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第2章
第5話 狼煙が見えた
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…
…
…
「…やべ…寝てた…」
どれくらいの時間寝ていたのかわからないが、いつのまにか寝ていたらしい。
まだ辺りは暗く、ランタンの小さな明かりだけが、本棚で覆った狭い部屋を照らしている。
シーホが妹になるだの…あれも夢だったんだろうか…?
「…それはないか…」
優子達が、夢かどうか分からないが、最後に見た光景と同じように、ソファに並んで寝息を立てているし、夢オチなんてことはないだろう…
シーホとはあくまでも期間限定、仮の兄妹なら、そこまで気にすることはないだろう…と思う。
俺も優子も、弟しかいなかったから、はしゃいだのも分からないではないしな…
あんな変な求婚のされ方してなかったら、普通に可愛いと思うもんな…
「…うさん…」
外気で少し温くなっていたペットボトルのお茶を飲みながら、優子とシーホの寝顔を横目で見ていると、シーホが何か寝言を言った…
そして頬を涙が伝っていくのが見えてしまう。
「グリムさんの事…夢に見てんのかね…」
突然の親の死を、まだ14の子供がそんなすぐに割り切れるものじゃない…
起きている間は、明るく振舞っているように見えても、どこかで無理をしているんだろうな…
グリムさんをどうにか助けられていたら、シーホの人生は今とは間違いなく違うものになっていただろう…
「ダメだな…たらればを考えても意味はないってのに…」
寝ている優子達を起こさないように、静かにソファから離れ、囲いの外に出ると、月が雲に隠れたのか寝る前より随分と暗く感じた。
(ナビさん、俺はどのくらい眠っていた?)
『回答提示。5時間25分です。』
思った以上にガッツリ寝ていたな…
昼間もほとんど寝て過ごして居たのに、不思議なものだ…
(反応のあった相手の様子は?)
『情報提示。小さく移動は繰り返していますが、こちらに向かってくる様子はありません。』
5時間経っても同じような場所をウロついているだけ?
もしかすると、魔物の巣でもあるのだろうか…?
何か変だとは思うが、相手が何者かも分からない状況だと、出来ることはないと言っていい…
(ナビさん、今日の日の出は?)
『回答提示。12分後です。』
「は?もうすぐじゃないか…」
思った以上に日の出まで時間がなかったことに驚いて、思わず声が出てしまった。
朝まで何もないなら、普通に訓練していればよかったよ…
囲いの中に一度戻り、優子の肩を揺すって起こす。
「優子、そろそろ起きろ。朝が来るぞ。」
「ん…あれ?…寝てた?」
俺の声で優子が目を覚ました。
相変わらず寝起きがいい。
シーホ達は全然起きる感じがしない…
まだ暗いが、あと10分位すると世界を青に染め上げる太陽が顔を出すだろう。
「おはよう。もうすぐ朝日が昇るみたいだから、シーホ達を起こしておいてくれるかな?
俺は周りを片付けてくるからさ。」
まだ寝息を立てているシーホとぬいぐるみを優子に任せて、囲いの外に置いていたままのランニングマシンや、毒蔦縛で作った的を収納し、周りに落としたものがないかを確認して歩いた。
「ぼんさーん…起きたよー…」
「ん?おはようでっかちゃん。」
確認を終えて、囲いの方に歩いていると、トテトテとでっかちゃんが四つ足で歩いてきた。
でっかちゃんは、俺の足にもたれかかって眠そうに目を擦る。
「まだ暗いよ?もう起きるの?」
「もうすぐ明るくなるよ。明るくなったら木の上に戻って朝ごはんにしようね。」
まだ眠そうなでっかちゃんは、少しぐずっているのか、俺の足に頭を擦り付けてくる。
「むー…」
そのままもう一度寝そうになっているため、仕方なく抱き上げて囲いの中に戻った。
既に全員起きていたので、でっかちゃんを優子に渡し、ナビさんに念のための安全確認をしてもらうが、相変わらず遠くの反応は近づいてきていなかった。
「なんなのかね…」
「ん?何か言った?」
「いや、なんでもない。片付けるから外に出てくれ。」
優子達を外に出し、さっさと囲いを片付けてしまう。
毒液の檻を解呪し、旅する魔樹大老の所に向かっていると、視界が青に染まっていくのが分かった。
ほんの数秒の蒼の世界。
俺は意外と嫌いじゃなかったりする。
旅する魔樹大老の下に着く頃には、残りの太陽も顔を出し、視界の色も元に戻っていた。
魔樹も活動開始したようで、根元に着いた俺たちを、次々持ち上げて枝の上に乗せてくれた。
朝ごはんに、魔樹の実を食べていると、見えなくてもいいのに、視界に黒い煙が見えてしまった…
(ナビさん、なんか煙が見える気がするんだけど、あれが何か分かる?)
