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その夜、会議が終わって夕食の時間になると、健作はみゆ婆にポン元帥との一件を相談してみた。
「ほう、中国共産党の十大元帥の筆頭みたいな男に説教されたら、健作もさぞ怖かったじゃろうな。ポン元帥といえば、剛直をもって鳴る武人じゃ。日中戦争を指揮した日本軍の岡村寧次大将も、ポン元帥を高く評価していたぐらいじゃしのぅ……」
「みゆ婆、他人事みたいに言わないでよ。このままじゃ、俺は女の子を抱けなくなっちゃうんだよ。今後は明けても暮れても会議ばかりの毎日なんて、考えるだけでウンザリだよ」
「まあ、そう取り乱すでない。毛沢東が過去に、ポン元帥を非難したことが一度ある。何に関してか、わかるか?」
「……いや、全然わかんねぇ……」
健作が知恵熱を出しかけていて、箸が止まったので、みゆ婆はヒントを出す。
「日中戦争で、多くの共産党軍の兵士が、日本軍と戦って勝ったやつじゃよ」
「だから、日中戦争なんかわからねえよ。『三国志』しか読んでねえし」
「本当に世界史に疎いのぅ。ポン元帥が共産党軍の百個の団(中国語で連隊の意味)を率いて、日本軍と戦って勝った『百団大戦』じゃよ。勝った当初、毛沢東はポン元帥に宛てて『祝。百団大戦勝利慶賀』と打電したのに、その直後に延安の共産党軍が日本軍から猛攻撃を受けると、態度を一変させて『百団大戦で勝ちやがって』と非難し始めたんじゃ」
「うわ……ポン元帥がかわいそうになってくる……」
「そこでじゃ。健作は機会を見計らって、百団大戦のことを蒸し返して非難し、ポン元帥を失脚に追い込めば良い。歴史では、毛沢東の大躍進政策を批判した際に、百団大戦のことも蒸し返されて国防相を解任されておるからのぅ。ウチが助言できるのは、ここまでじゃ。今回は健作の力で何とかしてみろ。自分の問題じゃからな。まあ、ウチも万が一に備えてはおくが」
その日の夕食は、箸が進まなかった。健作の嫌いなおかずは無かったはずなのだが。
「ほう、中国共産党の十大元帥の筆頭みたいな男に説教されたら、健作もさぞ怖かったじゃろうな。ポン元帥といえば、剛直をもって鳴る武人じゃ。日中戦争を指揮した日本軍の岡村寧次大将も、ポン元帥を高く評価していたぐらいじゃしのぅ……」
「みゆ婆、他人事みたいに言わないでよ。このままじゃ、俺は女の子を抱けなくなっちゃうんだよ。今後は明けても暮れても会議ばかりの毎日なんて、考えるだけでウンザリだよ」
「まあ、そう取り乱すでない。毛沢東が過去に、ポン元帥を非難したことが一度ある。何に関してか、わかるか?」
「……いや、全然わかんねぇ……」
健作が知恵熱を出しかけていて、箸が止まったので、みゆ婆はヒントを出す。
「日中戦争で、多くの共産党軍の兵士が、日本軍と戦って勝ったやつじゃよ」
「だから、日中戦争なんかわからねえよ。『三国志』しか読んでねえし」
「本当に世界史に疎いのぅ。ポン元帥が共産党軍の百個の団(中国語で連隊の意味)を率いて、日本軍と戦って勝った『百団大戦』じゃよ。勝った当初、毛沢東はポン元帥に宛てて『祝。百団大戦勝利慶賀』と打電したのに、その直後に延安の共産党軍が日本軍から猛攻撃を受けると、態度を一変させて『百団大戦で勝ちやがって』と非難し始めたんじゃ」
「うわ……ポン元帥がかわいそうになってくる……」
「そこでじゃ。健作は機会を見計らって、百団大戦のことを蒸し返して非難し、ポン元帥を失脚に追い込めば良い。歴史では、毛沢東の大躍進政策を批判した際に、百団大戦のことも蒸し返されて国防相を解任されておるからのぅ。ウチが助言できるのは、ここまでじゃ。今回は健作の力で何とかしてみろ。自分の問題じゃからな。まあ、ウチも万が一に備えてはおくが」
その日の夕食は、箸が進まなかった。健作の嫌いなおかずは無かったはずなのだが。
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