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監視状態
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昼が終わり、めぐちゃんに引き継いでいる間も田所さんの視線を感じる。
「マコさん、田所さんの顔ちょっとっていうか、かなり怖くないですか?」
小さな声でめぐちゃんが質問してくる。
「そうなの。昨日、待ち伏せされてて警察呼びそうな状態だったんだ。山根君に助けてもらったんだけど。ぽんちゃんが蹴られそうなって大変だったんだよ。」
「ええ?待ち伏せ!?」
めぐちゃんが驚きのあまり声が大きくなってしまった。
田所さんの目つきが更に険しくなる。
絶対私たちの会話聞き耳立ててる感じだ。
私が社内で何か言いふらさないか監視状態だ。
「後で携帯に連絡するね。」
「…。分かりました。」
ああ、すごく仕事やり辛い…。
引継ぎ時間が終わり、山根君が迎えに来てくれた。
室内にいた田所さんと山根君がにらみ合ってる。ものすごく空気が悪い。
どちらかが何か言おうものなら殴り合いでもしそうな雰囲気だ。
山根君、ものすごく巻き込んじゃった。申し訳ないな…。
デザイン課に戻る最中山根君から心配そうに声をかけてくれる。
「平井さん、あの男平常心じゃないですよね。」
「山根君もそう思った?今日、成績表が貼ってあったから見ちゃったんだけど、田所さんの数字がかなり落ち込んでたみたい。今日あさイチは営業成績発表だったはずだから何か言われたのかもしれない。」
「え?営業成績が落ちたのは平井さん全く関係ないじゃないですか。完全な八つ当たりですよね。」
「うん、そうなんだけど…。実は今まで私が業務外で田所さんの営業資料作成してたんだ。高スペックのパソコンも買って言われた通り作ってたんだけど、多分瑠美ちゃんには頼めないんじゃないかな。」
「え?平井さんのパソコンですか?」
「う~ん、色々あってね。私は結局別のパソコンを買ったんだ。今勉強中。」
「ていうか、平井さん料理作ってあの男の世話して仕事請け負ってって…。生活きつくなかったんですか?」
「今思えば大変だったよ。でも、世間知らずな私も良くなかったんだ。今はめぐちゃんもいるし滝川さんも課長も優しいし、山根君が居てくれるから大丈夫。本当に、いつもありがとう。」
「い、いや。俺何もしてませんから。むしろ弁当作ってもらってるし。あの、あんまり聞いちゃ良くないと思うんですけど、心配で…。平井さん帰宅中にまた待ち伏せされたりしませんか?」
「…。そう、なんだよね。防犯ブザーは家にあったんだけど、気持ち悪いからしばらく年休使って早めに帰ろうかな。ぽんちゃんも散歩怖がりそうだから明るいうちに行っておきたいし。」
「…。あの、俺で良かったら一緒に帰りますよ。ぽんちゃんの散歩も人通り少ない場所はジョギングついでに付き合いますよ。」
「え?そ、そんな。今までも山根君巻き込んじゃって迷惑かけてるのに、ダメだよ。そんなの私甘えすぎになっちゃう。」
私は手をパタパタと振り、断る。
「いや、昨日かなりやばい状況だったし、今日もあいつ何して来るか分からない顔つきでしたよ。」
「う、うん。そう…だね。でも、これ以上山根君やめぐちゃんに迷惑かけたくないんだ。」
「俺は迷惑じゃありません。困ってる平井さん放っておけません。決めました。これからしばらく一緒に帰りましょう。ぽんちゃんの散歩も一緒です。俺と並ばなくていいんで視界に居てください。分かりましたか?」
山根君が真剣な顔できっぱりと言った。何と言うか…迫力がある。迫力に圧倒されてつい返事をしてしまった。
「は、はい。よ、よろしくおねがいします。」
「はい。じゃあ、今日は就業時間になったらすぐ帰りましょう。ぽんちゃんも待ってますしね。」
「え?でも山根君残業しないの?」
「今はそこまで忙しくないんで大丈夫です。滝野瀬さんの引継ぎ業務が終わった後、こまごましたこと平井さんがしてくれているから余裕ができたんですよ。だから大丈夫です。」
「そ、そうなの?」
「そうなんです。あ、それこそ一緒に行動するのが迷惑になったら遠慮なく言ってくださいね。」
「それは絶対ないよ。」
「まあ、どうなるか分からないですから。ちゃんと伝えておきます。」
「は、はい…。」
まただ。また山根君に助けられている。
いつも親切の押し売りじゃなくて、私のことを考えてそっと手を差し伸べてくれる。
私はいつも甘えっぱなしだ。
