に鍵をかけ駐輪場に行くと、シホの原付バイクはすでに無かった。ヒカリとしては早めに寮を出発したつもりだったので、それよりも早くシホが寮を出発していることに驚いた。
会社に到着して玄関を開けると、シホはもう制服姿で受付の席に座っていた。
「おはようございます!」
ヒカリはシホに挨拶をした。
「あ、おはよう!」
シホも優しく笑いながら挨拶を返してくれた。
「シホさん、いつもこの時間には出社してるんですか?」
ヒカリは自分の出社時間が遅いのかと心配になって質問した。
「そうでもないよ。日によってまちまち。遅い時はギリギリの時もあるし」
シホはそう言うと手で口を隠しながらあくびをした。きっと、いろいろと疲れが溜まっているのだろうと察した。ヒカリは更衣室で制服に着替えて受付の席に座った。始業時間になったら声をかけるとシホに言われたので、その間は筆記用具を準備して待機することにした。
始業時間となり、シホがヒカリの方を向いて座ったので、ヒカリもシホの方に体を向けて座った。
「さてと。今日からヒカリちゃんには受付の仕事をしてもらいます! お客さんがいない間に一通りやることを教えちゃうね!」
「はい! よろしくお願いします!」
シホが受付の仕事について説明を始めた。ヒカリは初めての仕事だったのですごく緊張していたが、シホの説明と仕事内容をまとめた資料がすごくわかりやすかったので、理解が深まっていくのと同時に緊張も少しずつ解けていった。
「ざっとこんなところかな! また、わからないところがあったら、いつでも聞いてね!」
シホは笑顔でそう言った。
「はい! シホさんの説明が上手だったので、すごく理解しやすかったです!」
ヒカリはシホの上手な説明に感動してそう言った。
「そう? それならよかった!」
シホも褒められて嬉しそうだ。
「それじゃ、お客さんがくるまでは、こっちの仕事をやっていこうか!」
ヒカリがはいと返事をすると、シホはすぐにキリっとした表情に戻って仕事を始めた。
「ヒカリ、ちょっといいか?」
エドがヒカリに声をかける。ヒカリはこのタイミングでエドの方に行っていいのかわからず、とっさにシホの顔を見た。
「うん。大丈夫だよ」
シホはそう言うとすぐに仕事を再開した。
「じゃ、ちょっと行ってきます」
ヒカリはシホにひと声かけてから席を立ち、少し後ろにいたエドの前に立った。
「魔女見習いになって早々悪いんだけど。見てのとおり相談所の仕事が多すぎて、皆手が回らない状態なんだ」
エドは深刻そうな表情で言った。
「うん。皆すごく忙しそうだね」
ヒカリもエドに言われる前から、なんとなく皆が忙しそうなのは気づいていた。
「俺もしばらくの間、出張の仕事が入ってしまったから、ヒカリの魔法指導ができそうにないんだ。誰かにお願いしたいけど、皆余裕がない状態でさ。本当にごめん」
エドは申し訳なさそうな表情で言った。
「そうなんだ。……仕方ないよね。わかった」
ヒカリはそれが仕方ない状況だとはわかっていても、魔女になるための修行ができなくなってしまうことに、歯がゆさを感じた。
「まずは、マリーからも言われたとおり、仕事を頑張ってくれ」
エドはそう言うと去っていった。ヒカリは落ち込みながら受付の席に戻る。
「なんかあったの?」
シホは元気がないことを察してか、すぐに心配して聞いてきた。
「しばらく仕事が忙しくて魔法の指導ができないから、今は仕事を頑張ってくれって言われました」
ヒカリは少し弱々しく言う。
「早く魔法の修行したいよね」
シホも同じ魔女見習いだからなのか、的確にヒカリの気持ちを言い当てた。
「はい」
ヒカリは元気のないまま返事をした。
「でも、魔女になるためには、仕事をするのも大切だってマリーさんも言ってるし、お互い頑張ろう!」
シホは元気のないヒカリを励まそうとしてくれているのだろう。ヒカリはそれでも元気が出なかったので、今の状況は仕方ないから少しの間、我慢するしかないとどうにか思い込もうとした。
