夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第2章

第12.5話 モンスターサイド

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KUOOOOOOOOOO…

「これはリジイの声か…何かあったようだな。」
「ラッドも行ったのに、何してんだ?あの雑魚共は。」
「雑魚なんか食っちまえ!食っちまえ!」

多頭鰐スクナダイルのクロコは、荷馬車に張られた結界を踏みつけながら、魔樹トレントの様子を見に行かせた眷属の陸草鰐グラスゲーターの声に、3つある頭が其々反応を示していた。

鰐特有のゴツゴツとした皮膚をしているため、表情は読み取れないが、あまり機嫌は良く無いらしい。

「クロコ様。御命令頂ければ、私が見て参ります。」

「お前なら行けるってのか?あ?」

陸草鰐グラスゲーターのレイバは、低く唸りながらクロコの前で頭を下げる。
それを見て、クロコの頭の1つが唸り声をあげながら目を細める。

「いや、次は俺に任せてくれ!魔樹トレントなんぞ俺の牙で噛み砕いてくらぁ!」

「そうだ。噛み砕け!噛み砕け!」

陸草鰐グラスゲーターのロドスが、割って入るように声を上げる。
クロコのもう1つの頭が、ふざけた様に声を上げる。

クロコの残った中央の頭は、騒ぐ連中を止めるためなのか、威嚇する様に唸り声をあげて喋り始める。

「グルルル…雑魚が騒ぐな。ラッドとリジイが行って返り討ちにあっている…お前らが行っても同じことだ…」
「ならどうすんだ?おい?」
「食っちまうか?食っちまうか?」

グルルと唸ったクロコの中央頭は、左右の頭からの野次を無視して言葉を続ける。

「ルガスはここで、この忌々しいウガルの事を見張れ…出て来たら殺していいが食うな。」
「食ったら殺すからな?」
「食うんじゃねぇぞ?食うんじゃねぇぞ?」

陸草鰐グラスゲーターのルガスは無言で頷くと、いつでも飛びかかる事ができるように、自身の尻尾を地面に突き立て、結界に守られた荷馬車に向いて地面に伏せた。

「レイバとロドスは我と来い。魔樹トレントの殺し方を見せてやる。」
「無様に負けたラッドとリジイは、生きてても殺すがな?」
「その後食うぞ?食うぞ?」

「は。露払いをさせていただきます。」

「よっしゃ!ここのウガルが弱すぎて暴れ足りなかったんだ!」

ドスン!

クロコは勢いよく荷馬車に張られた結界を踏みつけ、地面に少しめり込ませると、足を退けてそのまま歩き出す。
それに先行するように、2匹の陸草鰐グラスゲーターも走り始めた。
遮蔽物の無いひらけた草原で、旅する魔樹大老トラベルトレンダーの巨体はいい目印になっていた…

歩幅の違う3体、歩く多頭鰐スクナダイルの少し前を、2体の陸草鰐グラスゲーターが走って進む。

少し経つと、予想よりはるかに大きな魔樹トレントの前に、小さな人影が立っているのが見えてきた。

「クロコ様。ウガルの姿が見えます。」

「我にも見えている…行くぞ。」
「ウガルなんかに負けたのか?ちっ!雑魚が!」
「食っちまおう!食っちまおう!」

「よっしゃ~!一噛み目は俺がいただくぜ!」

草原に立っているのは、ご存知の様にボンだ。
その姿を見た3体は、徐々に走る速度を上げて行く。
その中でも、一番先頭を走っていたロドスが、何も無いところで足を取られて地面にいきなり転がる事になった。

「うぎゃ!ぎ!ぎゃー!!」

地面に転がったロドスの体は、一瞬でズタボロになっているのが分かる程に、かなり激しく損傷していた。

「止まれ!」
「くそが!」
「なんだ?なんだー!?」

「くっ!ロドス!」

ロドスが地面に転がるのを見て、後ろを走っていた2体は、尻尾を地面に突き刺して無理矢理急ブレーキをかける。
地面に3本の尻尾の跡を残し、ロドスが脚を取られた手前で止まることに成功する。

「どうしたというのだ…あれはなんだ?」
「どうなってやがる!おい!?」
「沈んでやがる!沈んでやがる!」

「ロドス!おいロドス!」

何かに脚を取られて地面に転がったロドスが、そのまま地面に吸い込まれる様に沈んで行くのを見て、クロコとレイバはそれぞれが声を上げる。

「が…ぎ…うが…」

ロドスは、地面に埋まる様にどんどん小さくなっていき、すぐにまともに声を出せる状況ではなくなっていく。

「我が眷属を…何が起きているのだ…?」
「あのウガルが何かやったんだ!」
「噛みちぎれ!喰いちぎれ!」

「クロコ様!私に命令を!」

そんな事をしゃべっている間に、もうロドスの体は殆ど原形がなんだったのか分からなくなってしまっていた。

「レイバ…ウガル得意の姑息な魔法だ。回り込んで噛み砕け。」
「喰っちまってもいいぞ!」
「やっちまえ!やっちまえ!」

「は!お任せ下さい!うぎ!ぎゃー!!」

ボンの右手に回り込もうと、レイバが脚を向けるが、ほんの数歩でロドスと同じように脚を取られて転がってしまう。

「横にも…姑息な真似を!!」
「殺してやる!!」
「殺す!殺す!!」

クロコの3つの頭は、ほとんど同じ考えでそれぞれ吼える。
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