極左サークルと彼女

１３

　あれから間もなくして、県警がアジトに踏み込み、逮捕されたアジトの最高幹部を問い詰めると、ようやく辰夫を事故死に見せかけて意図的に車でひき殺したことを認めた。手口としては、眠り薬入りの酒を無理矢理飲ませて、深夜の交通量もなく目撃者もいない交差点を横切らせ、盗難車でひき殺したというものである。最高幹部たちには今後、量刑が科されることだろう。寅雄は辰夫の墓の前で、このことを報告した。
　寅雄たちは、深手を負いながらもアジトの一つをつぶしたのだが、これは『日本の斧の会』の一つの支部に過ぎず、政治局のある本部がまだ控えているのだ。
　とはいえ、これ以降、日本反帝同盟はいかなる組織の干渉も受けない、誰にでも開かれた組織になり、上級生が下級生に雑用を押し付ける体制も改められた。もちろん、寅雄は優希とは公認のカップルになり、サークル員から一目おかれるようになると同時に、優希や譲司や葦兵とともに日本反帝同盟の運営を支えていくことになる。