53 / 215
メイドの私
しおりを挟む
一応、夫であるディランから変装している私に、妻のエレノアが裏切ったら私に報告して欲しいと頼まれた。
喉が限界過ぎてずっと黙り込む私。
「ああ、すまない。君に色々要求してしまって。
クロエの事をくれぐれも頼む。俺もこれからはもっとクロエの様子を見に来るようにするよ。
ああ、そろそろ知人との約束の時間だ。
じゃあ、これで失礼する。クロエ、すぐまた来るからな。」
ディランはクロエの頭を優しくなでて、また外出していった。
何と言うか、根腐れした男ではないという事は分かった。
まあ、拗らせちゃってるけど。
けどな~、私無茶苦茶にあの人に言われるからな。
う~ん、やっぱり面倒だからあんまり関わらないでおこうっと。
そして、私はクロエの勉学に情熱を注いだ。
まずは基礎の文字を書けるように。
自分の名前、物の名称、感情、言い回しと言う名の文法をそれぞれ覚えてもらう。
幼児用の教材を買ってきたけど、クロエの物覚えがとても良いのであっという間に簡単な筆談が出来るようになった。
これで、クロエとのコミュニケーションはすこぶる円滑になった。
勉強中、ディランが不意打ちで入ってくるのがスリルというか恐怖だったけど。
メイド姿の時はひたすら無言でクロエに教え、ディランの会話には裏声で最低限の言語で乗り切る。
メイド変装の状態でディランに加えてエリザベスも加わると更に地獄だった。
2人してエレノアである私の悪口大会だ。
やれ、顔がけばいだの。
やれ、ドレスが下品だの。
やれ、生意気だのと言いたい放題だ。
クロエがまだ口話を獲得していなから良いけど、嫌な雰囲気は感じ取っているはずだ。
クロエだけは私がメイドに変装しているエレノアつまり義姉と分かっている。
こんな話聞きたくもないし、兄が幼稚な悪口を言う姿は見たくもないだろう。
私が何を言われようと構わないが、これじゃあクロエが不憫に思える。
クロエは毎食の食事をしっかり食べ、栄養がやっと体の隅々に行き渡ったようで顔色が良くなり、肌や爪、髪の毛に艶も出てきた。
棒のように細い手足も少しずつふっくらと肉付いてきた。
目に力が入り、活気が出てきたとはいえ、エリザベスを見るとトラウマがあるため体が固くなり緊張状態になる。
エリザベス、もう来てほしくないんだけど。
ああ、エリザベスとディランはやっぱりそういう仲になるってことか。
話も合うみたいだし、巨乳を揺らして近づいてくるエリザベスに好意は持ってる感じよね。
あの人は巨乳好きなんだわ。うん、絶対そうだ。
途中ディランが退席すると、エリザベスは勝ち誇った顔をして私にけしかけてくる。
流石に、私がいる手前クロエに手を加えることはしないが、攻撃対象は今や私だ。
負けへんけどな。
「あ~あ、今日もディラン様とお話が盛り上がっちゃったわ。
奥様のエレノアは男探しに夢中なのか不在だし、もうこの家とディラン様は私の手中って事よね。
あなたも運が悪いわね。そんな雇い主に仕えるなんて。
あんな生意気を言わなければ私がこの屋敷のメイドとして継続して雇ってあげても良かったんだけどお。」
「…。」
またメンドクサイ絡み来たで。
「絶対む~り~。誰があんたみたいなメイド雇うかっつーの。
今更後悔しても遅いんだから。
クロエも最近元気になったみたいだけど、調子に乗らないでね。
私の気次第でどうとでも出来るんだから。」
私もお返しに言ってあげよう。
「あんたのメイクもおかしいけど、頭の中はもっとおかしいなあ。
頭の血流、全部その巨乳に流れたん?
そのうち牧場行きですか?
美味しい牛乳作るためにえらい頑張りはるねえ。
尊敬するわあ。」
おかーはん風に言ってやった。
嫌味っていうのはな、こうやって上品に言うもんなんや。
エリザベスは一瞬何を言われたか分からずポカンとしている。
「え?私の事を尊敬?乳牛?牧場?
ちょっと…あんた私の事馬鹿にしてるでしょ!?」
反応おっそ。
エリザベスは顔を真っ赤にして闘牛のような目つきで私に殴りかかってこようとする。
「殴るの?今の私、クロエのお世話をしてディラン様に信頼してもらってるんだよね。
エレノア様の言う事は信じないだろうけど、私が殴られた場所を見せて、あんたにやられたって言ったらディラン様はどう思うでしょうね?
あなたの事を疑うくらいはするんじゃない?」
「な、何よ!メイドのくせに脅し?」
「疑われて色々厄介なのは誰でしょう?
お世話の手間賃とクロエの生活費全部ちょろまかして懐に入れてるの知ってるんだから。」
カマをかけてやった。
「う…。」エリザベスの動きが止まった。
図星だな。やっぱりそうだと思った。
ディランのシスコン度合いとクロエの生活レベル考えたらこんな感じが妥当でしょ。
「どうする?