その日から数日間、仕事ばかりする日々が続いた。ROSEの皆はずっとバタバタと余裕がない様子で、とても魔女修行をお願いできるような状態ではないとわかってはいた。だけど、魔女になるためにここへきたのに、やっていることは相談所の受付業務ばかり。ヒカリは徐々にやる気を失っていった。
そんなある日、仕事を終わらせたヒカリとシホは一緒に会社を出た。ヒカリは会社の玄関を出るなり、すぐに立ち止まった。
「……シホさん、ちょっと話が――」
ヒカリがシホに話しかけた瞬間、玄関が開いてベルがシホに声をかけた。
「シホさん! マリーさんが呼んでます!」
ベルは急いでいるようだった。
「ヒカリちゃん、ごめん。先に帰ってて。呼ばれたから行ってくる」
シホはそう言うと急ぎ足で会社に入っていく。ヒカリは少し悲しい気持ちがわき上がってきたが、ぐっとこらえて帰宅することにした。
寮に帰ったヒカリは、部屋の中で体育座りをして少し頭を抱えていた。
「私何してるんだろう……。魔女になるためにここへきたのに、やっていることは仕事だけ……。仕事やってるだけじゃ……。魔女になんてなれっこないよ……」
ヒカリは歯がゆくて涙が出そうになったがこらえる。するとその時、ヒカリの部屋をノックする音が聞こえてきた。
寮の部屋に鍵をかけ駐輪場に行くと、シホの原付バイクはすでに無かった。ヒカリとしては早めに寮を出発したつもりだったので、それよりも早くシホが寮を出発していることに驚いた。
会社に到着して玄関を開けると、シホはもう制服姿で受付の席に座っていた。
「おはようございます!」
ヒカリはシホに挨拶をした。
「あ、おはよう!」
シホも優しく笑いながら挨拶を返してくれた。
「シホさん、いつもこの時間には出社してるんですか?」
ヒカリは自分の出社時間が遅いのかと心配になって質問した。
「そうでもないよ。日によってまちまち。遅い時はギリギリの時もあるし」
シホはそう言うと手で口を隠しながらあくびをした。きっと、いろいろと疲れが溜まっているのだろうと察した。ヒカリは更衣室で制服に着替えて受付の席に座った。始業時間になったら声をかけるとシホに言われたので、その間は筆記用具を準備して待機することにした。
始業時間となり、シホがヒカリの方を向いて座ったので、ヒカリもシホの方に体を向けて座った。
「さてと。今日からヒカリちゃんには受付の仕事をしてもらいます! お客さんがいない間に一通りやることを教えちゃうね!」
「はい! よろしくお願いします!」
シホが受付の仕事について説明を始めた。ヒカリは初めての仕事だったのですごく緊張していたが、シホの説明と仕事内容をまとめた資料がすごくわかりやすかったので、理解が深まっていくのと同時に緊張も少しずつ解けていった。
「ざっとこんなところかな! また、わからないところがあったら、いつでも聞いてね!」
シホは笑顔でそう言った。
「はい! シホさんの説明が上手だったので、すごく理解しやすかったです!」
ヒカリはシホの上手な説明に感動してそう言った。
「そう? それならよかった!」
シホも褒められて嬉しそうだ。
「それじゃ、お客さんがくるまでは、こっちの仕事をやっていこうか!」
ヒカリがはいと返事をすると、シホはすぐにキリっとした表情に戻って仕事を始めた。
「ヒカリ、ちょっといいか?」
エドがヒカリに声をかける。ヒカリはこのタイミングでエドの方に行っていいのかわからず、とっさにシホの顔を見た。
「うん。大丈夫だよ」
シホはそう言うとすぐに仕事を再開した。
「じゃ、ちょっと行ってきます」
ヒカリはシホにひと声かけてから席を立ち、少し後ろにいたエドの前に立った。
「魔女見習いになって早々悪いんだけど。見てのとおり相談所の仕事が多すぎて、皆手が回らない状態なんだ」
エドは深刻そうな表情で言った。
「うん。皆すごく忙しそうだね」
