二世帯住宅から冒険の旅へ

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第8話 ペスと辰巳

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先生はそれから三日お休みしたけど、そのあとはいつもどおり復活した。目は合わせてくれないけど。

今日は辰巳と城下町を散歩する日だ。両親同伴じゃない初めての城下町だ。

……オレだと許可が出ないのになんで辰巳は一発OKなんだよ。


「で、なんでペスがいるんだ?」

「トラが城下に出るのにわたしがついて行かないとでも思って?」

「意味がわからない。あ、辰巳、これがペス。王女様」

「あの噂の。初めまして辰巳です。よろしくお願いします」

「トラの友達とは思えないくらいちゃんとしてるわね。どんな噂を聞いてるのか知らないけどあまり信じないほうがいいと思うわ。プルジェストン・キゥミュィァモンよ。よろしく」

「ペストン・クマモン?で合ってる?」

「……まあいいわ。異世界人には難しいって知ってるから。トラがいつまでも発音できないのは納得いかないけど」

「じゃあ今日はいっしょに城下を回るってことで」

「初めてトラが連れて来た友達だもの、案内してあげるわ、タツ」

「あれ? ペスが親戚のお姉さんみたいになってる」

「だれがお姉さんよ。ぶっ飛ばすわよ」

「仲いいんだな。安心したよ。トラの話じゃこっちのことがいまいちわからなくて」

「奇遇ね。わたしもトラの話じゃ向こうのことがさっぱりわからないのよ」

「あれ? オレが悪いみたいになってない?」

「トラが悪い(んだよ)(のよ)」

「さて屋台で買い食いでもするか」

「話聞きなさいよ」

「今日は旅の物資を調達がてら市場調査するのが目的だぞ」

「屋台で料理買うんじゃないの?」

「なんで料理を買うんだよ」

「え?」

「え?」

「おまえ……俺がなんのために料理長から料理教えてもらったと思ってるんだよ」

「よっぽど王宮の料理が気に入って食い放題してるんだと思ってた」

「トラはあれよね」

「あれってなに?」

「まあしょうがないってことよ」

「なんか悪口言われてる気がする」

「屋台の料理はいくつかストックしてもいいけど、容量制限があるからな」

「どれくらい?」

「荷物全部合わせて屋台三つ分くらいかな」

「化け物ね」

「異世界人チートがあるからな」

「じゃあ屋台三つ買えばいい?」

「化け物ね」

「虎彦は算数できないもんな」

「なんか悪口言われてる気がする」

「とりあえず買うのはあとにして見て回りましょ」

「そうだな。虎彦は買い食いしていいぞ。ほどほどにな」

「やったー!」

「なんてうれしそうなのかしら。子どもね」

「とは言っても虎彦は育ちがいいのかそんなに暴走しないから大丈夫だ。ちゃんといちいち聞きに来るからな」

「なあ辰巳、あれ買っていい?」

「ああいいぞ」

「本当ね。本当に子どもだわ。子どもとお父さんだわ」

「だれがお父さんだ」


*****


「食糧はこんなもんでいいかな。旅先でも入手できるだろうし」

「装備品や旅の道具は城で準備してもらったし、ほかになんかある?」

「わたしも旅はしたことないし、旅支度なんて当然したことないからわからないわね。旅慣れてるといえばあなたのお父さまに聞いたらどう?」

「いやーあれは……」

「なんかよくわからんけどイチャイチャしながら歩いてたら知らんうちに魔王斬ってたとか言うからもう参考にならん」

「ああ、そうよね。そんな気がするわ」

「母さんもこっちで旅してる間お金を払ったことがないって言ってた」

「たぶんあれよ。城の人たちが噂を聞いて支払いに走り回ったのよ」

「めちゃめちゃ苦労したんだろうな。周りが」

「わかる。……なんでこっち見るの?」

「はあ。ともかく冒険者組合の人とか行商人に話を聞いたほうがよさそうね」

「なんか伝手とかあるのか?」

「あるわけないでしょ、わたしただの王女よ?」

「冒険者組合に行ってみようよ。そんでだれか冒険者紹介してもらおう」

「それしかないわね(組合長には貸しがあるし)」

「商人の組合みたいのはないのか?」

「それぞれ業種ごとに組合があるわね。城下の商人組合はあるけど行商人が所属してる組合はないと思うわよ」

「どこかの商会で出入りの商人に話をつけてもらうか」

「それなら王家御用達の貿易商会があるからそこに行きましょう」

「どんなお店?」

「商会には屋台みたいなお店はないのよ、トラ。事務所と倉庫と接客用のサロンがあるだけよ」

「卸商みたいなもんか」

「なにそれ? 大根?」

「なにそれ?」

「あー気にするな。行くぞ」


あちこち回っていろいろ楽しい冒険や旅の話を聞いて、辰巳とペスがちゃんと準備を整えた。
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