クロエにかかった費用の領収書見せてって言われたら。
ディラン様に言ってみよっかな~。」
「ちょっと、余計なことしないでよ!!」
「じゃあ、あんたはもうこの屋敷に来ないで!
クロエの成長に邪魔でしかないんだから。」
「そ、それは出来ないわよ。もう、話になんないわ。帰る!」
エリザベスは小走りで帰って行った。
これで少しはここに来る頻度は少なくなるだろう。
クロエは青ざめた顔で固まっていた。
エリザベスが見えなくなると私の所へ駆け寄り心配そうな顔で私の顔を撫でてくる。
「ごめんね、怖かったね。もう大丈夫。」クロエを安心させる。
クロエが撫でてくれた手のひらは不思議と気持ちいい感覚がした。
何と言うか、乾いた植物に水を与えているような、潤うようなそんな感覚だった。
喉が限界過ぎてずっと黙り込む私。
「ああ、すまない。君に色々要求してしまって。
クロエの事をくれぐれも頼む。俺もこれからはもっとクロエの様子を見に来るようにするよ。
ああ、そろそろ知人との約束の時間だ。
じゃあ、これで失礼する。クロエ、すぐまた来るからな。」
ディランはクロエの頭を優しくなでて、また外出していった。
何と言うか、根腐れした男ではないという事は分かった。
まあ、拗らせちゃってるけど。
けどな~、私無茶苦茶にあの人に言われるからな。
う~ん、やっぱり面倒だからあんまり関わらないでおこうっと。
そして、私はクロエの勉学に情熱を注いだ。
まずは基礎の文字を書けるように。
自分の名前、物の名称、感情、言い回しと言う名の文法をそれぞれ覚えてもらう。
幼児用の教材を買ってきたけど、クロエの物覚えがとても良いのであっという間に簡単な筆談が出来るようになった。
これで、クロエとのコミュニケーションはすこぶる円滑になった。
勉強中、ディランが不意打ちで入ってくるのがスリルというか恐怖だったけど。
メイド姿の時はひたすら無言でクロエに教え、ディランの会話には裏声で最低限の言語で乗り切る。
メイド変装の状態でディランに加えてエリザベスも加わると更に地獄だった。
2人してエレノアである私の悪口大会だ。
やれ、顔がけばいだの。
やれ、ドレスが下品だの。
やれ、生意気だのと言いたい放題だ。
クロエがまだ口話を獲得していなから良いけど、嫌な雰囲気は感じ取っているはずだ。
クロエだけは私がメイドに変装しているエレノアつまり義姉と分かっている。
こんな話聞きたくもないし、兄が幼稚な悪口を言う姿は見たくもないだろう。
私が何を言われようと構わないが、これじゃあクロエが不憫に思える。
クロエは毎食の食事をしっかり食べ、栄養がやっと体の隅々に行き渡ったようで顔色が良くなり、肌や爪、髪の毛に艶も出てきた。
棒のように細い手足も少しずつふっくらと肉付いてきた。
目に力が入り、活気が出てきたとはいえ、エリザベスを見るとトラウマがあるため体が固くなり緊張状態になる。
エリザベス、もう来てほしくないんだけど。
ああ、エリザベスとディランはやっぱりそういう仲になるってことか。
話も合うみたいだし、巨乳を揺らして近づいてくるエリザベスに好意は持ってる感じよね。
あの人は巨乳好きなんだわ。うん、絶対そうだ。
途中ディランが退席すると、エリザベスは勝ち誇った顔をして私にけしかけてくる。
流石に、私がいる手前クロエに手を加えることはしないが、攻撃対象は今や私だ。
負けへんけどな。
「あ~あ、今日もディラン様とお話が盛り上がっちゃったわ。
奥様のエレノアは男探しに夢中なのか不在だし、もうこの家とディラン様は私の手中って事よね。
あなたも運が悪いわね。そんな雇い主に仕えるなんて。
あんな生意気を言わなければ私がこの屋敷のメイドとして継続して雇ってあげても良かったんだけどお。」
「…。」
またメンドクサイ絡み来たで。
「絶対む~り~。誰があんたみたいなメイド雇うかっつーの。
今更後悔しても遅いんだから。
クロエも最近元気になったみたいだけど、調子に乗らないでね。
私の気次第でどうとでも出来るんだから。」
私もお返しに言ってあげよう。
「あんたのメイクもおかしいけど、頭の中はもっとおかしいなあ。
頭の血流、全部その巨乳に流れたん?
そのうち牧場行きですか?
美味しい牛乳作るためにえらい頑張りはるねえ。
尊敬するわあ。」
おかーはん風に言ってやった。
嫌味っていうのはな、こうやって上品に言うもんなんや。
エリザベスは一瞬何を言われたか分からずポカンとしている。
「え?私の事を尊敬?乳牛?牧場?
