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私はエレノア。
最近、役所での手続きが多くて困ってる。
そろそろ現場に行かないと把握しきれない。
自分の事業もデイビット様の領地もレイズ君の領地も全部私にかかっているのでてんてこ舞いだ。
来週あたり、視察に行こう。
イリスもキャッシーさんも屋敷にいるからクロエは任せられる。
ああ、キャッシーさん雇って良かったあ。めっちゃ助かるわ~。
屋敷に帰る途中、どこかで見たことのある男性とすれ違った。
あ…あの人…。
「ヘイリーさん?」
デイビット様の彼氏だ。
「あ、あなたはデイビットの…奥方だね?」
「死後離縁しました。
まあ、マックレーン家には今もお世話になっていますけど。」
「少し私の耳にもあなたの噂は入ってきます。
…お元気ですか?」
この人と話すのは初めてだ。
私が愛した夫の愛する人。
複雑だけど、この人のおかげでデイビット様は安らかに死を迎えられた。
私が埋められなかった願いを埋めてくれた人だ。
別に憎くもなんともない。
「ええ、元気にやってます。
ヘイリーさんは今は王都に?」
「…いいえ、手続きのために来ただけです。
デイビットから遺産の一部を頂きました。
あなたも了承してくださったと。
感謝しています。
そのお金で故郷に帰って商売をしたいと計画していまして。」
「ああ、そうなんですね。
私の遺産ではありません。
デイビット様のお気持ちです。」
「もう、この国に戻ることはないでしょう。
デイビットの墓参りも最後になりました。
寂しいけど、残してくれたお金で次に進もうと思います。
もう男性に買われるような仕事もしなくて済む。
デイビットに出会えたのは幸運だったし、もう彼以外を愛することもないでしょう。」
「いつも、お花をありがとうございました。
あっ、そうだ、
ヘイリーさんお渡ししたいものがあるので1時間後にこの先の公園で待ち合わせてもらえますか?」
「はあ、まあ、構いませんよ。」
急いで屋敷に一度戻り、デイビット様の形見の一つをバッグに入れて公園に向かった。
「すみません、お待たせして。」
「大丈夫です。急いでくださったんでしょう?
デイビットがいつもあなたの事を教えてくれました。
見かけとは裏腹に、聡明で実直で何もかもが美しい女性だって。
あなたの存在にデイビットは救われていました。
デイビットの最期に立ち会わせてくれたのもあなたですよね。
それもデイビットが感謝していました。」
「そんな…。でも、初めてお話しするけど、デイビット様のお相手があなたで良かった。
あ、これ、デイビット様のつけていた香水です。
もう販売されていないみたいで。
あなたにも持っていて欲しいんです。
きっとデイビット様が喜ぶだろうし。」
香水の入った袋をそっと渡す。
「…ありがとう。
もう、お会いすることはないでしょう。
…お元気で。」
「あなたも、お元気でいてください。
さようなら。」
もう会う事はない。
不思議な縁だったけど会えてよかった。
デイビット様の愛した人。
色んな感情が溢れて涙が流れてきた。
デイビット様に残された者同士、何かを感じたのかもしれない。
少し大きな声でもう一度言った。
「さようなら!お元気で!」
ヘイリーさんは振り向かず駅の方まで歩いて行った。
最近、役所での手続きが多くて困ってる。
そろそろ現場に行かないと把握しきれない。
自分の事業もデイビット様の領地もレイズ君の領地も全部私にかかっているのでてんてこ舞いだ。
来週あたり、視察に行こう。
イリスもキャッシーさんも屋敷にいるからクロエは任せられる。
ああ、キャッシーさん雇って良かったあ。めっちゃ助かるわ~。
屋敷に帰る途中、どこかで見たことのある男性とすれ違った。
あ…あの人…。
「ヘイリーさん?」
デイビット様の彼氏だ。
「あ、あなたはデイビットの…奥方だね?」
「死後離縁しました。
まあ、マックレーン家には今もお世話になっていますけど。」
「少し私の耳にもあなたの噂は入ってきます。
…お元気ですか?」
この人と話すのは初めてだ。
私が愛した夫の愛する人。
複雑だけど、この人のおかげでデイビット様は安らかに死を迎えられた。
私が埋められなかった願いを埋めてくれた人だ。
別に憎くもなんともない。
「ええ、元気にやってます。
ヘイリーさんは今は王都に?」
「…いいえ、手続きのために来ただけです。
デイビットから遺産の一部を頂きました。
あなたも了承してくださったと。
感謝しています。
そのお金で故郷に帰って商売をしたいと計画していまして。」
「ああ、そうなんですね。
私の遺産ではありません。
デイビット様のお気持ちです。」
「もう、この国に戻ることはないでしょう。
デイビットの墓参りも最後になりました。
寂しいけど、残してくれたお金で次に進もうと思います。
もう男性に買われるような仕事もしなくて済む。
デイビットに出会えたのは幸運だったし、もう彼以外を愛することもないでしょう。」
「いつも、お花をありがとうございました。
あっ、そうだ、
ヘイリーさんお渡ししたいものがあるので1時間後にこの先の公園で待ち合わせてもらえますか?」
「はあ、まあ、構いませんよ。」
急いで屋敷に一度戻り、デイビット様の形見の一つをバッグに入れて公園に向かった。
「すみません、お待たせして。」
「大丈夫です。急いでくださったんでしょう?
デイビットがいつもあなたの事を教えてくれました。
見かけとは裏腹に、聡明で実直で何もかもが美しい女性だって。
あなたの存在にデイビットは救われていました。
デイビットの最期に立ち会わせてくれたのもあなたですよね。
それもデイビットが感謝していました。」
「そんな…。でも、初めてお話しするけど、デイビット様のお相手があなたで良かった。
あ、これ、デイビット様のつけていた香水です。
もう販売されていないみたいで。
あなたにも持っていて欲しいんです。
きっとデイビット様が喜ぶだろうし。」
香水の入った袋をそっと渡す。
「…ありがとう。
もう、お会いすることはないでしょう。
…お元気で。」
「あなたも、お元気でいてください。
さようなら。」
もう会う事はない。
不思議な縁だったけど会えてよかった。
デイビット様の愛した人。
色んな感情が溢れて涙が流れてきた。
デイビット様に残された者同士、何かを感じたのかもしれない。
少し大きな声でもう一度言った。
「さようなら!お元気で!」
ヘイリーさんは振り向かず駅の方まで歩いて行った。
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