『回答提示。人工物が燃えて発生した煙です。』
人工物?
(人工物ってことは人が居るのか?街まではまだ遠いんじゃなかったっけ?)
『回答提示。最寄りの人口密集地は、旅する魔樹大老の進行速度で2日の距離にあります。』
そんなに遠い場所の煙が、ここから見えるとは思えない…しかし、こんな何もない草原に住んでいる人が居るとも思えないんだ…まさか、昨日の反応があった場所か?
(ナビさん、ここから見える煙の発生場所と、昨日の反応の場所は?もしかして近い?)
『回答提示。同一地点です。距離は徒歩で1時間程度、旅する魔樹大老で20分程度かかります。』
少し気にはなるけど、歩いて行くには遠いよね…
途中で何があるか分からないし…
(ナビさん、進行方向は?)
『情報提示。進行方向を可視化します。』
ナビさんの言葉に続いて、目の前に半透明な矢印が出現する。
矢印は、煙が出ている場所の少し右を向いている。
…そんな気はしていたよ…
(ナビさん…視認距離になったら教えて…)
『要請受諾。畏まりました。』
…
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「…やべ…寝てた…」
どれくらいの時間寝ていたのかわからないが、いつのまにか寝ていたらしい。
まだ辺りは暗く、ランタンの小さな明かりだけが、本棚で覆った狭い部屋を照らしている。
シーホが妹になるだの…あれも夢だったんだろうか…?
「…それはないか…」
優子達が、夢かどうか分からないが、最後に見た光景と同じように、ソファに並んで寝息を立てているし、夢オチなんてことはないだろう…
シーホとはあくまでも期間限定、仮の兄妹なら、そこまで気にすることはないだろう…と思う。
俺も優子も、弟しかいなかったから、はしゃいだのも分からないではないしな…
あんな変な求婚のされ方してなかったら、普通に可愛いと思うもんな…
「…うさん…」
外気で少し温くなっていたペットボトルのお茶を飲みながら、優子とシーホの寝顔を横目で見ていると、シーホが何か寝言を言った…
そして頬を涙が伝っていくのが見えてしまう。
「グリムさんの事…夢に見てんのかね…」
突然の親の死を、まだ14の子供がそんなすぐに割り切れるものじゃない…
起きている間は、明るく振舞っているように見えても、どこかで無理をしているんだろうな…
グリムさんをどうにか助けられていたら、シーホの人生は今とは間違いなく違うものになっていただろう…
「ダメだな…たらればを考えても意味はないってのに…」
寝ている優子達を起こさないように、静かにソファから離れ、囲いの外に出ると、月が雲に隠れたのか寝る前より随分と暗く感じた。
(ナビさん、俺はどのくらい眠っていた?)
『回答提示。5時間25分です。』
思った以上にガッツリ寝ていたな…
昼間もほとんど寝て過ごして居たのに、不思議なものだ…
(反応のあった相手の様子は?)
『情報提示。小さく移動は繰り返していますが、こちらに向かってくる様子はありません。』
5時間経っても同じような場所をウロついているだけ?