「さ、じゃあ就業時間まであとちょっと頑張りましょう。」
「う、うん。」
何か去り際もスマートだよね。何と言うか…。山根君って実はすごくかっこいいんじゃないかと思う。
「マコさん、田所さんの顔ちょっとっていうか、かなり怖くないですか?」
小さな声でめぐちゃんが質問してくる。
「そうなの。昨日、待ち伏せされてて警察呼びそうな状態だったんだ。山根君に助けてもらったんだけど。ぽんちゃんが蹴られそうなって大変だったんだよ。」
「ええ?待ち伏せ!?」
めぐちゃんが驚きのあまり声が大きくなってしまった。
田所さんの目つきが更に険しくなる。
絶対私たちの会話聞き耳立ててる感じだ。
私が社内で何か言いふらさないか監視状態だ。
「後で携帯に連絡するね。」
「…。分かりました。」
ああ、すごく仕事やり辛い…。
引継ぎ時間が終わり、山根君が迎えに来てくれた。
室内にいた田所さんと山根君がにらみ合ってる。ものすごく空気が悪い。
どちらかが何か言おうものなら殴り合いでもしそうな雰囲気だ。
山根君、ものすごく巻き込んじゃった。申し訳ないな…。
デザイン課に戻る最中山根君から心配そうに声をかけてくれる。
「平井さん、あの男平常心じゃないですよね。」
「山根君もそう思った?今日、成績表が貼ってあったから見ちゃったんだけど、田所さんの数字がかなり落ち込んでたみたい。今日あさイチは営業成績発表だったはずだから何か言われたのかもしれない。」
「え?営業成績が落ちたのは平井さん全く関係ないじゃないですか。完全な八つ当たりですよね。」
「うん、そうなんだけど…。実は今まで私が業務外で田所さんの営業資料作成してたんだ。高スペックのパソコンも買って言われた通り作ってたんだけど、多分瑠美ちゃんには頼めないんじゃないかな。」
「え?平井さんのパソコンですか?」
「う~ん、色々あってね。私は結局別のパソコンを買ったんだ。今勉強中。」
「ていうか、平井さん料理作ってあの男の世話して仕事請け負ってって…。生活きつくなかったんですか?」
「今思えば大変だったよ。でも、世間知らずな私も良くなかったんだ。今はめぐちゃんもいるし滝川さんも課長も優しいし、山根君が居てくれるから大丈夫。本当に、いつもありがとう。」
「い、いや。俺何もしてませんから。むしろ弁当作ってもらってるし。あの、あんまり聞いちゃ良くないと思うんですけど、心配で…。平井さん帰宅中にまた待ち伏せされたりしませんか?」
「…。そう、なんだよね。防犯ブザーは家にあったんだけど、気持ち悪いからしばらく年休使って早めに帰ろうかな。ぽんちゃんも散歩怖がりそうだから明るいうちに行っておきたいし。」
「…。あの、俺で良かったら一緒に帰りますよ。ぽんちゃんの散歩も人通り少ない場所はジョギングついでに付き合いますよ。」
「え?そ、そんな。今までも山根君巻き込んじゃって迷惑かけてるのに、ダメだよ。そんなの私甘えすぎになっちゃう。」
私は手をパタパタと振り、断る。
「いや、昨日かなりやばい状況だったし、今日もあいつ何して来るか分からない顔つきでしたよ。」
「う、うん。そう…だね。でも、これ以上山根君やめぐちゃんに迷惑かけたくないんだ。」
「俺は迷惑じゃありません。困ってる平井さん放っておけません。決めました。これからしばらく一緒に帰りましょう。ぽんちゃんの散歩も一緒です。俺と並ばなくていいんで視界に居てください。分かりましたか?」
山根君が真剣な顔できっぱりと言った。何と言うか…迫力がある。迫力に圧倒されてつい返事をしてしまった。
「は、はい。よ、よろしくおねがいします。」
「はい。じゃあ、今日は就業時間になったらすぐ帰りましょう。ぽんちゃんも待ってますしね。」
「え?でも山根君残業しないの?」
「今はそこまで忙しくないんで大丈夫です。滝野瀬さんの引継ぎ業務が終わった後、こまごましたこと平井さんがしてくれているから余裕ができたんですよ。だから大丈夫です。」
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「それは絶対ないよ。」
「まあ、どうなるか分からないですから。ちゃんと伝えておきます。」
「は、はい…。」
まただ。また山根君に助けられている。
いつも親切の押し売りじゃなくて、私のことを考えてそっと手を差し伸べてくれる。
私はいつも甘えっぱなしだ。
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