前職キャバ嬢、異世界に来たら悪女になっていた。あんまり変わらないのかな?

ミミリン

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メイドの私

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一応、夫であるディランから変装している私に、妻のエレノアが裏切ったら私に報告して欲しいと頼まれた。


喉が限界過ぎてずっと黙り込む私。


「ああ、すまない。君に色々要求してしまって。
クロエの事をくれぐれも頼む。俺もこれからはもっとクロエの様子を見に来るようにするよ。
ああ、そろそろ知人との約束の時間だ。
じゃあ、これで失礼する。クロエ、すぐまた来るからな。」


ディランはクロエの頭を優しくなでて、また外出していった。



何と言うか、根腐れした男ではないという事は分かった。

まあ、拗らせちゃってるけど。


けどな~、私無茶苦茶にあの人に言われるからな。

う~ん、やっぱり面倒だからあんまり関わらないでおこうっと。


そして、私はクロエの勉学に情熱を注いだ。



まずは基礎の文字を書けるように。
自分の名前、物の名称、感情、言い回しと言う名の文法をそれぞれ覚えてもらう。

幼児用の教材を買ってきたけど、クロエの物覚えがとても良いのであっという間に簡単な筆談が出来るようになった。

これで、クロエとのコミュニケーションはすこぶる円滑になった。


勉強中、ディランが不意打ちで入ってくるのがスリルというか恐怖だったけど。


メイド姿の時はひたすら無言でクロエに教え、ディランの会話には裏声で最低限の言語で乗り切る。


メイド変装の状態でディランに加えてエリザベスも加わると更に地獄だった。


2人してエレノアである私の悪口大会だ。

やれ、顔がけばいだの。

やれ、ドレスが下品だの。

やれ、生意気だのと言いたい放題だ。

クロエがまだ口話を獲得していなから良いけど、嫌な雰囲気は感じ取っているはずだ。

クロエだけは私がメイドに変装しているエレノアつまり義姉と分かっている。

こんな話聞きたくもないし、兄が幼稚な悪口を言う姿は見たくもないだろう。


私が何を言われようと構わないが、これじゃあクロエが不憫に思える。


クロエは毎食の食事をしっかり食べ、栄養がやっと体の隅々に行き渡ったようで顔色が良くなり、肌や爪、髪の毛に艶も出てきた。


棒のように細い手足も少しずつふっくらと肉付いてきた。

目に力が入り、活気が出てきたとはいえ、エリザベスを見るとトラウマがあるため体が固くなり緊張状態になる。


エリザベス、もう来てほしくないんだけど。


ああ、エリザベスとディランはやっぱりそういう仲になるってことか。

話も合うみたいだし、巨乳を揺らして近づいてくるエリザベスに好意は持ってる感じよね。

あの人は巨乳好きなんだわ。うん、絶対そうだ。



途中ディランが退席すると、エリザベスは勝ち誇った顔をして私にけしかけてくる。


流石に、私がいる手前クロエに手を加えることはしないが、攻撃対象は今や私だ。


負けへんけどな。


「あ~あ、今日もディラン様とお話が盛り上がっちゃったわ。
奥様のエレノアは男探しに夢中なのか不在だし、もうこの家とディラン様は私の手中って事よね。
あなたも運が悪いわね。そんな雇い主に仕えるなんて。
あんな生意気を言わなければ私がこの屋敷のメイドとして継続して雇ってあげても良かったんだけどお。」


「…。」

またメンドクサイ絡み来たで。


「絶対む~り~。誰があんたみたいなメイド雇うかっつーの。
今更後悔しても遅いんだから。
クロエも最近元気になったみたいだけど、調子に乗らないでね。
私の気次第でどうとでも出来るんだから。」


私もお返しに言ってあげよう。

「あんたのメイクもおかしいけど、頭の中はもっとおかしいなあ。
頭の血流、全部その巨乳に流れたん?
そのうち牧場行きですか?
美味しい牛乳作るためにえらい頑張りはるねえ。
尊敬するわあ。」




おかーはん風に言ってやった。

嫌味っていうのはな、こうやって上品に言うもんなんや。


エリザベスは一瞬何を言われたか分からずポカンとしている。


「え?私の事を尊敬?乳牛?牧場?
ちょっと…あんた私の事馬鹿にしてるでしょ!?」



反応おっそ。


エリザベスは顔を真っ赤にして闘牛のような目つきで私に殴りかかってこようとする。


「殴るの?今の私、クロエのお世話をしてディラン様に信頼してもらってるんだよね。
エレノア様の言う事は信じないだろうけど、私が殴られた場所を見せて、あんたにやられたって言ったらディラン様はどう思うでしょうね?
あなたの事を疑うくらいはするんじゃない?」


「な、何よ!メイドのくせに脅し?」


「疑われて色々厄介なのは誰でしょう?
お世話の手間賃とクロエの生活費全部ちょろまかして懐に入れてるの知ってるんだから。」


カマをかけてやった。


「う…。」エリザベスの動きが止まった。

図星だな。やっぱりそうだと思った。

ディランのシスコン度合いとクロエの生活レベル考えたらこんな感じが妥当でしょ。


「どうする?
クロエにかかった費用の領収書見せてって言われたら。
ディラン様に言ってみよっかな~。」


「ちょっと、余計なことしないでよ!!」


「じゃあ、あんたはもうこの屋敷に来ないで!
クロエの成長に邪魔でしかないんだから。」


「そ、それは出来ないわよ。もう、話になんないわ。帰る!」

エリザベスは小走りで帰って行った。

これで少しはここに来る頻度は少なくなるだろう。


クロエは青ざめた顔で固まっていた。


エリザベスが見えなくなると私の所へ駆け寄り心配そうな顔で私の顔を撫でてくる。


「ごめんね、怖かったね。もう大丈夫。」クロエを安心させる。


クロエが撫でてくれた手のひらは不思議と気持ちいい感覚がした。

何と言うか、乾いた植物に水を与えているような、潤うようなそんな感覚だった。



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