もしかすると、魔物の巣でもあるのだろうか…?
何か変だとは思うが、相手が何者かも分からない状況だと、出来ることはないと言っていい…
(ナビさん、今日の日の出は?)
『回答提示。12分後です。』
「は?もうすぐじゃないか…」
思った以上に日の出まで時間がなかったことに驚いて、思わず声が出てしまった。
朝まで何もないなら、普通に訓練していればよかったよ…
囲いの中に一度戻り、優子の肩を揺すって起こす。
「優子、そろそろ起きろ。朝が来るぞ。」
「ん…あれ?…寝てた?」
俺の声で優子が目を覚ました。
相変わらず寝起きがいい。
シーホ達は全然起きる感じがしない…
まだ暗いが、あと10分位すると世界を青に染め上げる太陽が顔を出すだろう。
「おはよう。もうすぐ朝日が昇るみたいだから、シーホ達を起こしておいてくれるかな?
俺は周りを片付けてくるからさ。」
まだ寝息を立てているシーホとぬいぐるみを優子に任せて、囲いの外に置いていたままのランニングマシンや、毒蔦縛で作った的を収納し、周りに落としたものがないかを確認して歩いた。
「ぼんさーん…起きたよー…」
「ん?おはようでっかちゃん。」
確認を終えて、囲いの方に歩いていると、トテトテとでっかちゃんが四つ足で歩いてきた。
でっかちゃんは、俺の足にもたれかかって眠そうに目を擦る。
「まだ暗いよ?もう起きるの?」
「もうすぐ明るくなるよ。明るくなったら木の上に戻って朝ごはんにしようね。」
まだ眠そうなでっかちゃんは、少しぐずっているのか、俺の足に頭を擦り付けてくる。
「むー…」
そのままもう一度寝そうになっているため、仕方なく抱き上げて囲いの中に戻った。
既に全員起きていたので、でっかちゃんを優子に渡し、ナビさんに念のための安全確認をしてもらうが、相変わらず遠くの反応は近づいてきていなかった。
「なんなのかね…」
「ん?何か言った?」
「いや、なんでもない。片付けるから外に出てくれ。」
優子達を外に出し、さっさと囲いを片付けてしまう。
毒液の檻を解呪し、旅する魔樹大老の所に向かっていると、視界が青に染まっていくのが分かった。
ほんの数秒の蒼の世界。
俺は意外と嫌いじゃなかったりする。
旅する魔樹大老の下に着く頃には、残りの太陽も顔を出し、視界の色も元に戻っていた。
魔樹も活動開始したようで、根元に着いた俺たちを、次々持ち上げて枝の上に乗せてくれた。
朝ごはんに、魔樹の実を食べていると、見えなくてもいいのに、視界に黒い煙が見えてしまった…
(ナビさん、なんか煙が見える気がするんだけど、あれが何か分かる?)
『回答提示。人工物が燃えて発生した煙です。』
人工物?
(人工物ってことは人が居るのか?街まではまだ遠いんじゃなかったっけ?)
『回答提示。最寄りの人口密集地は、旅する魔樹大老の進行速度で2日の距離にあります。』
そんなに遠い場所の煙が、ここから見えるとは思えない…しかし、こんな何もない草原に住んでいる人が居るとも思えないんだ…まさか、昨日の反応があった場所か?
(ナビさん、ここから見える煙の発生場所と、昨日の反応の場所は?もしかして近い?)
『回答提示。同一地点です。距離は徒歩で1時間程度、旅する魔樹大老で20分程度かかります。』
少し気にはなるけど、歩いて行くには遠いよね…
途中で何があるか分からないし…
(ナビさん、進行方向は?)
『情報提示。進行方向を可視化します。』
ナビさんの言葉に続いて、目の前に半透明な矢印が出現する。
矢印は、煙が出ている場所の少し右を向いている。
…そんな気はしていたよ…
(ナビさん…視認距離になったら教えて…)
『要請受諾。畏まりました。』
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