ヒカリもエドに言われる前から、なんとなく皆が忙しそうなのは気づいていた。
「俺もしばらくの間、出張の仕事が入ってしまったから、ヒカリの魔法指導ができそうにないんだ。誰かにお願いしたいけど、皆余裕がない状態でさ。本当にごめん」
エドは申し訳なさそうな表情で言った。
「そうなんだ。……仕方ないよね。わかった」
ヒカリはそれが仕方ない状況だとはわかっていても、魔女になるための修行ができなくなってしまうことに、歯がゆさを感じた。
「まずは、マリーからも言われたとおり、仕事を頑張ってくれ」
エドはそう言うと去っていった。ヒカリは落ち込みながら受付の席に戻る。
「なんかあったの?」
シホは元気がないことを察してか、すぐに心配して聞いてきた。
「しばらく仕事が忙しくて魔法の指導ができないから、今は仕事を頑張ってくれって言われました」
ヒカリは少し弱々しく言う。
「早く魔法の修行したいよね」
シホも同じ魔女見習いだからなのか、的確にヒカリの気持ちを言い当てた。
「はい」
ヒカリは元気のないまま返事をした。
「でも、魔女になるためには、仕事をするのも大切だってマリーさんも言ってるし、お互い頑張ろう!」
シホは元気のないヒカリを励まそうとしてくれているのだろう。ヒカリはそれでも元気が出なかったので、今の状況は仕方ないから少しの間、我慢するしかないとどうにか思い込もうとした。
その日から数日間、仕事ばかりする日々が続いた。ROSEの皆はずっとバタバタと余裕がない様子で、とても魔女修行をお願いできるような状態ではないとわかってはいた。だけど、魔女になるためにここへきたのに、やっていることは相談所の受付業務ばかり。ヒカリは徐々にやる気を失っていった。
そんなある日、仕事を終わらせたヒカリとシホは一緒に会社を出た。ヒカリは会社の玄関を出るなり、すぐに立ち止まった。
「……シホさん、ちょっと話が――」
ヒカリがシホに話しかけた瞬間、玄関が開いてベルがシホに声をかけた。
「シホさん! マリーさんが呼んでます!」
ベルは急いでいるようだった。
「ヒカリちゃん、ごめん。先に帰ってて。呼ばれたから行ってくる」
シホはそう言うと急ぎ足で会社に入っていく。ヒカリは少し悲しい気持ちがわき上がってきたが、ぐっとこらえて帰宅することにした。
寮に帰ったヒカリは、部屋の中で体育座りをして少し頭を抱えていた。
「私何してるんだろう……。魔女になるためにここへきたのに、やっていることは仕事だけ……。仕事やってるだけじゃ……。魔女になんてなれっこないよ……」
ヒカリは歯がゆくて涙が出そうになったがこらえる。するとその時、ヒカリの部屋をノックする音が聞こえてきた。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】奇跡のおくすり~追放された薬師、実は王家の隠し子でした~
いっぺいちゃん
ファンタジー
薬草と静かな生活をこよなく愛する少女、レイナ=リーフィア。
地味で目立たぬ薬師だった彼女は、ある日貴族の陰謀で“冤罪”を着せられ、王都の冒険者ギルドを追放されてしまう。
「――もう、草とだけ暮らせればいい」
絶望の果てにたどり着いた辺境の村で、レイナはひっそりと薬を作り始める。だが、彼女の薬はどんな難病さえ癒す“奇跡の薬”だった。
やがて重病の王子を治したことで、彼女の正体が王家の“隠し子”だと判明し、王都からの使者が訪れる――
「あなたの薬に、国を救ってほしい」
導かれるように再び王都へと向かうレイナ。
医療改革を志し、“薬師局”を創設して仲間たちと共に奔走する日々が始まる。
薬草にしか心を開けなかった少女が、やがて王国の未来を変える――
これは、一人の“草オタク”薬師が紡ぐ、やさしくてまっすぐな奇跡の物語。
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる