社内恋愛にご注意!!

ミミリン

文字の大きさ
98 / 107

お呼ばれ

しおりを挟む
私は山根君に決死の告白をした。


返事もなくおおよそフラれたであろう形になっているけど、山根君との食堂ランチは続けてもらっている。


そして、今まで通り帰宅も一緒でぽんちゃんの散歩も付き合ってもらっている。


あの告白はなかったかのような振る舞いをお互い続けている。


表面上は笑顔で穏やかに山根君と話すけど内心は大きなとげが刺さった状態で笑顔を作るのがやっとな感じだ。


辛いけど一緒にいたい。

傍にいさせてもらえるならもう少し一緒にいさせてほしいと思ってしまう意気地なしな私。





業務中に珍しく営業部の課長がデザイン課にやってきた。


「あ~、平井さんお久しぶり!元気してる?」


「課長、お久しぶりです。」


久々に見た課長は少し顔色が良くなっていた。

めぐちゃんの情報によると三谷さんがすごく優秀なので課長の補佐や外勤達の管理を任せられるみたいだ。


『一番は近藤瑠美さんが異動したから課長のストレスが減ったんだと思いますけど。』

とめぐちゃんは苦笑していたな。




「課長、今日はどうされたんですか?」


「そうそう、今週の水曜日の夜に鶴丸様のお疲れ様会があるんだ。
鶴丸様からはささやかな会だから気軽に参加してほしいって言われたんだけど多分そこそこの規模だと思う。
平井さんの参加を希望されていてね。
突然決まったみたいだから参加無理でもいいんだけど、今後の事もあるしお願いしたいなあって…。」



「え?水曜日ってすぐですよね。」ぽんちゃん、預けるのは大丈夫そうだけど。


「もちろん近藤さんは来ないよ。あんなことがあったから。滝野瀬さんは丁度通院がある日で難しいみたいなんだ。」


「めぐちゃんはいないんですか…。あの、田所さんは?」


「え?田所君?彼は鶴丸様と直接関係していないから誘っていないけど。」


「そうですか。」

今私はデザイン課だから行くのは気が引けるけど鶴丸様にはお世話になったから行くべきと葛藤してしまう。


「あ、そうそう。鶴丸様からここの山根君も良かったら来て欲しいってお誘いがあったんだ。彼いてる?」


「あ、はい。ちょっと待っててください。」


私は山根君を呼んだ。


山根君は何故呼ばれたか不思議そうな顔している。



営業課長から鶴丸様のパーティの件を伝えられると明らかに戸惑っていた。


「怖がらないで大丈夫だよ。鶴丸様が来社した時山根君に親切にしてもらったことが嬉しかったんだって。こういう縁を大切にしたい人だから声がかかったんだよ。」


「いや…でも俺…。」


「山根君はいつも平井さんと一緒にいるじゃないか。平井さんこんなに綺麗だから他の来賓者に絶対目を付けられるよ。変な奴だったらどうするの?帰り店の前で待ち伏せされたらどうするの?」


「課長、冗談にならない冗談はやめてください。…分かりました。俺も行きます。水曜日の夜ですね。」


「ええ?山根君大丈夫?」


「はい。丁度いいかもしれません。」



「??」


「おっけ~!決まり!あっ!デザインの課長が俺に気づいたな!あいつ無神経だから嫌いなんだよ。同期だけど。じゃあ、場所とか時間は戻ってからメールするから確認よろしくね。お疲れ様~!」


そう言って営業課長は足早に去って行った。



「なになに?あいつ何しに来たの?俺に話し通さないとなると業務外の時間に何か君たちに頼んだな?どうせ営業部に来た話を平井さんが受けて欲しいとかじゃない?」


「流石課長、だいたい合ってます。」山根君がぼそっと言った。



「平井さん、安請け合いしたらダメだよ。君はデザイン課の大切な社員なんだから。」



「大丈夫です。ちょっとお呼ばれしただけなので、挨拶が済んだらすぐ帰宅しますから。」



「ふ~ん。気を付けてね平井さん変な男に狙われないように。」


「もう、そんなことありえないですよ。」


私は苦笑いしかできなかった。



何故なら先日私の決死の告白は見事に玉砕したからだ。



やっぱり新しい恋はまだまだ難しそうだ。


山根君は課長の話を黙って聞いていた。

しおりを挟む
感想 20

あなたにおすすめの小説

『冷徹社長の秘書をしていたら、いつの間にか専属の妻に選ばれました』

鍛高譚
恋愛
秘書課に異動してきた相沢結衣は、 仕事一筋で冷徹と噂される社長・西園寺蓮の専属秘書を務めることになる。 厳しい指示、膨大な業務、容赦のない会議―― 最初はただ必死に食らいつくだけの日々だった。 だが、誰よりも真剣に仕事と向き合う蓮の姿に触れるうち、 結衣は秘書としての誇りを胸に、確かな成長を遂げていく。 そして、蓮もまた陰で彼女を支える姿勢と誠実な仕事ぶりに心を動かされ、 次第に結衣は“ただの秘書”ではなく、唯一無二の存在になっていく。 同期の嫉妬による妨害、ライバル会社の不正、社内の疑惑。 数々の試練が二人を襲うが―― 蓮は揺るがない意志で結衣を守り抜き、 結衣もまた社長としてではなく、一人の男性として蓮を信じ続けた。 そしてある夜、蓮がようやく口にした言葉は、 秘書と社長の関係を静かに越えていく。 「これからの人生も、そばで支えてほしい。」 それは、彼が初めて見せた弱さであり、 結衣だけに向けた真剣な想いだった。 秘書として。 一人の女性として。 結衣は蓮の差し伸べた未来を、涙と共に受け取る――。 仕事も恋も全力で駆け抜ける、 “冷徹社長×秘書”のじれ甘オフィスラブストーリー、ここに完結。

ひとつ屋根の下

瑞原唯子
恋愛
橘財閥の御曹司である遥は、両親のせいで孤児となった少女を引き取った。 純粋に責任を感じてのことだったが、いつしか彼女に惹かれていき――。

(完結保証)大好きなお兄様の親友は、大嫌いな幼馴染なので罠に嵌めようとしたら逆にハマった話

のま
恋愛
大好きなお兄様が好きになった令嬢の意中の相手は、お兄様の親友である幼馴染だった。 お兄様の恋を成就させる為と、お兄様の前からにっくき親友を排除する為にある罠に嵌めようと頑張るのだが、、、

偽装夫婦

詩織
恋愛
付き合って5年になる彼は後輩に横取りされた。 会社も一緒だし行く気がない。 けど、横取りされたからって会社辞めるってアホすぎません?

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

甘い束縛

はるきりょう
恋愛
今日こそは言う。そう心に決め、伊達優菜は拳を握りしめた。私には時間がないのだと。もう、気づけば、歳は27を数えるほどになっていた。人並みに結婚し、子どもを産みたい。それを思えば、「若い」なんて言葉はもうすぐ使えなくなる。このあたりが潮時だった。 ※小説家なろうサイト様にも載せています。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

処理中です...