夫婦で異世界放浪記

片桐 零

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第2章

第23話 ストレージリングの能力

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荷馬車まで、後5mの場所で、漂ってくるありえないほどの臭気に当てられてしまった俺は、それ以上前に足を出すことができなくなっていた。

あと少しでも前に進むと、俺は耐えきれなくて多分吐く…

それくらい凄い臭いなんだ。

「ナビさん、これ…本当に中に何かいるのか?」

『回答提示。生体反応は17、変化はありません。』

生体反応があるなら生きているんだろうが…どうしよう…近寄ろうにもこれは臭すぎる…

『行動提案。毒蔦縛ポイズンアイビーを荷馬車まで届くように発動し、収納することを提案します。』

「それだ!よし、伸びろ毒蔦縛ポイズンアイビー!」

ナビさんの提案に乗り、すぐに毒蔦縛ポイズンアイビーを発動させる。

俺の足元から伸びて行く毒蔦は、地面を這って荷馬車へと到達し、車輪に巻きついた。

「よし。…うお!流石に重いな…」

無事にストレージリングに収納することができたのだが、流石に荷馬車ごとだと多頭鰐スクナダイルを収納した時よりかなり重く感じる。

とはいえ、腕が上がらないほどではないため、リストを出して中に入って居たものを確認して行くことにした。

「えっと……は?エルフ?ドワーフ?ウルフェン?…なんだこれ…何を運んでんだよあのクズは!!」

馬車は奴隷運搬用のものだったらしく、リストには奴隷馬車スライキャリジと表示されていた。

中には、エルフやドワーフなんかのファンタジー作品でよく見る種族や、ウルフェンやラビディアなんかの見たことのない種族が乗せられていたらしい。

表示は全て[生]と付いているので、生きてはいるのだろうが、これ、本当に無事に取り出せるのだろうか?

「ナビさん、本当に大丈夫なんだよな?」

『回答提示。ストレージリングに収納する事で、変質することはありません。
取り出すことで、収納前と同様に活動を開始します。』

不安感は拭えないけど、やってみるしかないか…

出した後で暴れられても困るから、彼等を閉じ込めていた奴隷檻スライゲージ奴隷檻〈スライケージ〉を先に出しておいて、その中に出すことにした。

「…生きて…は、いるみたいだな…」

ストレージリングから出した人達は、全員意識は無いようだが、呼吸はしているのは見て取れた。

こちらに来る時、奴隷が居るとは想定していたが、実際に見るとキツイものがある。

「ナビさん、この人達はちゃんと目を覚ますんだよな?」

『回答提示。各個体の生体反応は、収納前と変化はありません。
推察情報。各個体共に衰弱しているため、覚醒まで時間がかかっているのもと推察します。』

あんな凄まじい臭いの馬車に、少なくとも丸1日は閉じ込められて居たんだ、そりゃ衰弱もするか…

このままでも自然に眼を覚ますみたいだけど、どのくらいかかるのか分からないのは困るな…

俺は、優子マメのいる幌馬車の方に行き、中で木箱の中を確認していた彼女に声をかけて、彼等を回復してもらうことにした。

「えっと…あの人達を治せばいいの?」

「そう。お願い出来るか?」

「ん…でも、どこから来たの?」

優子マメは、檻の中にいる彼等を遠目に見ながら、少し怪訝そうな顔をした。
突然現れたんだから気になるのは分かる。

もう1台の馬車が、奴隷運搬用の馬車だったことを伝え、彼等はおそらく商品として運ばれていたのだと伝えると、なんともいえない表情をしてしまった。

「そっか、奴隷とか居るんだね…驚いたけど、ここは日本じゃないんだもんね。うん、分かったよー」

優子マメは軽く了解してくれたが、その軽さが気になってしまうのは、心配し過ぎなんだろうか…

(ナビさん、優子マメの状態確認も頼んだ。)

『要請受諾。優子様の生体魔素転換路エーテルリアクターの活性モニターを開始します。』

ナビさんにも監視をお願いして、優子マメと一緒にエルフ達に近づいていく。

エルフ達に近づくにつれて、キツイ臭いが漂い始め、優子マメは顔をしかめてしまった。

「…なんか臭い…」

「これでもさっきより全然マシになったんだけどね…多分服やらに染み付いてる臭いだから、これ以上は取れないみたいでな…」

「そうなんだ…酷いね…」

優子マメは臭いを我慢しながら、エルフ達に近づいていって、回復魔法ヒール解毒魔法キュアを一緒に発動させていく。

檻の中にいるエルフ達は、顔色がどんどん良くなって徐々に目を覚まし始める。

「う…ここは…?」

最初に目を覚ましたエルフが、こちらを見て口を開く。

流石と言うべきか、エルフの顔立ちは物語に語られるように怖いほどに整っている。
ただ、長い拘束生活は、そんな彼女の容姿を変えてしまっていた。
皮膚は所々黒ずんでしまっていて、綺麗だったであろう銀髪も、フケと油でベタベタに固まってしまっていた。

「良かった、会話は出来るようだな…少し話を聞かせてもらえるか?」

「あの…あなたは?」

「俺のことはいい、あんたらはその…奴隷でいいんだよな?」
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