俺は毛沢東!?

王太白

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 ある日、中南海の廊下で健作がポン元帥とすれ違った際に、ポン元帥は健作に「主席、内密なお話がございますが、よろしいでしょうか?」と呼び止められた。健作はうなずき、私室にポン元帥を招くと、緑茶と茶菓子を出させて席に着いた。
「それで、俺に内密な話とは何だ?」
「実は、主席が毎夜、召し出しておられる文化工作隊の女の子に関してですが……」
 そこで、ポン元帥はいったん言葉をきり、健作の目をしっかり見つめてきた。さすがに「ポン大将軍」と賞賛されるだけあり、眼光は猛禽類のように鋭く、健作は思わず目をそらしてしまう。まるで、強面の教師に説教される、気弱な生徒みたいだ。
「主席、どうか、私の目を見てお話しくだされ。主席が中国革命の元勲であり、中国の偉大なる紅い太陽であることは、私も疑っておりません。主席にお仕えできて、身に余る光栄だと存じております。しかし、昨今の女の子との乱行ぶりは、目に余るものがあります。主席が革命を起こされたのは、酒池肉林の生活を送るためではなく、地主に搾取されている小作人を解放して、皆で豊かになろうとされてのことでしょう。今や革命こそ成就しましたが、相かわらず農民は貧しいままです。そのような中で、主席お一人が享楽にふけっておられて、よろしいのでしょうか?」
 そこまで諭すように威厳を持って言うと、ポン元帥は湯呑みの緑茶を一口飲んだ。一方の健作はといえば、ポン元帥の威厳にあてられて、泣き出しそうになっている。
「最近、ソ連から来たある将校は、中国の農村を視察し、『こんな社会主義なら、社会主義なんて無くても良い』とぼやく始末です。主席は天下をとられてから変わられた。何とぞ、今一度、貧しい農民に寄り添った生活に立ち戻ってくだされ」
 ポン元帥は前にも増して、眼光鋭く健作の目を射すくめてくる。あまりの威圧感に、健作は恥も外聞もなく泣き出してしまった。ポン元帥は、さすがに驚いたとみえて、健作をなだめにかかった。
「主席、いかがされましたか? こんなにメソメソ泣き出すなど、以前の豪胆な主席ならば、有り得なかったこと……。むしろ、革命などできるのかと弱気になる私たちを叱咤されて、ひたすら革命を成就させようと奮闘されてきたではありませんか。もしや、文化工作隊によって、ふぬけにされたのではありますまいか? もし、そうなら、ゆゆしきこと。私は、主席をふぬけにした文化工作隊の解散を提案させていただきます」
 ポン元帥はオロオロしながらも、毅然として言う。健作は驚きのあまり、口をパクパクさせるだけだった。
(まずい。このままでは、俺の酒池肉林の生活が終わってしまう。そうなれば、会議だらけの退屈な日々が待っているだけだ。それだけは何が何でも阻止しないと……)
 頼みの綱のみゆ婆は、そばにいない。健作は頭を使いすぎて知恵熱が出そうだった。その場を取り繕うように、
「……ポン元帥の言うことは、よくわかった。だが、大事なことゆえ、この場では即決できぬ。しばらく考えさせてもらいたい……」
と答えるのが精一杯である。健作の答えに、ある程度は満足したのか、ポン元帥も、
「わかりました。私も貧農の出身ゆえ、言い過ぎた部分はありましたが、どうかお許しください。全ては、主席と中国を思うゆえに出た言葉でございます」
と言って一礼すると、再び緑茶を飲み、茶菓子をほおばった。
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