ちょっと…あんた私の事馬鹿にしてるでしょ!?」
反応おっそ。
エリザベスは顔を真っ赤にして闘牛のような目つきで私に殴りかかってこようとする。
「殴るの?今の私、クロエのお世話をしてディラン様に信頼してもらってるんだよね。
エレノア様の言う事は信じないだろうけど、私が殴られた場所を見せて、あんたにやられたって言ったらディラン様はどう思うでしょうね?
あなたの事を疑うくらいはするんじゃない?」
「な、何よ!メイドのくせに脅し?」
「疑われて色々厄介なのは誰でしょう?
お世話の手間賃とクロエの生活費全部ちょろまかして懐に入れてるの知ってるんだから。」
カマをかけてやった。
「う…。」エリザベスの動きが止まった。
図星だな。やっぱりそうだと思った。
ディランのシスコン度合いとクロエの生活レベル考えたらこんな感じが妥当でしょ。
「どうする?
クロエにかかった費用の領収書見せてって言われたら。
ディラン様に言ってみよっかな~。」
「ちょっと、余計なことしないでよ!!」
「じゃあ、あんたはもうこの屋敷に来ないで!
クロエの成長に邪魔でしかないんだから。」
「そ、それは出来ないわよ。もう、話になんないわ。帰る!」
エリザベスは小走りで帰って行った。
これで少しはここに来る頻度は少なくなるだろう。
クロエは青ざめた顔で固まっていた。
エリザベスが見えなくなると私の所へ駆け寄り心配そうな顔で私の顔を撫でてくる。
「ごめんね、怖かったね。もう大丈夫。」クロエを安心させる。
クロエが撫でてくれた手のひらは不思議と気持ちいい感覚がした。
何と言うか、乾いた植物に水を与えているような、潤うようなそんな感覚だった。
7
あなたにおすすめの小説
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜
京
恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。
右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。
そんな乙女ゲームのようなお話。
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
ご褒美人生~転生した私の溺愛な?日常~
紅子
恋愛
魂の修行を終えた私は、ご褒美に神様から丈夫な身体をもらい最後の転生しました。公爵令嬢に生まれ落ち、素敵な仮婚約者もできました。家族や仮婚約者から溺愛されて、幸せです。ですけど、神様。私、お願いしましたよね?寿命をベッドの上で迎えるような普通の目立たない人生を送りたいと。やりすぎですよ💢神様。
毎週火・金曜日00:00に更新します。→完結済みです。毎日更新に変更します。
R15は、念のため。
自己満足の世界に付き、合わないと感じた方は読むのをお止めください。設定ゆるゆるの思い付き、ご都合主義で書いているため、深い内容ではありません。さらっと読みたい方向けです。矛盾点などあったらごめんなさい(>_<)
『身長185cmの私が異世界転移したら、「ちっちゃくて可愛い」って言われました!? 〜女神ルミエール様の気まぐれ〜』
透子(とおるこ)
恋愛
身長185cmの女子大生・三浦ヨウコ。
「ちっちゃくて可愛い女の子に、私もなってみたい……」
そんな密かな願望を抱えながら、今日もバイト帰りにクタクタになっていた――はずが!
突然現れたテンションMAXの女神ルミエールに「今度はこの子に決〜めた☆」と宣言され、理由もなく異世界に強制転移!?
気づけば、森の中で虫に囲まれ、何もわからずパニック状態!
けれど、そこは“3メートル超えの巨人たち”が暮らす世界で――
「なんて可憐な子なんだ……!」
……え、私が“ちっちゃくて可愛い”枠!?
これは、背が高すぎて自信が持てなかった女子大生が、異世界でまさかのモテ無双(?)!?
ちょっと変わった視点で描く、逆転系・異世界ラブコメ、ここに開幕☆
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
【完結】目覚めたら男爵家令息の騎士に食べられていた件
三谷朱花
恋愛
レイーアが目覚めたら横にクーン男爵家の令息でもある騎士のマットが寝ていた。曰く、クーン男爵家では「初めて契った相手と結婚しなくてはいけない」らしい。
※アルファポリスのみの公開です。
理想の男性(ヒト)は、お祖父さま
たつみ
恋愛
月代結奈は、ある日突然、見知らぬ場所に立っていた。
そこで行われていたのは「正妃選びの儀」正妃に側室?
王太子はまったく好みじゃない。
彼女は「これは夢だ」と思い、とっとと「正妃」を辞退してその場から去る。
彼女が思いこんだ「夢設定」の流れの中、帰った屋敷は超アウェイ。
そんな中、現れたまさしく「理想の男性」なんと、それは彼女のお祖父さまだった!
彼女を正妃にするのを諦めない王太子と側近魔術師サイラスの企み。
そんな2人から彼女守ろうとする理想の男性、お祖父さま。
恋愛よりも家族愛を優先する彼女の日常に否応なく訪れる試練。
この世界で彼女がくだす決断と、肝心な恋愛の結末は?
◇◇◇◇◇設定はあくまでも「貴族風」なので、現実の貴族社会などとは異なります。
本物の貴族社会ではこんなこと通用しない、ということも多々あります。
R-Kingdom_1
他サイトでも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる