私を必要とする世界

絢ねえ

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壊れた心

理想郷

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彼はヒルダと言うらしい。男の子だった。いや、これは男の娘というのかな?
お姫様みたいな愛らしい外見なのに残念だ。しかも、既に百歳は越えている。妖精フェアリーは長生きらしい。
ヒルダは神様の命令を受けた神の遣い?なんだそうだ。
私がヒルダに気がついた途端に、まるでマシンガンのように喋り始めるから、全部聞き取れたかはわからないけど自己紹介から始まり、神様が時間切れで説明できなかったことを丁寧に教えてくれた。
それを、私なりにかみ砕いてみると。まずこの世界は理想郷ユートピアという名で、地球で育った私からするとファンタジーな異世界って感じだろう。地球と同じような物理法則は存在するけれど、魔法があったり、獣人やヒルダのような妖精フェアリーという亜人も存在するらしい。まさにファンタジーだ。
この世界は、神様が名前の通り理想郷を作ろうとして作られたらしい。しかし、これはほんの一握りのものしかしらないことらしいが、理想郷を作ろうという神様の計画はすでに失敗しているらしい。この世界は神様が手間暇かけて作った箱庭で、言い方が悪いかもしれないが実験施設ならぬ、実験世界なのだ。だから、すでに失敗したという今。この世界は神の恩恵が格段に減っている。それは、理想郷を作ろうという計画でいっぱい手を出した為、世界のバランスが崩れないように今はあまり手を出せないという理由もあるらしい。
私、やばいところに来ちゃったかな。
この世界に神様が直接手を出せなくなって、だんだんと世界の均衡がおかしくなっているという。神様の感覚だが、このままではすぐにこの世界が破滅してしまう。そこで、神様は直接手を出さずに少しでもこの世界の破滅が遅れる方法はないか考えた。失敗したといってもこのままほっとくのは忍びないという神様のお慈悲なのです。と、ヒルダは叫んでいるが、怪しいなと感じてしまう私は心が汚いのかもしれない。
ともかく、そうして考えられた方法が神の試練と私だ。
この世界のバランスは、とてもざっくりとした考えだが、神様の力を行使するエネルギーが極端に少ない。そのエネルギーが光だとすると、逆に闇のエネルギーがこの世界に今多くあることになる。その状態が長く続くと、この世界の生物すべてに等しく悪影響が出るらしい。
今回、神様はその闇のエネルギーを一か所に集めて具現化することにした。したというのは、今がその真っ最中だからだ。その具現化したエネルギーを消滅させることが神の試練となる。
しかし、この神の試練は諸刃の剣だ。この世界をむしばむ闇のエネルギーを一か所に集めるのだから、もし、消滅させることができなかった場合この世界の破滅は早まる。しかも今この世界にいる存在に神の試練を達成できそうなほど力を持つものはいないらしい。それでは意味がないじゃないかと思うのだが、話はそこで終わりではない。私という存在の有無だ。
神様に、召喚という形で連れてこられた私は今回の計画のキーになる。自分自身ではさっぱりわからないが、私にはこの世界の闇の力に対抗しうるほどの光の力が封印されていらしいから、その力をうまく使うことができれば神の試練を乗り越えることは難しくない。
ただし、それは私の封印が解けたらだ。この封印は、私の体を光のエネルギーを入れるための器にするための条件みたいなものらしく、簡単に解けない。というか解き方がわからない。何だそれはと思うが仕方のないことらしい。一応、神様がヒントをくれるらしいが安心は全くできない。
これから、闇の力が具現化するまでは準備期間として時間が与えられている。それまでに私はこの世界になじむことと、封印の解き方を探すこと。この二つを目的にして動く。
まぁ、そこはヒルダが任せてくれと言っているから大丈夫だろう。
ここまでが一区切りだ。あとは何かあったらおいおい教えてくれるのだろう。

ドンドン ドンドン

痛い。いきなり強くたたいてきてどうしたんだ。
「僕を無視しすぎだよ。いつまでぼっとしてるんだ」
・・・ごめんなさい。私は考えに没頭すると周りが見えなくなる質らしい。
そうそう、私はたぶん神様が忘れたせいだろうけど一切話せないままだ。でも、ヒルダは私とテレパシーのように考えを読み取って意思の疎通ができる。
ファンタジーって便利だ。
「おーい、アキラだっけ?とりあえず、家にいくよー」
家?とはどこに行くんだろう。これから私はどうすればいいんだろう。
・・・今考え込んでも仕方ないか。
私は少し窮屈に感じるからだを動かしてヒルダについていった。
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